自動運転トラックの実現には、車両メーカー、AI、通信、保険、道路管理者、荷主企業、運送会社の協力が欠かせません
自動運転トラックは一社では実現できない――技術とデータをつなぎ、持続可能な物流へ
冒頭要約
自動運転は、一社の技術だけで完成するものではありません。
車両を造る企業、自動運転システムを開発する企業、通信を支える企業、安全性を分析する保険会社、道路情報を提供する行政・道路管理者、そして実際の荷物を扱う荷主企業や運送会社。それぞれが技術、データ、現場の経験を持ち寄って、初めて安全な社会実装へ進むことができます。
物流業界に求められているのも、技術の完成を待つことではありません。日々のトラック手配、運行管理、荷積み・荷卸し、待機、異常時対応などの実態を伝え、より安全で使える仕組みを一緒につくることです。
自動運転は、人を物流から遠ざけるためではなく、人の負担を減らし、安全性を高め、物流を将来へ残すために活用されるべきではないでしょうか。
この記事で分かること
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自動運転の実現に複数企業の協力が必要な理由
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国内で進む自動運転トラックと自動運転車の主な実証
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荷主企業、運送会社、物流センターが提供できる現場データ
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自動運転を持続可能な物流につなげるための条件
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丸共協同株式会社が考える物流会社の役割
目次
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「走れる」だけでは社会実装できない
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国内で進む企業間の取り組み
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なぜ技術とデータの協力が必要なのか
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物流業界だから提供できるデータがある
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自動運転で、人がより働きやすい物流へ
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データ連携で忘れてはならないこと
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丸共協同株式会社が考える役割
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よくある質問
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まとめ
1.「走れる」だけでは社会実装できない
自動運転というと、カメラやセンサー、AIを搭載した車両に注目が集まりがちです。しかし、車両が自動で走れることと、物流サービスとして毎日安全に運用できることは同じではありません。
実際の運行では、雨、雪、逆光、工事、落下物、渋滞、合流、故障など、さまざまな状況が発生します。トラックの場合は、車両の重さ、積荷の偏り、荷崩れの可能性、制動距離、物流センターへの入退場、荷役時間なども考えなければなりません。
さらに、異常が発生したときに誰が遠隔で確認し、誰が現場へ向かい、荷主企業へどのように連絡するのかという運用設計も必要です。
自動運転の実現に必要なのは、車両の技術だけではありません。
「車両技術」「走行データ」「道路情報」「通信」「運行管理」「荷役」「整備」「保険」「制度」をつなぐことが必要です。
2.国内で進む企業間の取り組み
NTTモビリティ、May Mobility、あいおいニッセイ同和損保
NTTモビリティと米国のMay Mobilityは、トヨタ自動車の「e-Palette」をベースに改造した車両を使い、東京都武蔵野市で公道実証を始めました。May Mobilityが自動運転システムを提供し、NTTモビリティが運行や通信、運行支援の仕組みを整えます。
翌9月4日には、NTTモビリティとあいおいニッセイ同和損保が、このレベル2実証における安全性評価の高度化に向けた共同実証を発表しました。自動運転車両の走行データと、テレマティクス自動車保険を通じて蓄積してきた急加減速、ヒヤリハット地点、地域ごとの走行量などのデータを比較します。目的は、自動運転特有の走行傾向や交通環境に潜む危険を可視化し、安全性評価と運行管理を改善することです。
ここで重要なのは、自動運転システムが自ら集めたデータだけで安全性を判断するのではなく、損害保険会社が持つ人間の運転データや事故リスクの知見と照らし合わせている点です。
ただし、今回の実証は自動運転レベル2です。運転者による周囲の監視が必要であり、レベル4の無人運転が既に始まったという意味ではありません。
いすゞ自動車、Applied Intuition、物流・運行会社
いすゞ自動車は、米国のApplied Intuitionと自動運転大型トラックを共同開発し、栃木県と愛知県を結ぶ自社部品物流ルートで実証を進めています。
この取り組みには、車両メーカーとソフトウェア企業だけでなく、荷主・拠点運営を担ういすゞロジスティクス、車両を運行するワン・トランスも参加しています。実際の補給部品を積み、荷量、走行時間帯、天候、荷役、遠隔監視、異常時の駆けつけ対応まで確認します。
走行データや現場で得た知見を車両開発へ戻す仕組みになっており、技術開発と物流現場が往復しながら改善を重ねる実証です。
T2と50社を超えるパートナー企業
自動運転トラックによる幹線輸送を目指すT2は、2024年以降、50社を超えるパートナー企業の荷物を使って実証を行い、2025年夏からは実証を経た企業向けの商用運行を開始しました。2026年7月21日時点では、商用運行のユーザーが23社に拡大したと発表しています。
また、アイリスオーヤマ、NLP協同組合、全国通運、JR貨物などと連携し、トラックと貨物鉄道を組み合わせた輸送実証も行っています。荷主企業の商品を、集荷トラック、貨物列車、自動運転トラックへとつなぎ、佐賀県鳥栖市から神奈川県川崎市まで約1,100キロの輸送を検証しました。このうち、T2のレベル2自動運転トラックが自動走行した区間は、新名神高速道路の亀山西JCTから東名高速道路の綾瀬スマートICまでの約360キロです。
これは、自動運転車両だけを開発しても物流は完結しないことを示しています。荷主企業、運送会社、鉄道会社、物流拠点が同じ輸送計画の中でつながる必要があります。
国土交通省と道路側からの支援
大型トラックは車体が大きく重量もあるため、乗用車と同じように急な加速、減速、車線変更を行うことが難しく、早い段階で周辺状況を把握する必要があります。
国土交通省は、新東名高速道路で合流支援情報や、工事規制・落下物などの先読み情報を車両へ提供する路車協調実証を実施しました。2026年度には、より道路条件の厳しい東北自動車道でトラックやトレーラーなどを対象とする実証を計画し、車両協力者を募集しました。
車載カメラやセンサーから見える範囲には限界があります。道路側のセンサーや交通管制が持つ情報を車両へ届けることで、自動運転車は早めに減速したり、安全な車線変更を準備したりできます。
国の「自動運転トラック実装支援事業」も、車両購入だけを対象にしていません。物流拠点の整備、1対多運行や一般車両との混在、自動荷役機器との連携に対応するシステム、初年度の運行まで支援対象としています。制度そのものが、自動運転を車両単体ではなく物流システム全体として捉えています。
3.なぜ技術とデータの協力が必要なのか
自動運転を支える企業や組織は、それぞれ異なる役割を持っています。
| 担い手 | 主に提供できる技術・データ |
|---|---|
| 車両メーカー | 車体制御、制動性能、故障情報、整備体制 |
| AI・自動運転システム企業 | 認識、判断、走行制御、シミュレーション |
| 通信会社・道路管理者 | 遠隔監視、安定通信、合流情報、工事・落下物などの先読み情報 |
| 保険会社 | 事故、急加減速、ヒヤリハット地点、リスク評価の知見 |
| 荷主企業 | 荷量、出荷時刻、積荷特性、荷役条件、納品条件 |
| 運送会社・物流センター | 実際の運行、配車、待機、荷積み・荷卸し、異常時対応の知見 |
| 国・自治体 | 法制度、道路環境、地域との調整、社会受容性の形成 |
一社だけですべてを持つことはできません。
AI企業が優れた運転判断を開発しても、荷役に時間がかかればトラックは予定どおりに出発できません。通信が途切れた場合の対応が決まっていなければ、遠隔監視は機能しません。事故件数が少なくても、急ブレーキや危険な接近が多ければ、安全な運行とは言い切れません。
それぞれが持つデータを適切に組み合わせることで、初めて「なぜ安全と判断できるのか」を説明できるようになります。
4.物流業界だから提供できるデータがある
荷主企業や運送会社は、自動運転システムの開発会社ではありません。しかし、物流現場にしか存在しない重要な情報を持っています。
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どの時間帯に、どの区間で遅れやすいのか
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荷物の重量や積み方によって車両挙動がどう変わるのか
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荷積み・荷卸しにどの程度の時間が必要か
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物流センターの構内で、どこに死角や危険があるのか
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悪天候や渋滞時に、現場がどのような判断をしているのか
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故障や通行止めが発生したとき、代替車両をどう手配するのか
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荷主企業、運送会社、ドライバーへ、どの順番で連絡するのか
こうした情報は、長年の経験として担当者の頭の中に蓄積されていることが少なくありません。その経験を記録し、共通の形式で扱えるデータへ変えることが、将来の自動運転を現場で使えるものにします。
今後、チャーター便やスポット便のトラック手配でも、出発地・到着地、車種、積荷、時間だけでなく、自動運転が利用できる区間、有人運転との切替地点、遠隔監視、荷役条件などを一緒に管理する時代が来る可能性があります。
5.自動運転で、人がより働きやすい物流へ
自動運転は、ドライバーを物流から不要にするための技術ではありません。
高速道路の長距離区間を自動運転が担えば、人は地域内の集荷・配達、荷物の確認、お客様との調整、異常時対応など、人にしかできない仕事へ力を向けられます。夜間の長時間運転や連続運転の負担を減らし、経験を積んだ人が遠隔から複数台の安全を支えるという新しい仕事も生まれます。
また、自動運転と鉄道、船舶、有人トラックを適切に組み合わせれば、輸送手段ごとの長所を生かせます。車両を自動化するだけでなく、帰り荷の確保、積載効率の向上、待機時間の削減まで進めることで、環境負荷の低減にもつながります。
ただし、自動運転を導入すれば、自動的に持続可能な物流になるわけではありません。車両、通信、拠点、整備、保険への投資費用を誰が負担するのか。トラブル時の責任をどう分担するのか。そこで働く人に適正な対価が支払われるのか。こうした点も同時に整える必要があります。
技術だけが進み、現場に無理を押しつける仕組みでは、持続可能とはいえません。
6.データ連携で忘れてはならないこと
企業間の協力が重要だからといって、すべての情報を無条件で共有すればよいわけではありません。
荷主企業の出荷情報、運賃、取引先、運行ルートなどには、機密情報が含まれます。サイバー攻撃によって車両や運行情報が悪用される危険も考えなければなりません。
データ連携を進める際には、利用目的、閲覧できる範囲、保存期間、匿名化、事故時の責任を明確にする必要があります。競争上重要な情報と、安全性向上のために共有すべき情報を分けることも大切です。
目指すべきなのは、情報を集める企業が強くなる仕組みではなく、必要な情報を安全に持ち寄ることで、参加する企業と社会全体が良くなる仕組みです。
7.丸共協同株式会社が考える役割
丸共協同株式会社は、自動運転システムを開発する会社ではありません。一方で、1982年の創立以来、荷主企業と運送会社の間に立ち、全国のトラック手配や配車、物流プランニングに取り組んできました。
物流の現場では、同じ距離、同じ車種であっても、荷物の種類、納品時間、荷役条件、道路状況によって最適な運び方が変わります。システム上の条件だけでは判断できないことも数多くあります。
自動運転の時代になっても、荷主企業の要望を正しく理解し、条件に合う運送会社や車両を探し、異常が起きたときに関係者をつなぐ役割は残ります。むしろ、扱う情報が増えるほど、現場を理解した調整力の重要性は高まると考えています。
大企業だけで未来の物流をつくるのではありません。地域の運送会社、倉庫会社、荷主企業、配車担当者、ドライバーが持つ経験も、自動運転を安全で実用的な仕組みにするための大切な知識です。
技術と現場、人と企業、情報と物流をつなぐこと。その積み重ねが、自動運転によって、より安全で、働きやすく、災害や人手不足にも強い物流業界をつくると丸共協同株式会社は考えます。
8.よくある質問
Q1.今回の実証で、無人の自動運転が始まったのですか
いいえ。NTTモビリティなどが武蔵野市で行う実証はレベル2です。運転者が周囲を監視し、必要に応じて操作します。レベル4は、定められた走行環境条件の範囲でシステムが運転を担う段階であり、今回の実証結果をそのまま無人運転の実現と捉えることはできません。
Q2.自動運転トラックが普及すると、ドライバーの仕事はなくなりますか
すべての仕事がなくなるとは考えにくいでしょう。集荷・配達、荷役、積荷確認、顧客対応、車両整備、遠隔監視、異常時対応など、人が担う仕事は残ります。長距離の運転負担を技術が補い、人の役割が変化していくと考える方が現実的です。
Q3.中小の運送会社も自動運転の実現に関係しますか
関係します。地域特有の道路事情、物流センターでの動線、荷役方法、配車変更、緊急時対応などは、現場の運送会社が持つ重要な知識です。実証への直接参加だけでなく、運行記録のデジタル化やヒヤリハット情報の蓄積も将来の基盤になります。
Q4.自動運転が進むと、トラック手配や運送会社探しはどう変わりますか
将来は、空き車両や運賃だけでなく、自動運転対応区間、有人運転への切替、遠隔監視、荷役設備、積荷条件などを含めて手配する必要が生じる可能性があります。デジタルによる情報整理と、現場を理解した人の判断を組み合わせることが重要になります。
9.まとめ
自動運転の社会実装は、一社だけの競争では実現できません。
車両メーカーが安全な車体を造り、AI企業が走行判断を磨き、通信会社と道路管理者が見えない先の情報を届け、保険会社がリスクを分析する。そして荷主企業、運送会社、物流センターが実際の荷物と現場データを提供する。この協力が一つにつながって、初めて自動運転は日常の物流になります。
物流業界も、完成した技術を受け取るだけの立場ではありません。これまで蓄積してきた経験やデータを提供し、どのような仕組みなら安全に使えるのかを一緒に考える側です。
自動運転によって目指すべき未来は、単に人を減らす物流ではありません。
人の負担を減らし、安全を高め、必要な荷物を安定して届け、地域の運送会社も適正な役割と対価を得ながら続いていける物流です。
企業の規模や業種を越えて技術と知恵を持ち寄ることが、より良い物流業界と、持続可能な社会への道を開いていくのではないでしょうか。
本稿は、各社・行政機関が公表した情報を基に、物流現場の視点から丸共協同株式会社が独自に考察したものです。将来計画や実証内容は変更される可能性があります。
