物流DXの成否を分ける運用設計|配車システムを現場で使える仕組みに
物流DXの成否を分ける運用設計|配車システムを現場で使える仕組みに
公開日:2026年9月5日
物流DXが進み、配車システムや輸配送管理システムを導入する企業が増えています。しかし、高機能なシステムを導入しただけで、配車業務が自動的に改善するわけではありません。
ある物流企業では、約3,000万円をかけて配車支援システムを構築したものの、現場から「使えない」と判断され、その後、実際に使える状態へ改善するまでに約3年を要した事例が、物流業界の専門メディアで紹介されました。
この事例が示しているのは、物流DXの成否を分けるのはシステムの機能だけではなく、導入目的、現場参加、判断する人、導入後の改善まで含めた「運用設計」であるということです。
この記事で分かること
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配車システムを導入しても現場で使われない理由
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物流DXを始める前に決めておくべきこと
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配車担当者の経験や暗黙知を生かす方法
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荷主企業と運送会社がデータを共有する意味
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失敗事例の公表が物流業界の改革につながる理由
目次
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約3,000万円をかけても現場で使えなかった理由
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物流DXは、目的を決めることから始まる
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配車業務には、仕様書に表しにくい判断がある
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現場とシステムをつなぐ人が必要になる
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最初から100点の自動化を求めない
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配車システムは荷主企業と運送会社の共通の物差しになる
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トラック手配の前に、必要な車両数を予測する
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失敗事例の発表が物流業界の改革につながる
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丸共協同株式会社が考える物流DX
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よくある質問
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まとめ
1.約3,000万円をかけても現場で使えなかった理由
紹介された事例では、多数の貨物を集荷、幹線輸送、配達に分け、複数の荷主企業の貨物を組み合わせながら配車を行っていました。車両やドライバーの条件も複雑で、表計算ソフトによる管理が限界を迎えたため、配車支援システムの開発に踏み切りました。
開発には、配車経験を持つ担当者も参加していました。それでも、完成したシステムは現場の仕事に十分対応できませんでした。
例えば、次のような問題です。
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一度分割した依頼を簡単に元へ戻せない
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荷主企業から変更が入るたびに操作が増える
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多数の車両や貨物をすぐに検索できない
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現場で行われる細かな組み替えに対応しにくい
配車は、最初に作った計画をそのまま実行する仕事ではありません。
荷量の変更、集荷時間、積載状況、車両の位置、ドライバーの労働時間、納品先の条件などを確認しながら、配車担当者が絶えず計画を組み替えています。この「変更され続ける業務」を十分に設計へ反映できなければ、高額なシステムでも現場では使いにくくなります。
2.物流DXは、目的を決めることから始まる
物流DXで最初に決めるべきことは、「どのシステムを導入するか」ではありません。
まず、何を改善したいのかを明確にする必要があります。
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配車担当者の長時間労働を減らしたい
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ベテラン担当者への属人化を減らしたい
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若手担当者でも配車案を作れるようにしたい
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車両の稼働率や積載率を改善したい
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荷主企業からの変更を正確に共有したい
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トラック手配や運送会社への見積もり依頼を効率化したい
目的が違えば、必要な機能も運用方法も変わります。
経営者は収益性や投資効果を重視し、管理者は業務の標準化を求め、配車担当者は日々の操作性や変更への対応を重視します。立場によって「使えるシステム」の意味が異なるため、導入前に目的を共有することが欠かせません。
3.配車業務には、仕様書に表しにくい判断がある
熟練した配車担当者は、単に荷物と車両を組み合わせているわけではありません。
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この荷物同士は一緒に積めるか
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この車格で納品先へ進入できるか
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荷役にどの程度の時間がかかるか
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この時間帯に渋滞しやすい道路はどこか
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変更が発生した場合、どの車両なら対応できるか
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ドライバーの労働時間に無理がないか
こうした判断の一部は、マニュアルやデータではなく、担当者やドライバーの頭の中にあります。
そのため、現在の配車結果だけをシステムに再現させようとしても、なぜその判断になったのかまでは再現できません。重要なのは、ベテラン担当者が「何を、どの順番で確認しているか」を整理することです。
物流DXは、人の経験をなくす取組ではありません。経験を共有できる形に変え、次の担当者へ引き継げるようにする取組でもあります。
4.現場とシステムをつなぐ人が必要になる
システム会社は技術に詳しくても、すべての物流現場の事情を理解しているわけではありません。一方、現場の担当者は配車に詳しくても、その要望をシステムの仕様として整理することが難しい場合があります。
そこで必要になるのが、現場とシステムの間をつなぐ人です。
一人ですべてを担当する必要はありません。配車業務に詳しい人とITに詳しい人がチームを組み、次のように要望を整理する方法もあります。
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現在の機能と運用の工夫で対応できるもの
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改修しなければ業務に支障が出るもの
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将来の追加機能として検討するもの
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利用目的から外れるため追加しないもの
現場から出た要望をすべて追加すると、操作が複雑になり、開発費や維持費も増えていきます。何を直し、何を残し、何を見送るのかを判断できる体制が必要です。
また、現場を理解している人ほど通常業務で忙しい傾向があります。物流DXを片手間の仕事にせず、経営側が必要な時間を確保することも重要です。
5.最初から100点の自動化を求めない
配車システムに、熟練担当者と同じ100点の判断を最初から求めると、条件設定や開発が複雑になり、導入までの時間と費用が増えます。
現実的なのは、システムが一定水準の配車案を素早く作り、最後は人が現場条件に合わせて修正する方法です。
システムが得意なのは、大量の情報を整理し、条件に基づいて候補を提示することです。一方、人は、急な変更、取引先との関係、現場の細かな事情など、数値だけでは判断しにくい部分に対応できます。
人とシステムのどちらか一方にすべてを任せるのではなく、それぞれの得意分野を組み合わせることが重要です。
導入方法も、最初から全社・全拠点へ広げる必要はありません。一つの営業所、一つの配送業務、一部の利用者から始め、実際に使いながら改善する方が、現場とのずれを早く発見できます。
6.配車システムは荷主企業と運送会社の共通の物差しになる
荷主企業と運送会社では、同じ輸送を見ていても重視する点が異なります。
荷主企業は、出荷予定、納品時間、輸送費、在庫状況などを把握しています。運送会社は、車種・車格、ドライバーの勤務状況、道路事情、積み合わせ、荷役、納品先の軒先条件などを把握しています。
荷主企業が考える効率的な計画が、運送会社にとってそのまま実行可能とは限りません。反対に、運送会社だけでは、将来の出荷予定や生産計画まで十分に把握できない場合があります。
だからこそ、次の情報を共通の物差しとして確認できる仕組みが必要になります。
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荷待ち時間
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荷役に要した時間
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積載率
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車両の稼働状況
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契約に含まれていない作業
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依頼内容の変更履歴
配車システムは、単に毎日の運行を組むための道具ではありません。荷主企業と運送会社が同じ事実を見ながら、運賃、作業条件、納品時間、車両手配について話し合うための共通言語にもなります。
7.トラック手配の前に、必要な車両数を予測する
物流DXの対象は、配車を組む作業だけではありません。
荷量が確定してからトラックを手配すると、必要な台数を確保できず、急いでスポット便やチャーター便を探さなければならない場合があります。早い段階で物量を予測できれば、運送会社へ見積もりを依頼し、必要な車両を準備しやすくなります。
ただし、荷物の個数だけで必要車両数が決まるわけではありません。
パレット、カゴ車、バラ積みなどの荷姿、容積、重量、積卸し方法、出荷可能時刻、バースの利用状況、荷役人員などを考慮し、実際に運べる「物流量」へ置き換える必要があります。
需要予測、倉庫作業、人員配置、バース、トラック手配をつなぐことで、荷量が確定してから慌てて運送会社を探す物流から、早めに準備する物流へ変えられる可能性があります。
8.失敗事例の発表が物流業界の改革につながる
今回の記事には、もう一つ大切な意味があります。それは、多額の費用と長い時間を要した失敗と改善の過程が、公に共有されたことです。
企業は通常、システム導入の成功事例を発表しても、現場で使えなかった経験は表に出しにくいものです。しかし、失敗が共有されなければ、別の企業が同じ問題を繰り返します。
「高額なシステムなら成功する」「AIを導入すれば配車が自動化される」「現場へ渡せば使ってもらえる」といった思い込みを、実際の経験から見直すことができます。
また、失敗の公表は、特定の企業やシステムを批判するためのものではありません。
利用する企業には、導入目的と現在の業務を整理する責任があります。システムを提供する側には、現場を理解し、導入後の定着まで支える役割があります。経営者、配車担当者、ドライバー、荷主企業、運送会社、システム提供者が、それぞれの課題を共有することで改善が始まります。
成功だけでなく、うまくいかなかった理由と、そこからどのように立て直したのかまで発表することは、物流業界全体の学びになります。このような率直な情報発信が増えることも、物流業界の改革につながるのではないでしょうか。
9.丸共協同株式会社が考える物流DX
電話による配車依頼には、その場で状況を確認できる安心感があります。一方で、担当者が不在のときに内容が伝わらない、変更履歴が残りにくい、同じ情報を何度も説明するといった負担もあります。
物流DXとは、電話をなくすことでも、人の判断をなくすことでもありません。
緊急時や複雑な相談では直接話し、定型的な見積もり依頼、配車条件、車番連絡、書類、荷卸し報告などはデジタルで正確に共有する。人による安心感とデジタルの便利さを、業務に合わせて使い分けることが大切です。
また、荷主企業がトラックを手配するときには、積地、卸地、日時、車種、荷姿、重量、必要装備、積卸し方法などの情報が欠かせません。条件が早く正確に共有されるほど、運送会社は対応できる車両を検討しやすくなり、見積もりの行き違いも減らせます。
丸共協同株式会社は、1982年の創業以来、荷主企業と運送会社の間に立ち、日々変化する輸送条件に向き合ってきました。これからも、これまでの取引や直接のコミュニケーションを大切にしながら、現場で本当に使える方法を一つずつ考えていきます。
大切なのは、システムを導入した事実ではありません。
荷主企業、運送会社、配車担当者、ドライバーにとって、実際の仕事が少しでも正確に、効率よく、安心して進められる状態をつくることです。
10.よくある質問
Q1.物流DXとは、配車をすべてAIに任せることですか?
いいえ。物流DXは、AIやシステムの導入そのものを目的とするものではありません。情報共有、業務手順、判断方法を見直し、物流の仕事をより良くすることが目的です。人が判断する部分を残した運用も、物流DXの一つです。
Q2.小規模な運送会社でも配車システムを導入できますか?
導入できます。ただし、最初からすべての業務を対象にする必要はありません。車番連絡、配車表、運行状況の共有など、負担の大きい一つの業務から始める方法があります。
Q3.配車システムを選ぶ前に何を整理すればよいですか?
現在の業務手順、変更が起きる場面、担当者ごとの判断、重複入力、電話や紙で行っている連絡を整理します。そのうえで、何を改善するのか、誰が最終判断をするのかを決める必要があります。
Q4.物流DXが進むと電話での配車依頼はなくなりますか?
すべてなくなるとは限りません。緊急時や複雑な相談では、電話が有効です。一方、定型的な依頼内容や変更履歴は、デジタルで残す方が正確に共有できます。用途に応じた使い分けが現実的です。
Q5.荷主企業がトラック手配を円滑にするためにできることは何ですか?
輸送条件をできるだけ早く正確に伝えることです。積地、卸地、日時、車種、荷姿、重量、積卸し方法などが整理されていると、運送会社は対応可否を判断しやすくなります。変更が発生した場合に、すぐ共有できる運用も重要です。
11.まとめ
配車システムが現場で使えるかどうかは、機能の数やAIの性能だけでは決まりません。
何のために導入するのか。誰が使うのか。何をシステムに任せ、何を人に残すのか。誰が現場と開発側をつなぐのか。導入後、どのように改善を続けるのか。
これらを事前に考え、現場と経営が同じ目的を共有することが、物流DXの出発点になります。
そして、成功事例だけでなく、失敗した理由や改善の過程を業界全体で共有することも重要です。一社の経験を業界共通の知識へ変えることが、同じ遠回りを減らし、日本の物流をより良くする力になります。
物流DXで本当に問われているのは、「新しいシステムを導入したか」ではありません。
その仕組みが現場で使われ、荷主企業と運送会社の双方にとって、より良い物流につながっているかです。
参考情報
※本稿では、公開記事で紹介された個別企業・サービスの名称を記載せず、物流DXと運用設計に関する一般的な教訓として整理しています。約3,000万円、約3年などの数値は、同記事で紹介された個別事例であり、すべての配車システム導入に当てはまるものではありません。
