物流の未来を考える 第11回
物流の効率化は、特別な技術だけで始まるものではない
― 現場の「少し早い情報共有」が、トラックの動きを変える ―
目次
1.はじめに
2.物流の現場では「情報の時間差」が起きている
3.荷主様から早く情報をいただく意味
4.運送会社様も早く予定を伝える
5.地方行きが決まった時点から帰り荷を探す
6.帰り便・帰り荷は長距離輸送だけではない
7.デジタル化は人の仕事をなくすためではない
8.情報共有が物流の信頼を育てる
9.おわりに
1. はじめに
物流の効率化と聞くと、AIや自動運転、物流ロボットなどの新しい技術を思い浮かべる方が多いかもしれません。
もちろん、こうした技術はこれからの物流業界にとって重要です。
しかし、長年物流の仕事に携わっていると、物流の効率化は必ずしも大きな設備投資や高度な技術だけで始まるものではないと感じます。
「明日の出荷予定が少し早く分かる」
「来週、どの方面へ荷物が出るのかが事前に分かる」
「どの地域で、いつトラックが空くのかを早めに伝える」
こうした日々の情報共有だけでも、トラックの動かし方は大きく変わります。
物流の現場で本当に必要なのは、情報を持っている人が、必要としている人へ、少しでも早く届けることではないでしょうか。
2. 物流の現場では「情報の時間差」が起きている
荷主様は、数日後の出荷予定をすでに把握している。
一方で、運送会社様には、その情報が出荷直前になってから届く。
物流の現場では、このような「情報の時間差」が起きることがあります。
荷主様にとっては、まだ確定していない予定であっても、運送会社様にとっては重要な情報です。
「来週、大阪から名古屋方面への荷物が出る可能性があります」
この一言が早く伝わるだけで、運送会社様は車両の予定を考え始めることができます。
反対に、出荷直前になってから依頼を受けると、条件に合うトラックがすでに別の仕事に決まっていることもあります。
情報が遅ければ、荷物とトラックが同じ地域にあっても、うまく結び付けられません。
物流の効率化を考えるうえでは、車両の台数だけでなく、情報が届くまでの時間にも目を向ける必要があります。
3. 荷主様から早く情報をいただく意味
荷主様が輸送予定を早めに伝えることには、さまざまな利点があります。
運送会社様は、必要な車種や台数、集荷時間、納品時間などを確認しながら、余裕を持って配車を組むことができます。
複数の運行予定を組み合わせることで、条件に合ったトラックを見つけられる可能性も高くなります。
早く情報を出したからといって、その時点ですべてを確定する必要はありません。
「予定段階」
「数量は未確定」
「出荷日は前後する可能性がある」
このように情報の確度を示しておけば、運送会社様も予定として準備できます。
確定してから初めて伝えるのではなく、可能性の段階から情報を共有する。
その積み重ねが、急な手配を減らし、安定した輸送につながっていきます。
4. 運送会社様も早く予定を伝える
情報を早く伝えることが大切なのは、荷主様だけではありません。
運送会社様も、
「水曜日に愛知県で4トン車が空く予定です」
「木曜日に大阪府へ戻る大型車があります」
「来週は兵庫県から関東方面への車両を準備できます」
といった空車予定や希望する配送地域を早めに伝えることで、荷主様が輸送を相談しやすくなります。
これまでの営業では、荷物が出てからトラックを探し、トラックが空いてから荷物を探すことが一般的でした。
しかし、それでは準備できる時間が短く、限られた選択肢の中で手配しなければなりません。
荷物とトラックの情報を早い段階から共有できれば、双方が条件を確認しながら、より無理のない輸送を組み立てられます。
荷主様だけでも、運送会社様だけでも物流の効率化は進みません。
双方が情報を持ち寄ることが大切です。
5. 地方行きが決まった時点から帰り荷を探す
運送会社様では、地方行きの配車が決まると、その時点から帰り荷を探し始めます。
例えば、大阪から東京への運行が決まれば、東京や周辺地域から関西方面へ戻る帰り荷を探します。
帰り荷を探し始めるのは、車両が空く2日前からとは限りません。
地方行きが決まった時点から探し始め、見つからなければ運行当日まで継続して探します。
帰り荷が見つからなければ、トラックは空車で長い距離を戻らなければなりません。
荷物を積んでいなくても、燃料費、高速道路料金、人件費などは発生します。
その一方で、荷主様の中には、同じ方面へ運びたい荷物があっても、その帰りに利用できるトラックの存在を知る方法がありません。
荷主様は帰り便を利用したい。
運送会社様は帰り荷を探している。
本来は条件が合う両者が、情報の不足によって出会えていないことがあります。
この情報の空白を少なくすることが、物流効率化の大切な一歩です。
6. 帰り便・帰り荷は長距離輸送だけではない
帰り便や帰り荷というと、大阪から東京、関西から九州といった長距離輸送を想像するかもしれません。
しかし、近隣県への輸送でも考え方は同じです。
大阪府から兵庫県へ荷物を届けたトラックが、大阪方面へ戻る。
京都府から滋賀県へ向かったトラックが、帰りに京都方面の荷物を積む。
このような比較的短い距離でも、帰り便と帰り荷を組み合わせることはできます。
一台のトラック、一回の運行だけを見れば、小さな効率化に見えるかもしれません。
それでも、同じ取り組みが毎日、各地で積み重なれば、空車走行の削減、燃料使用量の抑制、車両稼働率の改善につながります。
ただし、帰り荷だからといって、安い運賃で運ぶという意味ではありません。
追加走行距離、荷待ち時間、荷役作業、高速道路料金、拘束時間などを確認し、運送会社様に適正な収益が残る条件でなければ、持続可能な取引にはなりません。
荷主様と運送会社様の双方に価値が残ることが重要です。
7. デジタル化は人の仕事をなくすためではない
物流のデジタル化は、人の仕事をなくすためのものではありません。
電話やFAXによる連絡には、細かな条件を相談できる良さがあります。しかし、担当者が不在のときには情報が止まり、同じ内容を何度も伝えなければならないこともあります。
デジタル技術を活用すれば、荷物の情報、空車予定、希望する配送地域などを、必要とする人へ広く届けられます。
そのうえで、最終的な条件の確認や判断は人が行います。
物流は、荷物の大きさや重さだけで決まる仕事ではありません。
集荷先の状況、納品条件、荷役方法、道路事情、ドライバーの運行時間など、数字だけでは判断できない要素が数多くあります。
だからこそ、デジタル技術に任せる部分と、人が責任を持って確認する部分を分けることが大切です。
技術が人に代わるのではなく、人がより良い判断をするために技術を使う。
それが物流業界に必要なデジタル化だと私たちは考えています。
8. 情報共有が物流の信頼を育てる
情報共有には、輸送効率を高めるだけでなく、荷主様と運送会社様の信頼関係を育てる力があります。
予定が変わった場合に早く伝える。
分からないことを曖昧にせず確認する。
荷待ちや附帯作業など、運送条件に関わる情報を事前に共有する。
こうした当たり前の積み重ねが、現場の負担を減らします。
反対に、必要な情報が伝わっていなければ、集荷先で待ち時間が発生したり、予定していた車両では積載できなかったりすることがあります。
物流は、荷物を出して終わり、運んで終わりではありません。
荷主様と運送会社様が互いの状況を理解し、協力して初めて、安定した輸送が実現します。
情報を早く、正確に、分かりやすく伝えることは、これからの物流における大切な思いやりでもあります。
9. おわりに
物流業界が抱える課題は、一つの会社だけで解決できるものではありません。
ドライバー不足、燃料費の上昇、長時間労働、空車走行など、さまざまな問題が関係しています。
しかし、大きな課題だからこそ、まずは現場でできることから始める必要があります。
荷主様が出荷予定を少し早く伝える。
運送会社様が空車予定や希望する配送地域を早めに伝える。
予定が変われば、すぐに共有する。
それだけでも、荷物とトラックが出会える可能性は高くなります。
物流の未来は、特別な技術だけによってつくられるものではありません。
現場で働く一人ひとりが情報を持ち寄り、相手の立場を考えながら協力することで、少しずつ変わっていくものだと思います。
丸共協同株式会社は、これからも物流の現場で培ってきた経験を大切にしながら、荷主様と運送会社様がより良い形でつながる方法を考えてまいります。
