2026年企業倒産から考える物流のリスク分散 運送会社の倒産・一社依存・売上分散
2026.09.08
企業倒産が増えるいま、物流は「一社依存」をどう考えるか
― 2026年の企業倒産と道路貨物運送業から考える、売上・取引・輸送のリスク分散 ―
2026年、国内企業の倒産が高い水準で推移しています。
物価高、人件費の上昇、人手不足、販売不振、後継者問題。
企業を取り巻く経営環境が変化するなか、物流業界でも道路貨物運送業の倒産が高い水準にあります。
ただ、今回考えたいのは「運送会社の倒産が増えている」ということだけではありません。
企業は一社だけで事業を行っているわけではありません。
商品を販売する会社があり、購入する会社があり、仕事を依頼する会社があり、それを受ける会社があります。そして、その間を物流がつないでいます。
一社の経営状況が大きく変化すれば、その影響が取引先へ広がることもあります。
企業倒産が増えている今だからこそ、物流でも「一社に依存しすぎない」という視点を持つことが大切になっているのではないでしょうか。
2026年上半期の企業倒産は5,335件
帝国データバンクによると、2026年1月から6月までの企業倒産は5,335件でした。
前年同期の5,003件から6.6%増加し、上半期として4年連続で前年を上回りました。また、2年連続で5,000件を超える高い水準となっています。
負債5,000万円未満の倒産は3,320件で全体の62.2%。個人事業者と資本金1,000万円未満を合わせると3,875件となり、全体の72.6%を占めています。
小規模な企業を中心に、厳しい経営環境が続いていることが分かります。
その後も倒産件数は高い水準で推移しています。
2026年7月は1,037件となり、前年同月の956件から8.5%増加しました。
6月の1,028件に続いて2カ月連続で1,000件を上回っており、帝国データバンクによると、これはリーマン・ショックの影響が残っていた2009年11~12月以来、およそ17年ぶりです。
業種別に見ると、物流だけの問題ではない
2026年上半期は、帝国データバンクが分類する主要7業種のうち6業種で前年同期を上回りました。
主な業種を見ると、次のようになっています。
業種2025年上半期2026年上半期前年同期比
サービス業1,329件1,418件+6.7%
小売業1,078件1,108件+2.8%
建設業986件1,043件+5.8%
運輸・通信業195件231件+18.5%
サービス業は2000年以降で最多となり、建設業は上半期として13年ぶりに1,000件を超えました。
運輸・通信業も前年同期比18.5%増となっています。
物流会社にとって重要なのは、倒産が物流業界だけで増えているわけではないということです。
運送会社の取引先には、製造業、卸売業、小売業、建設業、サービス業など、さまざまな業種があります。
荷主となる企業の経営が悪化すれば、生産量や販売量が減り、それに伴って輸送量が減ることがあります。
事業そのものが縮小・終了すれば、それまで動いていた荷物がなくなることもあります。
運送会社が経営環境を見るときには、物流業界だけではなく、荷主となる産業全体の動きにも目を向ける必要があります。
倒産の約8割を「販売不振」が占める
2026年上半期の倒産原因を見ると、「販売不振」が4,278件となり、全体の80.2%を占めています。
また、「売掛金回収難」は前年同期の14件から32件へ増加しました。
そのほか、
人手不足倒産 227件
物価高倒産 556件
後継者難倒産 312件
となり、いずれも上半期として過去最多を更新しています。
企業倒産は、一つの理由だけで起こるものではありません。
売上が伸びない。
原価が上がる。
人材を確保できない。
人件費が上昇する。
資金繰りが厳しくなる。
こうした複数の問題が重なり、事業継続が難しくなる場合があります。
そして企業倒産が増えるということは、倒産した会社だけの問題でもありません。
その企業へ商品を販売していた会社、仕事を請け負っていた会社、輸送を担っていた会社にも影響が広がる可能性があります。
一般貨物運送会社にも関わる「道路貨物運送業」の倒産
一般貨物運送会社の経営環境を見るうえでも、道路貨物運送業の倒産動向は重要な参考になります。
帝国データバンクによると、2025年度の道路貨物運送業の倒産は321件でした。
前年度の351件からは減少していますが、件数の多い年度から順に見ると、
1位 2008年度 371件
2位 2024年度 351件
3位 2009年度 341件
4位 2025年度 321件
となり、2025年度も過去4番目の高い水準です。
2025年度の道路貨物運送業では、人手不足を要因とした倒産が55件、物価高を要因とした倒産が91件確認されています。
帝国データバンクは、現在の道路貨物運送業について、一定の物流需要がある一方で、人手不足によって受注を十分にこなせないという、リーマン・ショック当時とは異なる状況も指摘しています。
つまり、現在は「仕事がない」だけが問題ではありません。
仕事があってもドライバーが足りない。
人材を確保するためには賃金を上げる必要がある。
燃料費も高い。
車両や整備にかかる費用も上昇する。
そして、それらのコストを十分に運賃へ反映できるとは限りません。
現在の運送会社経営には、複数の課題が重なっています。
2026年に入っても小規模事業者を中心に厳しい状況
東京商工リサーチが2026年5月19日に公表した調査によると、2026年1月から4月までの道路貨物運送業の倒産は108件。
前年同期比11.3%増となり、2年ぶりに100件を超えました。
108件のうち、
資本金1,000万円未満 76件
負債1億円未満 76件
従業員5人未満 53件
となっています。
さらに、人手不足関連の倒産は23件となり、東京商工リサーチが集計を開始した2013年以降で最多となりました。
中小・小規模な運送会社にとって、人材確保やコスト上昇への対応が大きな経営課題になっていることが分かります。
なお、帝国データバンクと東京商工リサーチでは、倒産の集計基準や集計方法などが異なります。
そのため、本稿では両社の数字を単純につなげて時系列比較するのではなく、それぞれの調査結果から現在の傾向を確認しています。
適正な運賃と物流効率化を両方考える
運送会社の経営を安定させるためには、適正な運賃を確保することが欠かせません。
燃料費、人件費、車両費、整備費、保険料など、輸送に必要な原価を踏まえた運賃を収受できなければ、持続可能な経営は難しくなります。
その一方で、運賃だけですべてが解決するわけでもありません。
トラックが荷物を積まずに走れば、燃料費と人件費は発生しても売上は生まれません。
荷待ち時間が長ければ、一人のドライバーが対応できる仕事量も減ります。
帰り荷がなければ、往路の売上から復路のコストまで負担することになります。
これからは、
適正な運賃を確保すること。
物流の中にある無駄を減らすこと。
この両方を考えていく必要があります。
企業倒産が増える時代だから考えたい「取引先リスク」
もう一つ考えておきたいのが、取引先への依存です。
今回の倒産統計が「一社依存」を直接の倒産原因として示しているわけではありません。
しかし、一社への売上依存が大きければ、その取引先に何かあったときの影響も大きくなります。
例えば、年間売上の半分を一社の荷主様との取引が占めていたとします。
長年安定した取引が続いていれば、大切なお客様であり、会社にとって大きな財産です。
しかし、その荷主様が事業を縮小した場合、輸送量が減り、自社の売上にも大きな影響が出る可能性があります。
売掛金が残った状態で取引先の経営が行き詰まれば、資金繰りへの影響も考える必要があります。
大口のお客様を持つことが問題なのではありません。
「大切な取引先を持つこと」と、
「その一社だけに経営を依存すること」
は同じではないということです。
運送会社同士の取引でも、一社依存を考える
物流業界では、運送会社同士が仕事を依頼し合うことが日常的にあります。
自社で対応できない輸送を別の運送会社へ依頼する。
繁忙期に車両を融通する。
遠方の輸送をお願いする。
帰り荷を紹介してもらう。
こうした協力関係があるからこそ、日本全国の物流が成り立っています。
問題なのは、運送会社同士で取引することではありません。
ここでも、特定の一社へ仕事や売上が集中しすぎていないかを見ることが大切です。
例えば、
荷主
↓
運送会社A
↓
運送会社B
という取引があったとします。
運送会社Bにとって運送会社Aは、仕事を受ける相手であると同時に、運賃を支払ってもらう取引先でもあります。
もし運送会社Aの経営が急激に悪化すれば、
仕事が減る。
新しい仕事が入らなくなる。
売掛金の回収に影響する。
別の仕事を探す必要が出てくる。
といった問題が重なる可能性があります。
反対に、輸送をお願いしている運送会社が突然対応できなくなれば、依頼側も代わりの車両を確保しなければなりません。
物流は企業同士がつながって成り立っているからこそ、一社の変化が前後の会社にも影響することがあります。
売上を見るときは「金額」だけではなく「割合」も見る
そこで、一度確認しておきたいのが自社の売上構成です。
例えば、
A社 50%
B社 20%
C社 10%
その他 20%
という会社と、
A社 25%
B社 20%
C社 15%
D社 15%
その他 25%
という会社では、一社の取引量が大きく変化した場合の影響が異なります。
もちろん、「一社何%までなら安全」という共通の基準があるわけではありません。
定期便中心なのか、スポット輸送中心なのか。
輸送する荷物や地域によっても事情は変わります。
大切なのは、売上金額を見るだけではなく、
「その売上がどの取引先から生まれているのか」
を把握しておくことです。
売上分散とは、既存のお客様との関係を薄くすることではありません。
現在のお取引を大切にしながら、新しい売上先も少しずつ増やしていく。
その積み重ねが、一社への過度な依存を抑えることにつながります。
帰り荷は、新しい取引先とつながるきっかけにもなる
帰り荷を確保する意味も、空車走行の削減だけではありません。
例えば、大阪から東京への往路は長年お付き合いしている荷主様の仕事。
東京から大阪への帰り荷は、別の荷主様の仕事。
このような組み合わせができれば、既存のお客様との取引を大切にしながら、新しい売上を作ることができます。
帰り荷を確保することは、
空車走行を減らす。
車両の稼働効率を高める。
輸送全体の収益性を改善する。
そして、新しい荷主様との接点を作る。
こうした複数の意味を持っています。
小さなスポット輸送から始まった仕事が、将来、継続的なお取引につながることもあります。
既存のお客様を大切にしながら、新しいつながりを少しずつ増やしていく。
帰り荷には、そのような経営面での意味もあるのではないでしょうか。
荷主側も「売上先の分散」を考える
一社依存の問題は、運送会社だけのものではありません。
荷主となる企業にも同じことが言えます。
例えば、自社の商品売上の大部分を一社の販売先に依存している場合、その取引先が発注を減らしたり、事業を縮小したりすれば、自社の売上にも大きな影響があります。
製造業、卸売業、小売業など業種を問わず、
「誰に売っているのか」
「主要な販売先が売上全体のどの程度を占めているのか」
を把握しておくことは、経営リスクを考えるうえで重要です。
既存のお客様を大切にしながら、新しい販売先や市場を少しずつ増やしていく。
これは運送会社の売上分散と同じ考え方です。
荷主側には「輸送の分散」という備えもある
荷主にとっては、物流についても複数の選択肢を持っておくことが重要です。
普段お願いしている運送会社様との信頼関係は、これからも大切にすべきものです。
その一方で、
ドライバー不足。
車両不足。
繁忙期。
災害。
事業縮小。
休廃業。
などによって、いつもと同じ輸送体制を組めない可能性もあります。
中心となる運送会社様との関係を大切にしながら、
別地域に強い運送会社様。
繁忙期に相談できる運送会社様。
特定の車種や荷物に強い運送会社様。
緊急時に相談できる運送会社様。
との接点も持っておく。
これは既存の取引関係を弱めるためではありません。
物流を止めないための備えです。
荷主にとっても、販売先、仕入先、輸送手段について複数の選択肢を持つことが、企業経営の安定につながります。
数を増やすだけではなく、信頼できるつながりを増やす
ただし、取引先を増やせば、それだけで安全になるわけではありません。
新しい取引では、会社の信用状況や支払い条件、安全管理、輸送品質、対応力などを確認することも必要です。
これから大切になるのは、単純に取引先の数を増やすことではなく、
「信頼できる選択肢を増やしておくこと」
ではないでしょうか。
今回のデータから考えたいこと
企業倒産が増え、道路貨物運送業でも厳しい経営環境が続いています。
だからこそ、倒産件数そのものを見るだけではなく、
「自社は変化に備えられているか」
を考えることが大切です。
一社との信頼関係を大切にする。
しかし、一社だけには依存しない。
運送会社には複数の仕事や売上先の選択肢があり、荷主には複数の販売先や輸送手段の選択肢がある。
そのような状態を少しずつ作っていくことが、予期しない変化への備えになるのではないでしょうか。
私たち丸共協同株式会社も、長年物流の仕事に携わるなかで、多くの荷主様、運送会社様、協力会社様に支えていただいてきました。
物流は、一社だけで成り立つものではありません。
必要なときに相談できる相手がいる。
お互いに支え合える会社がある。
荷物があるところと、車両があるところがつながる。
そうした信頼できるつながりを増やしていくことも、これからの物流を守る一つの方法だと考えています。
丸共協同株式会社は、これからも既存のお取引を大切にしながら、物流の現場から持続可能な物流のあり方を考えてまいります。
参考資料
・帝国データバンク「倒産集計 2026年上半期報(1月~6月)」2026年7月8日公表
・帝国データバンク「倒産集計 2026年7月報」2026年8月10日公表
・帝国データバンク「『道路貨物運送業』の倒産動向(2025年度)」2026年4月8日公表
・東京商工リサーチ「2026年1-4月の『道路貨物運送業』倒産 108件に増加」2026年5月19日公表
― 2026年の企業倒産と道路貨物運送業から考える、売上・取引・輸送のリスク分散 ―
2026年、国内企業の倒産が高い水準で推移しています。
物価高、人件費の上昇、人手不足、販売不振、後継者問題。
企業を取り巻く経営環境が変化するなか、物流業界でも道路貨物運送業の倒産が高い水準にあります。
ただ、今回考えたいのは「運送会社の倒産が増えている」ということだけではありません。
企業は一社だけで事業を行っているわけではありません。
商品を販売する会社があり、購入する会社があり、仕事を依頼する会社があり、それを受ける会社があります。そして、その間を物流がつないでいます。
一社の経営状況が大きく変化すれば、その影響が取引先へ広がることもあります。
企業倒産が増えている今だからこそ、物流でも「一社に依存しすぎない」という視点を持つことが大切になっているのではないでしょうか。
2026年上半期の企業倒産は5,335件
帝国データバンクによると、2026年1月から6月までの企業倒産は5,335件でした。
前年同期の5,003件から6.6%増加し、上半期として4年連続で前年を上回りました。また、2年連続で5,000件を超える高い水準となっています。
負債5,000万円未満の倒産は3,320件で全体の62.2%。個人事業者と資本金1,000万円未満を合わせると3,875件となり、全体の72.6%を占めています。
小規模な企業を中心に、厳しい経営環境が続いていることが分かります。
その後も倒産件数は高い水準で推移しています。
2026年7月は1,037件となり、前年同月の956件から8.5%増加しました。
6月の1,028件に続いて2カ月連続で1,000件を上回っており、帝国データバンクによると、これはリーマン・ショックの影響が残っていた2009年11~12月以来、およそ17年ぶりです。
業種別に見ると、物流だけの問題ではない
2026年上半期は、帝国データバンクが分類する主要7業種のうち6業種で前年同期を上回りました。
主な業種を見ると、次のようになっています。
業種2025年上半期2026年上半期前年同期比
サービス業1,329件1,418件+6.7%
小売業1,078件1,108件+2.8%
建設業986件1,043件+5.8%
運輸・通信業195件231件+18.5%
サービス業は2000年以降で最多となり、建設業は上半期として13年ぶりに1,000件を超えました。
運輸・通信業も前年同期比18.5%増となっています。
物流会社にとって重要なのは、倒産が物流業界だけで増えているわけではないということです。
運送会社の取引先には、製造業、卸売業、小売業、建設業、サービス業など、さまざまな業種があります。
荷主となる企業の経営が悪化すれば、生産量や販売量が減り、それに伴って輸送量が減ることがあります。
事業そのものが縮小・終了すれば、それまで動いていた荷物がなくなることもあります。
運送会社が経営環境を見るときには、物流業界だけではなく、荷主となる産業全体の動きにも目を向ける必要があります。
倒産の約8割を「販売不振」が占める
2026年上半期の倒産原因を見ると、「販売不振」が4,278件となり、全体の80.2%を占めています。
また、「売掛金回収難」は前年同期の14件から32件へ増加しました。
そのほか、
人手不足倒産 227件
物価高倒産 556件
後継者難倒産 312件
となり、いずれも上半期として過去最多を更新しています。
企業倒産は、一つの理由だけで起こるものではありません。
売上が伸びない。
原価が上がる。
人材を確保できない。
人件費が上昇する。
資金繰りが厳しくなる。
こうした複数の問題が重なり、事業継続が難しくなる場合があります。
そして企業倒産が増えるということは、倒産した会社だけの問題でもありません。
その企業へ商品を販売していた会社、仕事を請け負っていた会社、輸送を担っていた会社にも影響が広がる可能性があります。
一般貨物運送会社にも関わる「道路貨物運送業」の倒産
一般貨物運送会社の経営環境を見るうえでも、道路貨物運送業の倒産動向は重要な参考になります。
帝国データバンクによると、2025年度の道路貨物運送業の倒産は321件でした。
前年度の351件からは減少していますが、件数の多い年度から順に見ると、
1位 2008年度 371件
2位 2024年度 351件
3位 2009年度 341件
4位 2025年度 321件
となり、2025年度も過去4番目の高い水準です。
2025年度の道路貨物運送業では、人手不足を要因とした倒産が55件、物価高を要因とした倒産が91件確認されています。
帝国データバンクは、現在の道路貨物運送業について、一定の物流需要がある一方で、人手不足によって受注を十分にこなせないという、リーマン・ショック当時とは異なる状況も指摘しています。
つまり、現在は「仕事がない」だけが問題ではありません。
仕事があってもドライバーが足りない。
人材を確保するためには賃金を上げる必要がある。
燃料費も高い。
車両や整備にかかる費用も上昇する。
そして、それらのコストを十分に運賃へ反映できるとは限りません。
現在の運送会社経営には、複数の課題が重なっています。
2026年に入っても小規模事業者を中心に厳しい状況
東京商工リサーチが2026年5月19日に公表した調査によると、2026年1月から4月までの道路貨物運送業の倒産は108件。
前年同期比11.3%増となり、2年ぶりに100件を超えました。
108件のうち、
資本金1,000万円未満 76件
負債1億円未満 76件
従業員5人未満 53件
となっています。
さらに、人手不足関連の倒産は23件となり、東京商工リサーチが集計を開始した2013年以降で最多となりました。
中小・小規模な運送会社にとって、人材確保やコスト上昇への対応が大きな経営課題になっていることが分かります。
なお、帝国データバンクと東京商工リサーチでは、倒産の集計基準や集計方法などが異なります。
そのため、本稿では両社の数字を単純につなげて時系列比較するのではなく、それぞれの調査結果から現在の傾向を確認しています。
適正な運賃と物流効率化を両方考える
運送会社の経営を安定させるためには、適正な運賃を確保することが欠かせません。
燃料費、人件費、車両費、整備費、保険料など、輸送に必要な原価を踏まえた運賃を収受できなければ、持続可能な経営は難しくなります。
その一方で、運賃だけですべてが解決するわけでもありません。
トラックが荷物を積まずに走れば、燃料費と人件費は発生しても売上は生まれません。
荷待ち時間が長ければ、一人のドライバーが対応できる仕事量も減ります。
帰り荷がなければ、往路の売上から復路のコストまで負担することになります。
これからは、
適正な運賃を確保すること。
物流の中にある無駄を減らすこと。
この両方を考えていく必要があります。
企業倒産が増える時代だから考えたい「取引先リスク」
もう一つ考えておきたいのが、取引先への依存です。
今回の倒産統計が「一社依存」を直接の倒産原因として示しているわけではありません。
しかし、一社への売上依存が大きければ、その取引先に何かあったときの影響も大きくなります。
例えば、年間売上の半分を一社の荷主様との取引が占めていたとします。
長年安定した取引が続いていれば、大切なお客様であり、会社にとって大きな財産です。
しかし、その荷主様が事業を縮小した場合、輸送量が減り、自社の売上にも大きな影響が出る可能性があります。
売掛金が残った状態で取引先の経営が行き詰まれば、資金繰りへの影響も考える必要があります。
大口のお客様を持つことが問題なのではありません。
「大切な取引先を持つこと」と、
「その一社だけに経営を依存すること」
は同じではないということです。
運送会社同士の取引でも、一社依存を考える
物流業界では、運送会社同士が仕事を依頼し合うことが日常的にあります。
自社で対応できない輸送を別の運送会社へ依頼する。
繁忙期に車両を融通する。
遠方の輸送をお願いする。
帰り荷を紹介してもらう。
こうした協力関係があるからこそ、日本全国の物流が成り立っています。
問題なのは、運送会社同士で取引することではありません。
ここでも、特定の一社へ仕事や売上が集中しすぎていないかを見ることが大切です。
例えば、
荷主
↓
運送会社A
↓
運送会社B
という取引があったとします。
運送会社Bにとって運送会社Aは、仕事を受ける相手であると同時に、運賃を支払ってもらう取引先でもあります。
もし運送会社Aの経営が急激に悪化すれば、
仕事が減る。
新しい仕事が入らなくなる。
売掛金の回収に影響する。
別の仕事を探す必要が出てくる。
といった問題が重なる可能性があります。
反対に、輸送をお願いしている運送会社が突然対応できなくなれば、依頼側も代わりの車両を確保しなければなりません。
物流は企業同士がつながって成り立っているからこそ、一社の変化が前後の会社にも影響することがあります。
売上を見るときは「金額」だけではなく「割合」も見る
そこで、一度確認しておきたいのが自社の売上構成です。
例えば、
A社 50%
B社 20%
C社 10%
その他 20%
という会社と、
A社 25%
B社 20%
C社 15%
D社 15%
その他 25%
という会社では、一社の取引量が大きく変化した場合の影響が異なります。
もちろん、「一社何%までなら安全」という共通の基準があるわけではありません。
定期便中心なのか、スポット輸送中心なのか。
輸送する荷物や地域によっても事情は変わります。
大切なのは、売上金額を見るだけではなく、
「その売上がどの取引先から生まれているのか」
を把握しておくことです。
売上分散とは、既存のお客様との関係を薄くすることではありません。
現在のお取引を大切にしながら、新しい売上先も少しずつ増やしていく。
その積み重ねが、一社への過度な依存を抑えることにつながります。
帰り荷は、新しい取引先とつながるきっかけにもなる
帰り荷を確保する意味も、空車走行の削減だけではありません。
例えば、大阪から東京への往路は長年お付き合いしている荷主様の仕事。
東京から大阪への帰り荷は、別の荷主様の仕事。
このような組み合わせができれば、既存のお客様との取引を大切にしながら、新しい売上を作ることができます。
帰り荷を確保することは、
空車走行を減らす。
車両の稼働効率を高める。
輸送全体の収益性を改善する。
そして、新しい荷主様との接点を作る。
こうした複数の意味を持っています。
小さなスポット輸送から始まった仕事が、将来、継続的なお取引につながることもあります。
既存のお客様を大切にしながら、新しいつながりを少しずつ増やしていく。
帰り荷には、そのような経営面での意味もあるのではないでしょうか。
荷主側も「売上先の分散」を考える
一社依存の問題は、運送会社だけのものではありません。
荷主となる企業にも同じことが言えます。
例えば、自社の商品売上の大部分を一社の販売先に依存している場合、その取引先が発注を減らしたり、事業を縮小したりすれば、自社の売上にも大きな影響があります。
製造業、卸売業、小売業など業種を問わず、
「誰に売っているのか」
「主要な販売先が売上全体のどの程度を占めているのか」
を把握しておくことは、経営リスクを考えるうえで重要です。
既存のお客様を大切にしながら、新しい販売先や市場を少しずつ増やしていく。
これは運送会社の売上分散と同じ考え方です。
荷主側には「輸送の分散」という備えもある
荷主にとっては、物流についても複数の選択肢を持っておくことが重要です。
普段お願いしている運送会社様との信頼関係は、これからも大切にすべきものです。
その一方で、
ドライバー不足。
車両不足。
繁忙期。
災害。
事業縮小。
休廃業。
などによって、いつもと同じ輸送体制を組めない可能性もあります。
中心となる運送会社様との関係を大切にしながら、
別地域に強い運送会社様。
繁忙期に相談できる運送会社様。
特定の車種や荷物に強い運送会社様。
緊急時に相談できる運送会社様。
との接点も持っておく。
これは既存の取引関係を弱めるためではありません。
物流を止めないための備えです。
荷主にとっても、販売先、仕入先、輸送手段について複数の選択肢を持つことが、企業経営の安定につながります。
数を増やすだけではなく、信頼できるつながりを増やす
ただし、取引先を増やせば、それだけで安全になるわけではありません。
新しい取引では、会社の信用状況や支払い条件、安全管理、輸送品質、対応力などを確認することも必要です。
これから大切になるのは、単純に取引先の数を増やすことではなく、
「信頼できる選択肢を増やしておくこと」
ではないでしょうか。
今回のデータから考えたいこと
企業倒産が増え、道路貨物運送業でも厳しい経営環境が続いています。
だからこそ、倒産件数そのものを見るだけではなく、
「自社は変化に備えられているか」
を考えることが大切です。
一社との信頼関係を大切にする。
しかし、一社だけには依存しない。
運送会社には複数の仕事や売上先の選択肢があり、荷主には複数の販売先や輸送手段の選択肢がある。
そのような状態を少しずつ作っていくことが、予期しない変化への備えになるのではないでしょうか。
私たち丸共協同株式会社も、長年物流の仕事に携わるなかで、多くの荷主様、運送会社様、協力会社様に支えていただいてきました。
物流は、一社だけで成り立つものではありません。
必要なときに相談できる相手がいる。
お互いに支え合える会社がある。
荷物があるところと、車両があるところがつながる。
そうした信頼できるつながりを増やしていくことも、これからの物流を守る一つの方法だと考えています。
丸共協同株式会社は、これからも既存のお取引を大切にしながら、物流の現場から持続可能な物流のあり方を考えてまいります。
参考資料
・帝国データバンク「倒産集計 2026年上半期報(1月~6月)」2026年7月8日公表
・帝国データバンク「倒産集計 2026年7月報」2026年8月10日公表
・帝国データバンク「『道路貨物運送業』の倒産動向(2025年度)」2026年4月8日公表
・東京商工リサーチ「2026年1-4月の『道路貨物運送業』倒産 108件に増加」2026年5月19日公表
