物流Gメンの調査とは?荷待ち47%から考える物流記録の重要性
2026.09.14
荷主様 コラム
物流Gメンの調査は何を見ているのか
― 荷待ち47%、契約にない附帯業務21%から考える「記録する物流」の重要性 ―
物流取引の適正化に必要なのは、制度を知ることだけではありません。
荷物がいつ到着し、いつ荷役が始まり、どのような作業が発生し、運賃についてどのような話し合いが行われたのか。こうした事実を、後から確認できる形で残すことが重要です。
国土交通省が実施している「違反原因行為に係る実態調査」は、長時間の荷待ちや契約にない附帯業務、運賃・料金の不当な据え置きなどについて、運送会社から具体的な情報を集めるものです。
調査結果は、単に統計として公表されるだけではありません。必要に応じて、トラック・物流Gメンによる荷主や元請事業者等への働きかけ、要請、勧告などの是正指導に活用されています。
今回の資料から見えてくるのは、物流の取引を守るうえで「記録」がこれまで以上に大切になっているということです。
この記事の要点
・主な違反原因行為では、長時間の荷待ちと契約にない附帯業務が全体の68%を占めています。
・荷待ち時間、作業内容、運賃交渉などを記録することが、事実確認と業務改善の両方に役立ちます。
・記録は相手を責めるためではなく、荷主と運送会社が共通の事実を基に改善を進めるためのものです。
目次
1.実態調査は是正指導につながる情報収集
2.最も多いのは長時間の荷待ち
3.荷待ちと附帯業務で全体の68%
4.なぜ物流では記録が重要なのか
5.荷主様と運送会社様が取り組めること
6.記録が物流の信頼を育てる
1.実態調査は是正指導につながる情報収集
国土交通省の令和7年度調査は、全国のトラック事業者約6万社を対象に行われ、2万1,048件の回答がありました。回答数には、同じ事業者からの複数回答が含まれています。
このうち、違反原因行為があったとする回答は2,007件でした。前年度の3,308件から約39%減少しており、国土交通省は、Gメンによる是正指導や荷主パトロール、制度改正などを通じ、荷主側の意識に改善が見られることも一因としています。
一方で、問題が解消されたわけではありません。
令和7年10月から11月の集中監視月間には、調査等で得られた情報を基に、勧告1件、要請7件、働きかけ363件、合計371件の措置が行われました。
さらに、国土交通省が公表している令和8年6月30日時点の累計では、勧告5件、要請197件、働きかけ2,472件、合計2,674件となっています。
この数字からも、実態調査が単なる意識調査ではなく、具体的な是正指導の入口になっていることが分かります。
2.最も多いのは長時間の荷待ち
今回確認した調査資料では、主な違反原因行為の割合は次のようになっています。
主な違反原因行為
割合
長時間の荷待ち
47%
契約にない附帯業務
21%
運賃・料金の不当な据え置き
15%
無理な運送依頼
7%
過積載運送の指示・容認
6%
異常気象時の運送依頼
4%
ここで注意したいのは、この47%が「全国の運送会社の47%で荷待ちが発生している」という意味ではないことです。調査資料に掲載された、主な違反原因行為の構成割合です。
それでも、長時間の荷待ちが最も大きな割合を占めている事実は重く受け止める必要があります。
国土交通省の追加調査では、長時間の荷待ちが発生する主な原因として、バースの計画・管理が45%、荷役作業の計画・管理が25%、倉庫設備の能力が16%、荷主側の業務計画・管理が14%と整理されています。
単に「現場の作業が遅い」という問題ではありません。予約の運用、伝票やデータの連携、人員配置、バース数、荷さばき場所、入出荷計画など、複数の要因が重なって荷待ちが発生しています。
3.荷待ちと附帯業務で全体の68%
長時間の荷待ち47%と、契約にない附帯業務21%を合わせると68%になります。
この二つに共通するのは、走行距離だけでは把握できないコストだということです。
トラックが止まっている時間にも、ドライバーの人件費や車両費は発生しています。仕分け、検品、ラベル貼り、棚入れ、横持ちなどの作業を行えば、その時間と作業負担も生じます。
しかし、荷待ち時間や附帯業務が記録されていなければ、荷主側は実態を十分に把握できません。運送会社側も、どの業務にどれだけの時間と費用がかかったのかを説明しにくくなります。
問題が起きてから、「以前からそうしていた」「そこまでが運賃に含まれていると思っていた」と認識の違いが表面化することもあります。
悪意がなくても、契約内容と現場運用の間にずれが生じれば、負担は少しずつ積み重なります。
4.なぜ物流では記録が重要なのか
国土交通省の調査票では、相手事業者の名称だけでなく、発生場所、日時、頻度、車種、貨物の種類、具体的な依頼内容、運賃交渉の経緯など、詳しい情報を確認しています。
これは、一般的な不満だけでは、何が起きたのかを正確に判断することが難しいためです。
例えば荷待ちについては、少なくとも次の時刻を分けて記録する必要があります。
・指定された到着時刻または時間帯
・実際の到着時刻
・受付時刻
・荷役開始時刻
・荷役終了時刻
・出発時刻
荷待ちと荷役を分けて記録すれば、待機が長いのか、作業そのものに時間がかかっているのかが見えてきます。
契約にない作業が発生した場合も、作業の名称だけでなく、誰から依頼されたのか、何分かかったのか、何回発生したのか、料金が支払われたのかを残すことで、次回の契約や業務改善につなげられます。
運賃交渉についても同じです。交渉した日、提示した金額、燃料費・人件費・高速料金などの根拠、相手からの回答を記録しておけば、「話した」「聞いていない」という行き違いを減らせます。
5.荷主様と運送会社様が取り組めること
荷主様にとって大切なのは、出荷予定、到着時間、荷役方法、附帯作業の有無などを、可能な範囲で早く明確に伝えることです。
輸送条件が早く分かれば、運送会社様は車両とドライバーを無理なく配置し、地方行きが決まった段階から帰り荷の調整も始められます。予定変更がある場合も、早い情報共有によって別の方法を検討しやすくなります。
運送会社様にとっては、荷待ちや作業時間を感覚だけで伝えるのではなく、日報、受付記録、配車記録などを通じて、具体的な事実として共有することが重要です。
また、契約に含まれていない作業を求められた場合は、可能な限り作業前に内容と料金を確認し、緊急対応で事前確認が難しい場合でも、作業後に記録と報告を残す必要があります。
荷主様と運送会社様のどちらか一方だけが取り組んでも、十分な改善にはつながりません。共通の記録を基に、どこに時間がかかり、何を変えればよいのかを一緒に確認することが大切です。
6.記録が物流の信頼を育てる
丸共協同株式会社は、長年にわたり荷主様、運送会社様、協力会社様と輸送を組み立ててきました。
その経験から感じるのは、物流の問題のすべてが、誰かの悪意から起きるわけではないということです。
依頼内容が十分に伝わっていなかった。現場で追加された作業が契約担当者まで共有されていなかった。待ち時間が発生していても、数字として残っていなかった。こうした小さな情報のずれが、時間とともに大きな負担になることがあります。
記録は、相手を監視するためだけのものではありません。
荷主様にとっては、物流現場を正確に知り、改善するための情報になります。運送会社様にとっては、必要な費用や条件を説明し、安全で無理のない輸送を続けるための根拠になります。
物流の適正化は、通報や是正指導だけで完成するものではありません。
取引条件を明確にし、時間と作業を記録し、事実を共有する。その積み重ねが、荷主様と運送会社様の信頼を育て、持続可能な物流につながっていくと考えています。
参考資料
・国土交通省「トラック・物流Gメンについて」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000116.html
・国土交通省「違反原因行為に係る実態調査の結果(概要)」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001978835.pdf
・国土交通省「貨物自動車運送事業法附則第1条の2に基づく荷主への是正指導指針」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001913224.pdf
