ロゴ:丸共協同株式会社

新しい時代が求める物流創造企業 丸共協同株式会社

事例紹介 WORK

適正原価制度はこれからどうなる?

2026.08.28

― 実車率50%・帰り荷・物流効率化から読み解く国交省の最新検討 ―

目次
1.はじめに ― 適正原価の議論が本格的に始まった
2.まず知っておきたい「適正原価」とは
3.注目される「実車率50%」の見直し
4.実車率50%とは、そもそも何なのか
5.「標準的な運賃の半額になる」は決定事項ではない
6.新しい適正原価は「実際の経営原価」に近づくのか
7.国も「帰り荷」を重要な論点として考えている
8.適正原価と帰り荷は分けて考える必要がある
9.荷主様は「帰り便」、運送会社様は「帰り荷」
10.物流効率化した会社が損をする制度にしてはいけない
11.適正原価=運賃ではない ― 利益をどう考えるか
12.今後の第2回検討会で注目したいポイント
13.おわりに ― 運賃を守ることと空車を減らすことを両立する

1.はじめに ― 適正原価の議論が本格的に始まった

物流業界にとって、これから数年間で大きな転換点になる可能性があるのが「適正原価制度」です。

2025年6月に成立・公布された改正貨物自動車運送事業法により、トラック運送事業者が自ら運送するときや、他のトラック運送事業者等へ運送を委託するとき、国土交通大臣が定める「適正原価」を継続して下回らないようにする制度が導入されることになりました。

この規定は、法律の公布から3年以内に施行される予定です。

そして2026年7月17日、国土交通省は第1回「適正原価の設定に向けた有識者検討会」を開催しました。

現在、制度の具体的な計算方法や対象範囲などについて検討が始まっています。

その中で、物流業界から特に注目されているのが、

「実車率50%を今後どうするのか」

という問題です。

一部では「標準的な運賃の半額になるのではないか」といった懸念も出ています。

しかし、制度について考えるときには、決定したことと検討中のことを分ける必要があります。

2026年8月18日時点では、国土交通省の公式サイトで公表されている適正原価検討会は第1回までです。

今回は、現在確認できる国土交通省の公式情報をもとに、これから何が変わろうとしているのかを考えてみたいと思います。

2.まず知っておきたい「適正原価」とは

適正原価制度の目的の一つは、トラックドライバーの適切な賃金を確保し、持続可能な物流を実現することです。

運送会社様が仕事を受注するために無理な運賃競争を続ければ、

ドライバーの賃金、

車両の更新、

安全への投資、

整備費、

人材育成、

さらには会社そのものの存続にも影響します。

そこで、運送事業を継続するために必要となる原価を国が一定の基準として示し、それを継続して下回る取引を防いでいこうというのが制度の基本的な考え方です。

ここで重要なのは、

適正原価は「安い運賃を決める制度」ではない

ということです。

物流を持続させるために必要な原価を、どのように考えるべきなのか。

その基準づくりが始まっています。

3.注目される「実車率50%」の見直し

現在の「標準的な運賃」では、帰り荷がない運行でも原価を確保できるようにするため、

実車率50%

という前提が置かれています。

ところが国土交通省の適正原価に関する検討では、この前提についても見直しが必要ではないかという論点が示されています。

理由の一つは、

実際の運送・取引の実態との乖離

です。

全国の運送会社様がすべて同じ実車率で運行しているわけではありません。

長距離輸送が中心の会社もあれば、近距離輸送が中心の会社もあります。

往復とも荷物がある会社もあります。

帰り荷の確保が難しい地域もあります。

こうした実態を考えれば、一律に50%という数字を使うことが本当に適切なのか。

ここが今回の重要な検討事項になっています。

4.実車率50%とは、そもそも何なのか

分かりやすく、大阪から東京への輸送を考えてみます。

大阪 → 東京
500km・荷物あり

東京 → 大阪
500km・空車

トラックの総走行距離は1,000km。

荷物を積んでいる実車距離は500kmです。

したがって、

500km ÷ 1,000km=実車率50%

となります。

しかし、東京から大阪まで空車で戻ったとしても、

燃料費、

ドライバーの人件費、

高速道路料金、

タイヤ代、

車両費、

整備費、

保険料などがゼロになるわけではありません。

つまり、

空車でもトラックを動かせば原価は発生する。

これが物流の現実です。

現在の標準的な運賃では、このような帰り荷がないケースを前提として実車率50%が設定されています。

5.「標準的な運賃の半額になる」は決定事項ではない

実車率50%の見直しが報じられたことで、

「適正原価になれば標準的な運賃の半額になるのではないか」

という懸念も出ています。

しかし、2026年8月時点で、

実車率を100%にする

帰りの空車分を原価として認めない

適正原価を現在の標準的な運賃の半額にする

と国が決定したわけではありません。

現段階では、

実車率50%という現在の前提を、実際の取引・運送実態を踏まえて見直す必要があるのではないか

という検討段階です。

物流業界に大きな影響を与える制度だからこそ、決まっていないことを決まったことのように伝えないことが重要です。

6.新しい適正原価は「実際の経営原価」に近づくのか

今回の議論で、実車率と同じくらい重要だと考えているのが原価の算定方法です。

検討資料では、

時間当たり固定費 × 総稼働時間

キロ当たり変動費 × 総走行距離

などを基本に適正原価を算定する考え方が示されています。

これは非常に重要です。

大阪から東京まで何kmだからいくら、という一つの運行だけを見るのではなく、

一定期間に、

どれだけ車両を動かしたのか。

どれだけ時間を使ったのか。

どれだけの距離を走ったのか。

どれだけ原価が発生したのか。

こうした実態から原価を把握しようという方向です。

国土交通省は現在、適正原価設定のためにトラック運送事業者を対象とした原価構造の実態調査も実施しています。

つまり、机上の数字だけで制度を作るのではなく、実際の運送会社様の経営データを把握したうえで制度設計を進めようとしている段階だと考えられます。

7.国も「帰り荷」を重要な論点として考えている

今回の検討で私たちが特に注目しているのが、

「帰り荷」

です。

適正原価を考える際、帰り荷をどう扱うのかという問題は避けて通れません。

例えば、

大阪 → 東京 荷物あり
東京 → 大阪 空車

と、

大阪 → 東京 荷物あり
東京 → 大阪 帰り荷あり

では、総走行距離は同じ1,000kmでも、経営上の結果は大きく違います。

前者は1,000km走って1件の売上です。

後者は同じ1,000kmを走りながら、往路と復路の両方で売上を生み出します。

ここに物流効率化の大きな可能性があります。

8.適正原価と帰り荷は分けて考える必要がある

ただし、一つ注意しなければなりません。

「帰り荷だから安くてもいい」

という考え方です。

これは適正原価制度が目指している方向とは違うと考えます。

帰り荷であっても、

ドライバーは働いています。

燃料も使用します。

タイヤも減ります。

車両も消耗します。

高速道路を使用すれば料金も発生します。

したがって、

帰り荷を確保する目的は、

安い仕事を取ることではありません。

必要な原価と適正な利益を確保したうえで、

本来空車だった走行を実車に変える。

ここに帰り荷本来の価値があります。

9.荷主様は「帰り便」、運送会社様は「帰り荷」

同じ車両でも、立場によって意味が変わります。

運送会社様から見れば、

「帰り荷を探す」

ということになります。

一方、荷主様から見れば、

「帰り便を活用する」

ということになります。

そして帰り便・帰り荷は、長距離輸送だけの話ではありません。

近隣県への輸送でも、

車両の位置、

時間、

方面、

車種、

荷物の条件などが合えば活用できる可能性があります。

そのために重要なのが、

早い情報共有

です。

運送会社様は地方行きが決まった段階から帰り荷を探す。

荷主様も今後必要になる輸送情報を、可能な範囲で早く共有する。

双方の情報が早く出会えば、空車走行を減らせる可能性は高まります。

10.物流効率化した会社が損をする制度にしてはいけない

今後の適正原価制度で非常に重要になるのが、

物流効率化と原価の関係

です。

例えば、運送会社様が努力して、

空車走行を減らした。

配車を効率化した。

荷待ち時間を減らした。

車両の稼働率を高めた。

その結果、原価が下がったとします。

そこで単純に、

「原価が下がったのだから、その分だけ運賃も下げましょう」

となってしまえば、物流効率化に取り組んだ会社ほど利益を得られなくなる可能性があります。

それでは、誰も積極的に物流効率化へ投資しなくなってしまいます。

物流効率化によって生まれた価値を、

荷主様、

運送会社様、

そして社会、

それぞれに還元できる制度設計が必要ではないでしょうか。

11.適正原価=運賃ではない ― 利益をどう考えるか

ここも非常に重要です。

適正原価=最終的に荷主様が支払う運賃

ではありません。

会社は原価だけを回収していても存続できません。

新しいトラックを購入する。

ドライバーの待遇を改善する。

安全装置を導入する。

人材を育てる。

デジタル化へ投資する。

災害などに備える。

こうしたことを続けるためには利益が必要です。

そのため、適正原価制度を考える際には、

適正原価+適正な利潤

という考え方が非常に重要になります。

物流を持続可能にするには、

「赤字にならなければいい」

ではなく、

運送会社様が将来へ投資できる利益を確保できること

が必要だと考えます。

12.今後の第2回検討会で注目したいポイント

2026年8月18日時点では、第2回「適正原価の設定に向けた有識者検討会」の公式資料はまだ公表されていません。

だからこそ、今後の第2回以降で何が議論されるのかを継続して確認する必要があります。

特に注目したいのは次の点です。

① 実車率50%を具体的にどう見直すのか

50%という一律設定を変更するのか。

実態調査をもとに新しい数値を設定するのか。

あるいは別の計算方法へ移行するのか。

これは運賃水準に直接関係する重要な問題です。

② 帰り荷をどのように扱うのか

帰り荷がある場合とない場合を適正原価上どのように評価するのか。

地域による帰り荷確保の難しさをどう考えるのか。

注目する必要があります。

③ 総走行距離・総稼働時間をどのように計算するのか

実際の会社の数字を使用するのか。

国が一定の標準値を設定するのか。

会社規模や地域差をどこまで反映するのか。

制度の実務に大きく影響します。

④ 物流効率化の成果をどう評価するのか

実車率を高めた会社。

積載率を改善した会社。

荷待ち時間を減らした会社。

こうした努力が適正に評価される仕組みになるのか。

非常に重要です。

⑤ 適正な利潤をどう考えるのか

適正原価を守るだけでは、物流会社の将来への投資はできません。

原価にどの程度の利益を加えて収受することが適切なのか。

ここも今後の重要な論点になると考えています。

13.おわりに ― 運賃を守ることと空車を減らすことを両立する

適正原価制度について考えていくと、一つの方向が見えてきます。

それは、

「適正な運賃を守ること」と「物流を効率化すること」は対立するものではない

ということです。

運送会社様が必要な原価と利益を確保する。

同時に、

空車走行を減らす。

実車率を高める。

荷待ち時間を減らす。

車両1台当たりの生産性を高める。

荷主様は「帰り便」を活用する。

運送会社様は「帰り荷」を確保する。

そして、その情報をできるだけ早く共有する。

これらを組み合わせることで、物流全体の効率を高めながら、運送会社様の経営を持続可能なものにしていくことができるのではないでしょうか。

適正原価制度は、単に「最低運賃はいくらなのか」を決める制度として見るべきではないと私たちは考えています。

日本の物流に、本当はいくらの原価がかかっているのか。

そして、

その原価を守りながら、どうすれば無駄な走行を減らせるのか。

これを荷主様と運送会社様が一緒に考えるきっかけになる制度ではないでしょうか。

制度が物流を守る。

企業努力が物流を効率化する。

デジタル技術が荷物と車両をつなぐ。

その三つがうまく組み合わさったとき、日本の物流は次の段階へ進めるのではないかと考えています。

丸共協同株式会社では、第2回以降の「適正原価の設定に向けた有識者検討会」についても引き続き確認し、新しい制度内容が公表されましたら、荷主様・運送会社様それぞれの立場から分かりやすくお伝えしてまいります。

※本コラムは2026年8月18日時点で国土交通省が公表している「適正原価の設定に向けた有識者検討会」等の公式情報をもとに作成しています。適正原価の具体的な算定方法、実車率、帰り荷等の取扱いについては現在検討中であり、今後変更される可能性があります。

 

キーワード

カレンダー

2026年9月
« 8月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  
バナー:コーポレートサイトはこちら