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丸亀製麺の社長AIとは?丸共協同株式会社が考える物流DXと不易流行

2026.09.16
社長AIが伝える判断軸イメージ

丸亀製麺の「社長AI」とは

丸共協同株式会社が考える、経営理念の継承と物流DXの不易流行

冒頭要約

丸亀製麺などを展開するトリドールホールディングスは、創業者である粟田貴也社長の経営哲学や判断基準を反映した「AI粟田さん」を社内に導入しました。

注目すべきなのは、AIが社長の代わりに結論を出すのではなく、社員が自ら考えるための「壁打ち相手」として設計されている点です。

丸共協同株式会社は、この取り組みに、物流DXを進めるうえで大切な「不易流行(ふえきりゅうこう)」の姿を感じます。

安全、信用、責任、人と人とのつながりは守り続ける。一方で、情報の検索・整理・共有にはAIやデジタル技術を取り入れる。変えてはならない理念と、時代に合わせて変える方法を見極めることが重要です。

※本稿は、トリドールホールディングスとDeNAの共同発表、およびTBS NEWS DIGの報道をもとに、丸共協同株式会社が物流現場の視点から独自に考察したものです。

目次

1.丸亀製麺に登場した「社長AI」とは
2.どのように社長の考えを反映したのか
3.社長本人とAIに同じ質問をした結果
4.「完成度が高い」と言い切れるのか
5.企業がAIに残すべきもの
6.丸共協同株式会社の経営理念とAI
7.物流現場で考えられるAIの役割
8.AI活用で守りたい5つの原則
9.AIは人を減らすためではなく、人の可能性を広げるために
10.よくある質問
11.まとめ


1.丸亀製麺に登場した「社長AI」とは

トリドールホールディングスとDeNAの子会社であるDeNA AI Linkは、2026年9月1日、粟田貴也社長の判断基準や経営哲学を反映した「AI粟田さん」の導入を発表しました。

「AI粟田さん」には、DeNA AI Linkが提供する「リーダーズAI」が使われています。

リーダーズAIは、経営者やベテラン社員が持つ、言葉にすることが難しい判断基準や経験をAIに反映し、組織の中で共有するためのサービスです。

現時点では、トリドールホールディングス内の商品開発や店舗建設などに携わる、マネージャー以上の約90人を対象に展開されています。

普段の業務で使用しているMicrosoft Teamsに組み込まれており、社員が仕事の中で自然に相談できる仕組みです。今後は、幅広い職種への展開も検討されています。

したがって、現段階で全従業員やすべての店舗に導入されているわけではありません。まずは限られた対象者が、商品開発や店舗開発、意思決定の壁打ちに活用する段階です。


2.どのように社長の考えを反映したのか

「AI粟田さん」には、次のような情報や知見が反映されています。

  • 粟田社長の過去のメディアでの発言
  • 講演資料
  • 社内向けの経営方針資料
  • 創業期の経験
  • 「食の感動体験」に込めた思い
  • 繁盛する店舗をつくるための判断基準
  • 時代が変わっても守るべき価値
  • 粟田社長本人へのインタビュー
  • 経営やDXに関する社内の知見

単にマニュアルや社内資料を検索するAIではありません。

資料に書かれている結論だけでなく、「なぜ、その考えに至ったのか」「何を守るための判断なのか」という背景まで言語化し、AIに反映している点が特徴です。

なお、DeNA AI Linkは「リーダーズAI」の一般的な導入プロセスについて、導入前の約3か月を使って利用場面の整理やインタビュー設計を行い、初期版の回答を実際に確認しながら調整すると説明しています。

これは「AI粟田さんの構築期間が必ず3か月だった」という意味ではなく、リーダーズAIというサービスの標準的な導入方法についての説明です。


3.社長本人とAIに同じ質問をした結果

TBSの「Nスタ」では、粟田社長本人と「AI粟田さん」に対し、丸亀製麺を訪れるお客さまが何を期待しているのかという同じ質問をしています。

粟田社長は、製麺所の風情や原風景のようなものを、お客さまが感じているのではないかと説明しました。

一方、AIは、丸亀製麺の価値を「生きたうどんの体験」や「讃岐の製麺所に来たような臨場感」と表現しました。

言葉は異なりますが、両者には共通する考え方があります。

  • 商品だけでなく体験そのものを提供する
  • 店内で製麺する臨場感を大切にする
  • チェーン店であっても現場の温度を失わない
  • お客さまの五感を動かすことを目指す

粟田社長も、本人の説明だけでは足りなかった部分までAIが網羅しているという趣旨で評価しています。

この回答例からは、粟田社長が大切にしている商品思想や顧客体験を、AIが一定程度理解し、分かりやすい言葉に変換していることがうかがえます。


4.「完成度が高い」と言い切れるのか

今回紹介された回答を見る限り、「社長が大切にしている価値を分かりやすく伝える」という点では、高い再現性があると考えられます。

ただし、番組で詳しく比較されたのは、一つの質問に対する回答です。

次のような情報は公表されていません。

  • 使用している生成AIの具体的なモデル
  • 社長本人との回答一致率
  • 意見が一致しなかった質問の割合
  • 誤回答を防ぐ具体的な仕組み
  • 回答の根拠となった資料の表示方法
  • 人事、投資、危機対応など難しい判断での検証結果

そのため、「社長と同じように話せること」と「社長と同じ水準で経営判断ができること」は分けて考える必要があります。

関西弁や話し方の再現は、AIに親しみを持ってもらうためには有効です。しかし、話し方が似ていることは、判断の正確性を保証するものではありません。

現時点では、次のように評価するのが適切です。

「社長の理念や商品思想を伝えるAIとしては、高い再現性がうかがえる。一方で、経営判断全般を任せられる完成度が客観的に証明されたわけではない」

「AI粟田さん」は、社長に代わって決定する存在ではなく、社長の考えを参考にしながら、社員自身が考えるための支援役と捉える必要があります。


5.企業がAIに残すべきもの

企業には、マニュアルだけでは伝えきれない知識があります。

例えば、次のような判断です。

  • 迷ったときに何を優先するのか
  • 利益と品質がぶつかったときにどう考えるのか
  • 守るべきものと変えるべきものをどう分けるのか
  • お客さまから難しい要望を受けたときにどう向き合うのか
  • 数字だけでは判断できない場合に何を見るのか
  • どの段階で上司や専門家へ相談するのか

こうした経験や判断基準は、長年仕事をしてきた経営者やベテラン社員の中に蓄積されています。

しかし、本人が退職したり、組織が大きくなったりすると、その知識が次の世代へ十分に伝わらないことがあります。

AIの本当の価値は、経営者の話し方や表面的な言葉を再現することだけではありません。

企業の中にある暗黙知を言葉に変え、組織の共有財産として残すことにあります。


6.丸共協同株式会社の経営理念とAI

丸共協同株式会社は1982年に創業し、2027年に創立45年を迎えます。

長年にわたり、荷主企業と運送会社をつなぐ配車や輸送の現場に携わり、安全と信用を大切にしてきました。

私たちが基本理念として大切にしているのは、利他、敬天愛人、不易流行、三方よし、未来よしです。

利他(りた)

自社の利益だけでなく、相手の立場に立って考えることです。

AIを使って業務を速くするだけでは、利他とはいえません。

荷主企業、運送会社、ドライバー、配車担当者にとって、分かりやすく、安心して利用できる仕組みになっているかまで考える必要があります。

敬天愛人(けいてんあいじん)

道理を大切にし、人を敬い、人を思いやることです。

AIの回答だけで人や企業を評価するのではなく、相手の事情を聞き、現場を確認し、人が責任を持って判断することが欠かせません。

不易流行(ふえきりゅうこう)

時代が変わっても守るべきものと、時代に合わせて変えるべきものを見極めることです。

安全、信用、責任、相手への配慮は、変えてはならない「不易」です。

一方、情報共有、検索、分析、書類作成などは、AIやデジタル技術によって改善できる「流行」です。

三方よし・未来よし

荷主企業、運送会社、事業を運営する企業だけでなく、ドライバー、地域社会、環境、次の世代にとっても良い物流を目指す考え方です。

AIによって一部の企業だけが利益を得るのではなく、物流に関わる人全体の負担軽減につながるかを考える必要があります。


7.物流現場で考えられるAIの役割

物流の仕事には、数字だけでは決められない判断が数多くあります。

トラック手配では、車種、積載量、荷物の形状、集荷時間、納品条件、待機時間、附帯作業、高速道路の使用、必要書類などを確認しなければなりません。

運送会社を探す場合にも、価格だけでなく、次のような条件を確認する必要があります。

  • 安全管理体制
  • 対応可能な地域
  • 車両の種類
  • 貨物保険
  • 過去の輸送実績
  • 連絡体制
  • 荷待ちや附帯作業の条件
  • 運送契約と責任の所在

物流現場において、AIが支援できる業務には次のようなものがあります。

  • トラック手配に必要な情報の確認
  • 見積もり条件の整理
  • 配車依頼内容の不足確認
  • 過去の輸送事例の検索
  • 車種や積載条件の確認支援
  • 必要書類の案内
  • 緊急配送時の確認事項の提示
  • 帰り便・帰り荷を検討する際の条件整理
  • 新人配車担当者への実務支援
  • ベテラン社員の判断基準の共有

一方、AIが提示した運送会社を自動的に選ぶことや、運賃、安全性、事故対応などの重要事項をAIだけで決定することには慎重さが必要です。

最終的な確認と判断、そして取引に対する責任は、人と企業が持たなければなりません。


8.AI活用で守りたい5つの原則

1.回答の根拠を確認できること

AIが何をもとに回答したのか確認できなければ、誤った情報を見抜くことが難しくなります。

重要な判断では、参考資料や過去の事例まで確認できる仕組みが必要です。

2.例外を人へ引き継げること

物流では、荷物、車両、道路、天候、時間、納品条件などが案件ごとに異なります。

通常の条件から外れる案件は、経験を持つ担当者へ確実に引き継がなければなりません。

3.最終判断者を明確にすること

AIが提案した場合でも、誰が確認し、誰が決定し、誰が責任を負うのかを明確にしておく必要があります。

「AIが判断した」という説明だけでは、企業としての責任を果たしたことにはなりません。

4.情報を更新し続けること

運賃、法制度、道路状況、取引条件、運送会社の対応状況は変化します。

古い情報を使い続けるAIは、かえって物流現場を混乱させる可能性があります。

5.人との対話をなくさないこと

AIによる効率化が進んでも、荷主企業や運送会社との信頼関係は、人と人との対話によって築かれます。

AIは対話をなくすためではなく、本当に必要な対話や判断に時間を使えるようにするための道具であるべきです。


9.AIは人を減らすためではなく、人の可能性を広げるために

「社長AI」という言葉から、AIが経営者や社員に代わって判断する未来を想像する人もいるかもしれません。

しかし、今回の事例が示している考え方は異なります。

粟田社長は、AIを壁打ち相手として使い、社員に考え方の幅を広げてほしいとしています。結論を出すのは本人であり、AIは考える時間を支援する存在だという位置づけです。

これは物流DXでも同じです。

AIが配車担当者に代わるのではなく、確認漏れを減らし、過去の事例を提示し、複数の選択肢を整理する。そのうえで、物流現場を知る人が責任を持って判断することが大切です。

技術が進歩するほど、人にしかできない役割が明確になります。

  • 相手の事情を理解すること
  • 責任を引き受けること
  • 信頼関係を築くこと
  • 想定外の事態に対応すること
  • 経営理念に照らして判断すること

AIによる効率化と、人による信頼。

その両方を成立させることが、これからの物流DXに必要です。


10.よくある質問

Q1.「社長AI」は社長と同じ判断ができるのですか?

社長の発言、資料、経験、経営哲学などを反映した回答はできますが、社長本人と完全に同じ判断ができると証明されたものではありません。AIは判断材料を提示する支援役であり、最終的な決定は人が行う必要があります。

Q2.社長AIを導入すれば、経営理念が社員に浸透しますか?

AIを導入するだけでは浸透しません。経営理念が日常業務の中でどのような判断につながるのかを、具体的な事例とともに言語化する必要があります。

Q3.中小企業でも同様のAI活用は可能ですか?

大規模なシステムを導入しなくても、過去の事例、社内ルール、経営者への質問と回答、判断に迷った事例などを整理することから始められます。重要なのは、AIの規模よりも、正確な情報と判断基準を準備することです。

Q4.物流会社が最初に整理すべき情報は何ですか?

トラック手配に必要な確認事項、運送会社の選定基準、見積もり条件、安全確認、緊急時の対応、必要書類、契約関係、責任の所在などが考えられます。通常案件だけでなく、過去に判断が難しかった事例も重要な知識になります。

Q5.AIによって配車担当者の仕事はなくなりますか?

情報検索、条件整理、書類確認などは効率化できますが、荷物や車両の状況を理解し、関係者と調整し、最終的な責任を持つ役割は残ります。AIは配車担当者を置き換えるものではなく、判断を支援する道具として活用することが現実的です。

Q6.物流DXで最も大切なことは何ですか?

新しいシステムを導入すること自体が目的ではありません。安全、信用、責任を守りながら、荷主企業、運送会社、ドライバーの負担を減らし、物流全体を持続可能にすることが本来の目的です。


11.まとめ

丸亀製麺などを展開するトリドールホールディングスの「AI粟田さん」は、社長の姿や話し方を再現すること以上に、経営者が長年培ってきた判断基準を組織の知的資産に変えた点に大きな意味があります。

一方で、AIの回答が社長本人の判断と完全に一致するわけではありません。

AIは選択肢や考え方を提示できますが、最終的な結論を出し、その責任を引き受けることはできません。

丸共協同株式会社は、これからの物流DXにおいても、守るべき理念と変えるべき方法を見極めることが重要だと考えています。

安全、信用、責任、人と人とのつながりは守り続ける。

情報整理、検索、分析、書類作成などは、新しい技術によって改善する。

「不易流行」の考え方を軸に、AIと人がそれぞれの役割を果たすことが、荷主企業、運送会社、ドライバー、地域社会、そして未来にとって必要とされる物流につながります。


参考資料

DeNA・トリドールホールディングス共同発表

世界で約2,100店舗を展開するトリドールHD、創業者の「判断基準」をAI化した「AI粟田さん」を導入
発表日:2026年9月1日
URL:https://dena.com/jp/news/5427/

TBS NEWS DIG

丸亀製麺に「社長AI」登場 「社長の考え」学習その完成度は?同じ質問をしてみると
公開日:2026年9月7日
URL:https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2927567

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