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自動運転は高速道路から街へ レベル解説と自動運転トラックの現在地

2026.09.14
自動運転、高速道路から街中にイメージ

自動運転は、車両だけでは完成しない

― 高速道路から街なかへ、乗用車とトラックが別々の道から近づく未来 ―

※本稿は2026年9月2日時点で公表されている情報を基に作成しています。

※各社・自治体・国が公表した計画、認可、実証内容を「確認できた事実」として記載し、実用化の順序や物流会社への影響は、それらを基にした本稿の分析として分けて整理しています。

自動運転という言葉から、これまでは高速道路をまっすぐ走るトラックや、専用区間を低速で走る小型バスを思い浮かべることが多かったかもしれません。

しかし、2026年夏に相次いで公表された動きをつなぐと、自動運転の開発は明らかに次の段階へ進み始めています。

トヨタ自動車が、AIを使った高度な運転支援技術を2028年から一部の乗用車に導入する方針を示したと、複数のメディアが報じました。日産自動車とHondaは、次世代車の頭脳となるECUや車載ソフトウェアの共通化に向けた共同開発に踏み出しました。自動車部品大手のヴァレオは、商用車向けのLiDAR、カメラ、演算装置、センサー洗浄、電動駆動などを発表しています。

一方、豊田市では市街地・山村・郊外という異なる交通環境で、レベル4の実現に向けた自動走行実証が予定されています。物流分野では、いすゞ自動車が実際の補給部品を積んだ大型トラックで公道実証を進め、国土交通省も車両だけでなく、物流拠点、運行システム、遠隔監視、自動荷役との連携まで支援対象にしています。

これらは別々のニュースに見えますが、すべてつながっています。

自動運転は、乗用車で完成してからトラックへ移されるのではありません。乗用車は一般道でAIを育て、トラックは高速道路と物流拠点で運用を育てる。それぞれの技術が、将来の街なかの自動配送で合流しようとしているのです。

この記事で分かること

  • 自動運転レベル0から5までの違い

  • 日本で法制度上認められている自動運転の段階

  • トヨタの2028年計画が「完全自動運転」ではない理由

  • 自動運転が高速道路から一般道へ広がっている事実

  • 日産・Honda、ヴァレオ、豊田市の動きがどうつながるのか

  • 乗用車の技術がトラックへどこまで応用できるのか

  • 自動運転トラックが実用化されると考えられる順序

  • 物流会社が今から準備しておくべきこと

目次

  1. 最初に知っておきたい自動運転レベル

  2. 日本で法制度上認められているのはどの段階か

  3. トヨタが2028年から導入するレベル2++とは

  4. 自動運転は高速道路から一般道へ進み始めた

  5. 日産とHondaが共通化する「車両の頭脳」

  6. ヴァレオが示した商用車を支える現実的な技術

  7. 豊田市が検証するのは車両だけではなく運用である

  8. トラックの自動運転は乗用車の後に始まるのか

  9. 自動運転トラックはどの順序で広がるのか

  10. 技術が確実に進んでいると判断できる理由

  11. 物流会社が今から準備しておくべきこと

  12. まとめ

1.最初に知っておきたい自動運転レベル

自動運転を考えるうえで最も大切なのは、「車がどこまで操作するか」だけではありません。

事故を避けるために周囲を監視する主体が人なのか、システムなのか。システムが運転を続けられなくなった場合に、誰が安全を確保するのか。この違いによって、自動運転レベルは0から5までに分けられます。

レベル    一般的な位置づけ      主な内容 周囲を監視する主体
レベル0 運転自動化なし 運転者が操作する。警報や一時的な安全支援を含む場合がある 運転者
レベル1 運転支援 加速・減速、またはハンドル操作のどちらか一方を支援 運転者
レベル2 部分運転自動化 加速・減速とハンドル操作を同時に支援 運転者
レベル3 条件付自動運転 限定条件内ではシステムが運転するが、要請時には運転者が引き継ぐ 作動中はシステム。引継ぎ後は運転者
レベル4 特定条件下での完全自動運転 決められた場所・速度・天候などの条件内では運転者を必要とせず、継続困難時もシステムが安全に停止する システム
レベル5 完全自動運転 場所や道路、天候などを原則限定せず、システムがすべてを担う システム

ここで注意したいのが「ハンズオフ」という言葉です。

ハンドルから手を離せる機能があっても、運転者が前方や周囲を監視し、直ちに操作できる状態を保つ必要があるなら、基本的にはレベル2です。手を離せることと、運転責任までシステムへ移ることは同じではありません。

また、「レベル2+」「レベル2++」は、SAEが定める正式な自動運転レベルではありません。高度化したレベル2を示す業界上の表現であり、運転責任は引き続き運転者にあります。

2.日本で法制度上認められているのはどの段階か

日本では、自動運転は研究室や実験コースの中だけの技術ではありません。すでにレベル3とレベル4について、法制度、車両の安全基準、認可・許可制度が整備され、実際の市販や運行が行われています。

レベル3は市販車として認められている

国土交通省は2020年11月、Hondaの「レジェンド」に搭載された自動運行装置について、世界で初めてレベル3の型式指定を行いました。2021年3月には、Honda SENSING Eliteを搭載したレジェンドが発売され、高速道路の渋滞時など一定条件下で、システムが周囲を監視して運転操作を行う「トラフィックジャムパイロット」が市販化されました。

ただし、レベル3ではシステムから運転引継ぎの要請があった場合、運転者が対応しなければなりません。

レベル4は限定条件下で実施できる

2023年4月、改正道路交通法により、運転者がいない状態でのレベル4に相当する「特定自動運行」の許可制度が始まりました

レベル4を実施するには、単に車両メーカーが「自動運転できます」と判断するだけでは足りません。車両が道路運送車両法上の安全基準に適合することに加え、運行する場所を管轄する都道府県公安委員会から、経路、運行条件、遠隔監視、事故時の対応方法などを含む計画について許可を受ける必要があります。

同年、福井県永平寺町の約2キロメートルの区間では、国内で初めてレベル4の自動運転車として認可された車両を使う無人移動サービスが実現しました。さらに2025年2月には、茨城県日立市の「ひたちBRT」で、国内初となる中型バスによるレベル4の運行サービスが始まっています

つまり、日本ではレベル4に相当する運行を実施できる法制度が整備され、車両の認可と運行計画の許可を得た限定区間で、運転者を必要としない運行が認められています。ただし、それは「日本全国のすべての道路で自由に無人運転できる」という意味ではありません。認められているのは、車両、経路、速度、天候、運行体制などを限定し、安全性を確認した範囲です。

2026年9月時点で、レベル5が一般向けに市販・事業運行される段階には至っていません。

3.トヨタが2028年から導入するレベル2++とは

トヨタ自動車は2026年8月27日の報道向け説明会で、AIを活用してレベル2を高度化した「レベル2++」を、2028年から一部の乗用車に導入し、2030年以降に対象車種を広げる方針を明らかにしたと、ロイターCar Watchが報じています。

この部分は、トヨタの公式ニュースリリースではなく、同社の説明会を取材した複数の報道を根拠としています。

この技術は、AIが周囲の状況を認識し、走行方法を判断するE2E、エンド・ツー・エンド型の考え方を取り入れます。車線変更、追い越し、分岐・合流、交差点通過、駐車など、高速道路だけでなく一般道を含む幅広い場面で運転を支援する構想です。

ただし、AIだけにすべてを任せるわけではありません。あらかじめ定めた交通ルールや安全上の制約から外れそうになった場合に、AIの動きを抑える「ガードレール」と呼ばれる仕組みを組み合わせる方針も示されています。

ここで、二つの点を区別する必要があります。

第一に、2028年に導入されるのは完全自動運転ではありません。レベル2++の運転主体と責任は運転者に残り、継続的な監視と即時の介入が必要です。

第二に、「カローラやヤリス級に搭載される」とする自動車メディアの記事がありますが、具体的な車種は公表されていません。同記事が「普及車から導入する」という説明を基に予想したものであり、カローラやヤリスへの搭載が正式決定したわけではありません。

一方で、トヨタが高級車だけでなく普及価格帯まで高度運転支援を広げようとしていることは重要です。走行台数が増えれば、一般道で起きる多様な場面のデータを集め、安全性や認識精度を継続的に改善できる可能性があるからです。

トヨタは2025年4月、Waymoとの間で、自動運転車両の新しいプラットフォーム開発と、将来の市販車における自動運転技術の向上を検討する基本合意も公表しています。内製AI、ルールベースの安全機構、外部との協業を並行させる構えです。

4.自動運転は高速道路から一般道へ進み始めた

自動運転は、走行環境が比較的単純な高速道路から開発が進められてきました。

高速道路には、原則として信号や平面交差点がなく、歩行者や自転車も入りません。進行方向がそろい、車線も比較的明確であるため、自動運転システムが判断しなければならない場面を限定しやすいからです。

一般道では状況が大きく変わります。

  • 信号と交差点

  • 歩行者と自転車

  • 対向車

  • 路上駐車

  • 工事区間

  • 飛び出し

  • 狭い道路

  • 店舗や住宅への出入り

  • 緊急車両

  • 雨、雪、泥、逆光

こうした複雑な環境に対応するには、従来の決められたルールだけでは限界があります。大量の走行データから、人間の運転に近い柔軟な判断を学ぶAIの重要性が高まっています。

トヨタのレベル2++に加え、日産自動車も2027年度に導入予定の次世代ProPILOTについて、より複雑な一般道を含む走行に対応する方針を公表しています。横浜市では、セレナをベースにした実験車両を使い、2027年度に遠隔監視を備えたレベル4の自動運転モビリティサービスを目指しています。

高速道路中心だった自動運転の開発が、一般道と街なかへ広がっていることは事実です。

ただし、「一般道を走れるレベル2の運転支援」と「運転者なしで走れるレベル4」を同じものとして扱ってはいけません。現在は、この二つが異なる用途で並行して進んでいる段階です。

5.日産とHondaが共通化する「車両の頭脳」

2026年8月31日、日産自動車とHondaは、次世代SDVの中核を構成するECUと車載ソフトウェアの共通化に向けた共同開発契約を締結したと発表しました

対象となるのは、SoCを使って車両全体の演算を担う高性能メインECU、車両の各エリアを統括するゾーンECU、車載OS、ミドルウェア、車両制御ソフトウェアの主要部分です。両社は、2029年度以降の次世代SDVへの適用を目指しています。

これは、日産車とHonda車が同じ商品になるという話ではありません。

車両のデザイン、乗り味、商品性、ブランド固有の機能はそれぞれ残しながら、その下で動くコンピューターとソフトウェアの基盤を共通化しようとするものです。

自動運転では、開発後もソフトウェアの更新、サイバーセキュリティー対策、不具合対応、安全検証を続けなければなりません。基盤を共通化できれば、技術者と開発知見を集約し、開発速度、投資効率、量産効果を高められる可能性があります。

この共通基盤は乗用車だけの話にとどまりません。将来、同じ考え方や一部の技術が、商用車、移動サービス、物流システムへ広がる可能性があります。

6.ヴァレオが示した商用車を支える現実的な技術

フランスの自動車部品大手ヴァレオは、ドイツで開催されるIAA TRANSPORTATION 2026において、トラックや小型商用車向けの次世代技術を展示すると発表しました。一般来場日は2026年9月15日から20日までで、9月14日は報道関係者向けのプレスデーです。

発表内容には、次の技術が含まれています。

  • LiDAR、カメラなどのセンサー

  • LiDARとカメラの専用洗浄システム

  • 自動運転レベル4までを支える演算装置と関連技術

  • AIによる認識・意思決定

  • クラウド連携と継続的な機能更新

  • 電動トラック・バス向けコンプレッサーとヒートポンプ

  • 電動駆動システム

  • ラストマイル配送向けの電動カーゴ技術

  • 48Vモーターと7速自動変速機を一体化したGO7 Gen4

GO7 Gen4は、最大250kgの商用貨物を動かすことを想定した電動駆動技術です。ここでの250kgは走行距離ではなく貨物重量です。

ヴァレオの発表で特に現実的なのが、センサー洗浄です。

どれほど高性能なAIを搭載しても、雨、雪、泥、虫、粉じんなどでカメラやLiDARが汚れれば、周囲を正しく認識できません。自動運転の実用化には、AIや半導体の性能だけでなく、センサーを正常な状態に保つ技術が欠かせません。

また、長距離輸送には大型トラックの自動運転や運転支援、都市内配送には電動カーゴバイクや小型車両というように、輸送区間ごとに異なる技術を使い分けようとしている点も重要です。

ただし、これは展示予告です。完成したレベル4トラックの販売実績や、具体的なTCO削減率が公表されたわけではありません。「TCOを削減する」と断定せず、「TCOの最適化を目指す技術」として捉える必要があります。

7.豊田市が検証するのは車両だけではなく運用である

豊田市公式サイトは2026年8月21日付で、市街地・山村・郊外という異なる交通環境において、乗客を乗せた自動走行実証を行うと発表しました

市街地区間と山村区間ではトヨタのミニバン「シエナ」、郊外区間では次世代モビリティ「e-Palette」を使用します。

この実証は、すでにレベル4の許可を得て無人運行するものではありません。2027年度中のレベル4許認可取得を見据え、技術的安全性と運用体制を確認するための取り組みです。

注目すべき検証項目は、1人の監視者が複数台の車両を遠隔監視する「1対多」の運用モデルです。

自動運転車が走れても、1台ごとに1人の監視者が必要であれば、人手不足解消の効果は限定されます。異常時の連絡、乗客対応、故障時の駆けつけ、運休判断まで含め、1人が複数台を安全に支えられるかが、事業として成立するための重要な条件になります。

これは将来の自動運転トラックにも共通する課題です。

8.トラックの自動運転は乗用車の後に始まるのか

乗用車で自動運転を完成させ、その技術を後からトラックへ移す。そのような順序を想像しやすいかもしれません。

しかし、実際には乗用車、移動サービス、トラックで並行して開発が進んでいます。

乗用車からトラックへ共有できる技術は少なくありません。

  • カメラ、LiDAR、レーダー

  • AIによる認識・予測・判断

  • 高性能ECU

  • 車載OSとミドルウェア

  • 高精度地図と位置情報

  • クラウド通信

  • ソフトウェア更新

  • センサー洗浄

  • 遠隔監視

  • サイバーセキュリティー

普及型の乗用車が一般道を走れば、交差点、歩行者、自転車、路上駐車など、多様な場面のデータが集まります。そのデータとAIは、将来の都市内配送車にも役立つと考えられます。

一方、大型トラックには独自の課題があります。

  • 車両重量が大きく、停止距離が長い

  • 積載重量と積み方によって車両挙動が変わる

  • トレーラーの連結と折れ曲がり

  • 内輪差と死角

  • 横風や下り坂への対応

  • タイヤ、ブレーキ、操舵、電源の冗長性

  • 故障時に安全に停止できる場所の確保

  • 高速道路と一般道の有人・無人切り替え

  • バース予約、自動着車、自動荷役との連携

そのため、乗用車用AIを大型トラックへ載せるだけでは完成しません。

いすゞ自動車は、大型トラック「ギガ」に実際の補給部品を積み、栃木県から愛知県まで走る自社物流ルートで実証を進めています。自動運転走行の検証区間は、新東名高速道路の駿河湾沼津サービスエリアから浜松サービスエリアまでです。

実証車両にはLiDAR、カメラ、ミリ波レーダー、GNSS、IMUが搭載され、実際の荷物、日中・夜間、遠隔監視、異常時対応などを検証しています。現段階ではセーフティードライバーが乗車しており、いすゞは2027年度のレベル4トラック事業開始を目標に掲げています。

これは、トラックの自動運転が乗用車の完成を待たず、物流側で独自に進んでいることを示しています。

9.自動運転トラックはどの順序で広がるのか

大型トラックは乗用車より車両制御が難しい一方、運行する経路と目的を限定しやすいという特徴があります。

決められた物流拠点間を、決められた高速道路で繰り返し走る幹線輸送は、自動運転の使用条件を定めやすく、集中的な車両整備と遠隔監視も行いやすい領域です。

そのため、一般消費者が所有する乗用車のレベル4より先に、限定された高速道路でレベル4トラックが事業化される可能性があります。

現実的には、次の順序で広がると考えられます。

  1. 工場、港湾、物流施設、建設現場などの閉鎖・限定区域

  2. 高速道路の決められた区間を走る拠点間輸送

  3. 高速道路と物流拠点をつなぐ短い一般道

  4. 交通量の少ない郊外や地域内の定期配送

  5. 歩行者、自転車、路上駐車が多い都市内配送

  6. 道路や天候を限定しない完全自動運転

国土交通省が2026年度に始めた「自動運転トラック実装支援事業」も、高速道路での貨物運送を中心にしています

支援対象は、自動運転車両の導入だけではありません。自動運転対応の駐車スペースやトラックバース、有人・無人運転の切り替え拠点、1対多運行、混在交通、自動荷役機器との連携、物流システムの構築、初年度の運行まで含まれています。

国も、自動運転を「車両単体の技術」ではなく、「物流サービス全体の仕組み」として実装する段階に移し始めています。

10.技術が確実に進んでいると判断できる理由

自動運転には、過去にも実用化時期が何度も示され、その後、計画が遅れた例があります。そのため、「本当に進んでいるのか」と慎重に見ることは必要です。

それでも現在、技術が確実に前進していると判断できる理由があります。

第一に、実験だけでなく認可と運行が始まっている

2021年にはレベル3の市販車が登場し、2023年には永平寺町でレベル4、2025年にはひたちBRTで中型バスのレベル4運行が始まりました。

第二に、高速道路から一般道へ対象が広がっている

トヨタと日産は、AIを使って交差点、合流、車線変更、駐車など、一般道の複雑な場面へ運転支援を広げようとしています。

第三に、車両の頭脳が量産を前提に再設計されている

日産とHondaによるECU、車載OS、主要ソフトウェアの共通化は、研究車両を1台動かすためではなく、2029年度以降の量産車への適用を目指す取り組みです。

第四に、商用車向けの部品が具体化している

ヴァレオは、LiDARやAIだけでなく、センサー洗浄、電動コンプレッサー、ヒートポンプ、電動駆動、ラストマイル技術まで提示しています。

第五に、実際の荷物を運ぶ検証へ進んでいる

いすゞの実証は、空の試験車両を走らせるものではありません。実際の補給部品を積み、既存の物流ルート、荷役、遠隔監視を含めて検証しています。

第六に、国の支援対象が運行全体へ広がっている

国土交通省は、車両購入だけでなく、物流拠点、運行システム、自動荷役、初年度運行まで支援しています。

これらを合わせると、自動運転は「走れるかどうかを試す段階」から、「どの条件なら安全に事業として運用できるかを確かめる段階」へ移っていると判断できます。

ただし、これは全国の一般道で無人トラックがすぐに走り始めるという意味ではありません。技術は確実に進んでいますが、進み方は限定区域と限定条件を一つずつ広げる形になると考えられます。

11.物流会社が今から準備しておくべきこと

物流会社が今すぐ自動運転トラックを購入する必要はありません。

今から準備すべきなのは、自動運転車が接続できる「情報と運用の土台」です。

運行データを残す

走行ルート、所要時間、渋滞、休憩、燃料、荷待ち、荷役時間、事故やヒヤリ・ハット、天候による遅延などを記録し、分析できる状態にする必要があります。

例外作業を把握する

物流現場では、受付方法、待機場所、積み方、伝票、鍵、検品、現場独自の合図など、運転以外の例外作業が数多くあります。自動運転車が到着しても、これらが人と紙に依存したままでは、物流全体は自動化できません。

拠点間輸送と地域配送を分けて考える

最初からすべてを無人化するのではなく、高速道路の幹線区間は自動運転、一般道や荷役は人が担当するなど、役割を分けた運行設計が現実的です。

遠隔監視と保守の人材を考える

将来、ドライバーの仕事がすべてなくなるとは限りません。運転から、遠隔監視、運行管理、異常対応、車両保守、荷役調整へ役割が移る可能性があります。

荷主、運送会社、物流施設の情報をつなぐ

自動運転の本当の効果は、車両だけでは生まれません。

配送依頼、貨物情報、運行計画、道路情報、バース予約、入退場、荷役、納品確認までがデータでつながって初めて、無駄な待機や空車回送を減らすことができます。

自動運転時代に最も重要になるのは、「誰が運転するか」だけではなく、「必要な情報が、必要な相手へ、必要な時に届くか」です。

12.まとめ

自動運転は、高速道路の中だけで進んでいる技術ではなくなりました。

トヨタと日産は、AIを使った運転支援を一般道へ広げようとしています。日産とHondaは、次世代車のECUとソフトウェアを共通化し、量産を見据えた開発基盤を整えようとしています。ヴァレオは、商用車の自動運転と電動化を支える部品を具体化しています。豊田市は、異なる道路環境と遠隔監視を含む運用を検証し、いすゞと国土交通省は、実際の物流ルートでレベル4トラックを事業として成立させる準備を進めています。

日本では、すでにレベル3の市販車が型式指定され、レベル4に相当する運行についても、車両の認可と運行計画の許可を得た限定条件下で実施されています。一方、トヨタが2028年から導入するレベル2++は、運転者責任が残る高度運転支援です。

進歩を正しく見るためには、期待だけでなく、レベル、運転責任、使用条件、認可、実証、商用運行を分けて考えなければなりません。

そして、乗用車で自動運転が完成してからトラックへ移るわけでもありません。

乗用車は一般道でAIを育てる。

トラックは高速道路と物流拠点で運用を育てる。

自治体は地域の道路で社会との接点を確かめる。

部品メーカーは、センサー、半導体、洗浄、電動化によって車両を支える。

国は、安全基準、許可制度、道路、物流拠点、運行システムを整える。

それぞれの取り組みがつながった先に、街なかを走る自動配送車の未来があります。

自動運転は、車両だけでは完成しません。

物流の未来を決めるのは、車、人、道路、拠点、荷物、そして情報を、どのようにつなぐかです。

FAQ

Q1.トヨタは2028年に完全自動運転車を発売するのですか

いいえ。報道されているのは、運転者による継続的な監視と即時の介入が必要なレベル2++です。高度な運転支援ではありますが、運転責任は運転者に残ります。

Q2.カローラやヤリスへの搭載は決定していますか

具体的な車種は未公表です。「カローラ/ヤリス級」という表現は、普及車から導入する方針を基にした自動車メディア側の予想です。

Q3.日本ではレベル4は法律上認められていますか

法制度上、実施できます。2023年4月に特定自動運行の許可制度が施行され、永平寺町やひたちBRTなどで限定条件下のレベル4運行が実現しています。ただし、車両の認可と運行計画の許可を個別に得る必要があります。

Q4.レベル4なら日本中どこでも無人で走れますか

走れません。現在のレベル4は、決められた経路、速度、天候、時間、遠隔監視体制など、定められた使用条件の範囲内で認められます。

Q5.乗用車の自動運転技術は、そのままトラックに使えますか

AI、センサー、ECU、車載OS、クラウド、遠隔監視などは共有できます。一方、制動距離、積載変動、トレーラー、内輪差、冗長設計、荷役との連携など、トラック独自の開発と検証が必要です。

Q6.自動運転でトラックドライバーは不要になりますか

短期間ですべてのドライバーが不要になる可能性は低いと考えられます。当面は高速道路区間を自動運転、一般道や荷役を人が担当する形が現実的です。将来は運転から遠隔監視、運行管理、保守、異常対応へ仕事の一部が移る可能性があります。

Q7.技術が進んでいるのに、なぜすぐ普及しないのですか

技術だけでなく、安全基準、事故時の責任、保険、道路インフラ、通信、遠隔監視、保守、荷役、採算性、社会の理解を同時に整える必要があるからです。

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