物流の未来を考える 1パレットから鉄道輸送へ JR貨物とSSTの共同輸送から考える物流効率化の未来
物流は「1台」から「1パレット」へ
JR貨物とSSTの新たな混載輸送から考える、これからの共同輸送
|
この記事の要点 |
はじめに - 「荷物がたまるまで待つ」だけではない
物流の効率化と聞くと、トラックを大型化することや、1台にできるだけ多くの荷物を積むことを思い浮かべるかもしれません。もちろん、まとまった荷物を高い積載率で運ぶことは、これからも重要です。
しかし、小口・多頻度化が進むなかでは、荷物が1台分になるまで待てない場面も増えています。そこで必要になるのが、「少ない荷物でも、ほかの荷物と組み合わせて効率よく運ぶ」という考え方です。
その考え方を鉄道輸送にも広げる取り組みとして、Sustainable Shared Transport(以下、SST)とJR貨物関東支社が連携する混載輸送サービス「パレットレール便」が始まっています。2026年8月27日にLNEWSがPR記事として紹介しましたが、サービス自体は同年5月から発表・提供されてきたものです。
鉄道輸送を「コンテナ単位」から「パレット単位」へ
鉄道貨物輸送には、ある程度まとまった貨物量を確保し、コンテナ単位で利用するイメージがあります。今回のサービスで注目したいのは、1パレットから利用できる点です。
SSTの公表内容によると、JR貨物の駅で預かったパレット貨物を鉄道コンテナへ混載し、目的地側の貨物駅まで鉄道で輸送します。到着後はトラックへ積み替え、指定された納品場所まで届けます。貨物駅への持ち込みが基本で、集荷は別途オプションです。
荷主A社、B社、C社の貨物をそれぞれ別々に運ぶのではなく、行き先や時期などの条件が合う貨物をまとめて運ぶ。物流の効率化を一社だけで考えるのではなく、複数の荷主や物流事業者で輸送力を共有する仕組みです。
なぜ「1パレット」が重要なのか
商品の多品種化や小口化、納品頻度の増加によって、一度に大量の商品をまとめて運ぶことは難しくなっています。貨物が小口化しても、トラックは走り、ドライバーも燃料も必要です。ところが、荷物の量が少なければ積載率は下がります。中長距離輸送では、行きの荷物はあっても帰りの荷物を十分に確保できず、片荷になることもあります。
物流事業者と荷主が一対一で輸送を完結させる形だけでは、多頻度化が進むほど輸送力に空きが生じやすくなります。だからこそ、1パレットのような小さな単位から、条件の合う貨物を組み合わせられる仕組みに意味があります。
「荷物を増やす」のではなく「情報をつなぐ」
小口貨物を効率よく運ぶために、単純にトラックを増やしても、ドライバー不足や物流コストの問題は解決しません。必要なのは、「どこから、どこへ、いつ、どれだけの荷物が動くのか」という情報をつなぐことです。
例えば、東京から新潟へ3パレット、別の会社から同じ方面へ4パレット、さらに別の会社から3パレットの輸送予定があるとします。それぞれの情報が別々に存在していれば、いずれも小口貨物のままです。しかし、早い段階で情報がつながれば、「一緒に運べるのではないか」という可能性が生まれます。
共同輸送とは、単に荷物を一緒に積むことではありません。その前に、輸送情報を共有し、条件を照合できることが重要なのです。
空いている輸送力を「使える輸送力」に変える
今回の取り組みでは、回送する鉄道コンテナの空きスペースを活用する考え方も示されています。これはトラック輸送にも共通します。すでに走るトラック、すでに動く鉄道、すでに存在する物流拠点をすべて新しく増やすのではなく、今ある輸送力をもっと有効に使えないかと考えることです。
トラックの空きスペースや帰り荷を探している情報、鉄道コンテナの空き、同じ方面へ向かう貨物。これらが別々に存在していれば、物流の無駄は残ります。情報が早くつながることで、使われていなかった輸送力が「使える輸送力」へ変わる可能性があります。
環境負荷を減らすためにも、まず考えたいのは無駄を減らすことです。新しい設備の導入だけが環境対策ではありません。空車を減らし、積載率を高め、今ある輸送力を有効に使うことも大切な取り組みです。
「鉄道かトラックか」ではなく「どうつなぐか」
今回のニュースを、トラック輸送を鉄道に置き換える取り組みとだけ捉えると、本当の意味を見落とすかもしれません。鉄道には、長距離を大量に輸送しやすい強みがあります。一方、トラックには、工場や倉庫から貨物駅へ運び、到着後は最終納品先まで届けられる強みがあります。
両者は競争するだけの存在ではありません。鉄道が得意な区間は鉄道、トラックが得意な区間はトラックと役割を分け、それぞれの強みをつなぐことができます。
モーダルコンビネーションWGでは、平常時から鉄道とトラックを組み合わせ、災害などで鉄道輸送が難しくなった場合にも一定の輸送力を確保するハイブリッド連携の検討も進められています。重要なのは、輸送手段を二者択一にせず、荷物の条件やリスクに応じて組み合わせることです。
CO₂削減は、無駄を減らした先にある
JR貨物は、鉄道貨物輸送の単位当たりCO₂排出量を営業用トラックの約11分の1と説明しています。長距離区間を鉄道へ切り替えるモーダルシフトには、環境負荷の低減が期待できます。
ただし、「鉄道に変えればすべて解決する」ということではありません。貨物駅までの集荷、積み替え、到着後の配送など、トラックが担う区間も欠かせません。また、輸送距離、荷姿、納期、温度管理、積み替え回数などによって適した輸送方法は変わります。
空車を減らす。積載率を高める。複数の貨物をまとめる。帰りの輸送力を活用する。鉄道や船舶を含めて適切な手段を選ぶ。こうした一つ一つの無駄を減らす取り組みが、結果としてCO₂削減にもつながっていきます。
物流は「所有」だけでなく「共有」も選ぶ時代へ
これまでの物流では、「自社の荷物を、自社のために確保した車両で運ぶ」という考え方が中心でした。今後も専用輸送が必要な貨物は多くあります。一方で、ドライバー不足、物流コストの上昇、小口・多頻度化、CO₂削減、災害時の物流維持といった課題を一社だけで解決することは難しくなっています。
だからこそ、専用輸送か共同輸送かを一律に決めるのではなく、貨物の条件に応じて、輸送力、物流拠点、情報を共有し、必要な部分を組み合わせる選択肢が重要になります。
共同輸送は、単にコストを下げるための仕組みではありません。限られた輸送力を社会全体で有効に使い、物流を止めないための選択肢でもあるのです。
丸共協同株式会社が考えること
物流の効率化とは、新しい技術を導入することだけではありません。私たちは、「すでにある輸送力を、どうすればもっと有効に使えるのか」を考えることも、大切な物流改革だと考えています。
トラックに空いているスペースがある。鉄道コンテナに空いているスペースがある。同じ方面へ向かう貨物が複数ある。地方へ向かうトラックの帰りに運べる貨物がある。こうした情報が別々に存在している限り、物流の無駄は残ります。
荷主様が帰り便として活用できる輸送力を探し、運送会社様が地方行きの予定が決まった時点から帰り荷を探す。双方の情報が早くつながれば、空いていた輸送力を活かせる可能性が高まります。
物流の未来をつくるのは、必ずしも新しい車両や新しい設備だけではありません。「情報と情報をつなぐこと」、そして「荷物と輸送力をつなぐこと」。そこから生まれる効率化も、これからの物流を支える大きな力になるのではないでしょうか。
まとめ - 共同輸送は、情報共有から始まる
1パレットから利用できる鉄道・トラック混載輸送は、一つの新しいサービスというだけではありません。その背景には、「一社で輸送を完結させる物流」から、「複数の企業や輸送手段が協力する物流」へという変化が見えます。
トラック、鉄道、物流拠点、荷主、運送会社、そして貨物情報。それぞれを別々に考えるのではなく、必要なところをつないでいく。物流の効率化は、たくさん運ぶことだけではありません。今ある輸送力を無駄なく使うために、より早く情報をつなぐ。これからの共同輸送では、その考え方がますます重要になると私たちは考えています。
参考資料
・LNEWS:SST/JR貨物と1パレットから利用可能な鉄道・トラック混載輸送「パレットレール便」開始(2026年8月27日、PR)
