適正原価をめぐり政官民が意見交換 地域コスト・物流DX・制度運用の課題
適正原価をめぐり、政官民が意見交換
― 日昇会の第6回勉強会で、制度の実効性と現場課題を共有 ―
2026年8月25日、運送業の今後を考える有志の会「日昇会」が、第6回勉強会を開催しました。
今回の勉強会には、国会議員、国土交通省をはじめとする関係省庁、全国のトラック運送事業者が参加し、導入に向けた検討が進められている「適正原価」を中心に意見交換が行われました。
この記事では、LOGISTICS TODAYの報道と国土交通省の公表資料をもとに、勉強会でどのような課題や意見が示されたのかをご案内します。
適正原価をめぐる国の検討状況
2025年6月に成立・公布された改正貨物自動車運送事業法により、トラック運送事業者が自ら貨物を運ぶ場合や、ほかのトラック運送事業者などに運送を委託する場合には、国土交通大臣が定める「適正原価」を継続して下回らないようにする制度が導入されることになりました。
この規定は、法律の公布から3年以内に施行される予定です。
国土交通省は、適正原価の具体的な設定に向け、2026年7月17日に第1回、同年8月26日に第2回の「適正原価の設定に向けた有識者検討会」を開催しています。
日昇会の勉強会とは
日昇会は、運送業の今後を考える有志の会です。
今回の第6回勉強会には、政治側から複数の国会議員、行政側から国土交通省、経済産業省、農林水産省、厚生労働省、デジタル庁が出席しました。
事業者側からは、セメント、食品・医薬品、精密機械、冷凍食品、住宅建材など、さまざまな貨物を扱う全国のトラック運送事業者15社が、対面またはオンラインで参加しました。
主な議題として、次のテーマが示されました。
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適正原価制度の実務上の運用
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公平な競争環境の構築
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荷主の意識改革とCLO(物流統括管理者)
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物流DXの推進とデータ規格の標準化
地域によって異なる輸送コスト
勉強会では、適正原価をどのように設定するのかについて、地域の実情を踏まえた意見が示されました。
寒冷地の運送事業者からは、スタッドレスタイヤの装着費、除雪費用、雪道による遅延など、雪国特有の負担が、現在の標準的な運賃体系に十分反映されていないとの指摘がありました。
こうした費用に対応するため、冬季割増やシーズンサーチャージなど、季節や地域に応じた仕組みを検討してほしいという要望も出されています。
また、運送サービスを維持するための基準が必要である一方、設定する水準が高すぎても低すぎても地域の輸送に影響する可能性があるとして、慎重な制度設計を求める声も紹介されました。
制度運用における公平性の課題
LOGISTICS TODAYの記事では、特定事業者に選定された九州の事業者から、計画の策定や報告に多くの工数と管理コストがかかる一方、選定されていない企業には同じ負担がないことへの不公平感が示されたと報じられています。
参加した運送事業者からは、制度に対応する事業者がかえって不利にならないかとの懸念が示されました。これに対し、国土交通省からは、制度を定めるだけでなく、厳格に運用することが重要であるとの考えが示されています。
下請の段数制限やドライバーの残業時間についても、地域の車両事情や長距離運行の必要性を踏まえ、一定の特例を求める意見が紹介されています。
物流DXと標準化に関する課題
DXについては、運送事業者がシステムを導入しても、取引先となる荷主が同じ仕組みに対応しなければ、十分に機能しないという課題が示されました。
また、システム導入後に国の規格や方針が変更されると、それまでの投資が無駄になる可能性があるとの懸念も示されています。
こうした課題から、EDIやフィジカルインターネットを含む物流データの標準化について、国が早い段階から方向性を示してほしいとの要望が出されました。
国土交通省から示された検討の方向性
LOGISTICS TODAYの記事によると、国土交通省からは、適正原価について、安全への投資や人件費を確保し、事業を継続するために必要となる水準を想定しているとの説明がありました。
また、燃料費や車両価格などの上昇をタイムリーに反映する仕組みや、一定期間の中で適正原価を継続して下回らないための運用ルール、事業者の原価計算を支援するIT基盤についても検討を進める考えが示されました。
標準的な運賃の廃止後を見据え、企業努力が報われる「モデル運賃」の提示や、原価を可視化・共有するオープンブック方式も検討課題として紹介されています。
これらは、現時点で正式に決定された制度ではありません。今後の有識者検討会などを通じて、具体的な内容が議論されていく段階です。
CLOや許可更新制についても意見交換
勉強会ではこのほか、CLOが中長期計画を策定する過程に、実際に輸送を担う運送事業者が参加する仕組みについても意見が交わされました。
また、不適格事業者への対応や公平な競争環境の構築に関連して、事業許可の更新制を厳格に運用することについても議論されています。
国の有識者検討会とは別に行われた意見交換
今回の日昇会の勉強会は、国土交通省が設置している「適正原価の設定に向けた有識者検討会」とは別の取り組みです。
日昇会の勉強会は、国の第2回有識者検討会が開催される前日の2026年8月25日に開かれ、政治、行政、運送事業者の間で、現場が抱える課題や制度運用への要望が共有されました。
翌8月26日に開催された国の第2回有識者検討会では、全日本トラック協会、全日本運輸産業労働組合連合会、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国農業協同組合中央会、出版文化産業振興財団からのヒアリングと、個別論点の検討が行われました。
国の正式な有識者検討会と、業界関係者による意見交換が、それぞれ進められていることになります。
まとめ
適正原価をめぐっては、原価の計算方法だけでなく、地域差、季節変動、制度運用の公平性、物流DXの標準化など、実務に関係する幅広い課題が議論されています。
適正原価の具体的な算定方法や運用ルールは、現時点では決定していません。今後、国土交通省の有識者検討会で、制度設計に向けた議論がどのように進められていくのかが注目されます。
参考資料
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LOGISTICS TODAY「適正原価の実効性問う、日昇会で政官民議論」
https://www.logi-today.com/991777 -
国土交通省「適正原価の設定に向けた有識者検討会」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000020.html -
国土交通省「第1回 適正原価の設定に向けた有識者検討会」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000021.html -
国土交通省「第2回 適正原価の設定に向けた有識者検討会」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000022.html
