物流効率化とは?RORO船・鉄道・帰り便から考えるこれからの物流
2026.08.28
コラム
物流効率化は、「トラックを減らすこと」ではない
― RORO船・鉄道・帰り便から考える、これからの物流のつなぎ方 ―
物流業界では今、「物流効率化」という言葉を目にする機会が増えています。
共同配送、中継輸送、鉄道や船舶へのモーダルシフト、物流DX、自動化。
さまざまな取り組みがありますが、物流効率化とは、単純にトラックの台数を減らしたり、人の仕事を機械に置き換えたりすることなのでしょうか。
私たちは、少し違うと考えています。
必要なところにはトラックを使う。
長距離輸送では、条件に応じて船舶や鉄道も活用する。
そして、それぞれの輸送を情報でつなぎ、物流全体にある無駄を少しずつ減らしていく。
これからの物流効率化では、この「組み合わせる」という考え方が、ますます重要になってくるのではないでしょうか。
その一つとして注目されているのが、RORO船を活用した輸送です。
RORO船とは、どのような船なのか
RORO船とは、「Roll-on/Roll-off(ロールオン・ロールオフ)船」の略称です。
名前だけを見ると少し難しく感じますが、仕組みは比較的分かりやすいものです。
一般的なコンテナ船では、コンテナをクレーンなどで吊り上げて船へ積み込みます。
一方、RORO船では、クレーンで貨物を吊り上げて積み込むのではなく、車両やトレーラーを自走または牽引して船内へ積み込みます。
到着港でも同じように車輪を使って船外へ搬出できるため、荷役を効率的に行えることが特徴です。
船には岸壁と船内をつなぐランプウェイが設けられており、そこから車両やトレーラーが出入りします。
物流に詳しくない方でも、港でトラックやトレーラーがそのまま船の中へ入っていく姿を想像すると分かりやすいかもしれません。
「トレーラーを船で運ぶ」とはどういうことか
RORO船を理解するうえで、もう一つ知っておきたいのが、トレーラーの仕組みです。
大型トレーラーは、大きく分けると二つの部分で構成されています。
前方の運転席やエンジンがある部分を「トラクターヘッド」。
荷物を積む後方部分を「シャーシ」と呼びます。
この二つは切り離すことができます。
そのため、出発地側のドライバーが荷物を積んだシャーシを港まで運び、港でトラクターヘッドを切り離します。
その後、シャーシだけを船で輸送し、到着した港では別のトラクターヘッドが接続して、最終目的地まで運ぶことができます。
輸送の流れを簡単にすると、
工場や倉庫から港まではトラック輸送。
長距離区間は船舶輸送。
到着港から納品先までは再びトラック輸送。
という形になります。
つまり、長距離輸送のすべてを一台のトラック、一人のドライバーが走り切る必要がなくなる場合があります。
「荷物は長距離を移動する。ドライバーは長距離を移動しない」
RORO船を活用した物流で重要なのが、ドライバーが船に同行せず、貨物を積んだシャーシだけを輸送する「無人航送」という考え方です。
出発地側のドライバーは、港まで荷物を運ぶ。
船が長距離区間を運ぶ。
到着地側では、別のドライバーが港から納品先まで運ぶ。
このように役割を分けることができます。
これは、
「荷物は長距離を移動する。しかし、ドライバーは長距離を移動しない」
という物流の形です。
ドライバー不足や労働時間への対応を考えるうえで、この考え方には大きな意味があります。
一人のドライバーが長時間、長距離を走り続ける輸送だけに頼らず、船舶や鉄道などを組み合わせることで、輸送力を維持しながら働き方を変えていくことができます。
RORO船とフェリーは同じなのか
RORO船とフェリーは、どちらも車両を船へ積み込めるため、似たものに見えます。
しかし、目的には違いがあります。
フェリーは貨物だけではなく、一般の乗客やドライバーも運びます。
一方、RORO船は基本的に貨物輸送を中心とした船です。
フェリーでは、トラックと一緒にドライバーが乗船する輸送もあります。
RORO船では、貨物を積んだシャーシだけを船で運ぶ無人航送が多く利用されています。
どちらが良い、悪いということではありません。
輸送距離。
航路。
荷物の種類。
納期。
積地や降地。
集荷・配送体制。
こうした条件によって、適した輸送方法は変わります。
物流効率化で大切なのは、一つの輸送方法だけを正解と考えないことだと思います。
なぜ今、RORO船やモーダルシフトが注目されているのか
背景には、物流を支える人手の問題があります。
長距離トラック輸送では、長時間の運転が必要になることがあります。
一方で、ドライバー不足や労働時間への対応が進む中、これまでと同じ輸送方法だけで物流を維持していくことは簡単ではありません。
そこで、
長距離区間は船舶や鉄道。
集荷・配送部分はトラック。
というように、それぞれの輸送手段が得意とする部分を組み合わせるモーダルシフトの重要性が高まっています。
ここで注意したいのは、
「トラックから船へ変える」
だけがモーダルシフトではないということです。
これからの物流では、
トラック。
船舶。
鉄道。
中継輸送。
共同配送。
さまざまな輸送方法を組み合わせ、物流全体として最適な形を考えていくことが求められていくのではないでしょうか。
CO₂削減というもう一つの効果
モーダルシフトには、ドライバー不足への対応だけではなく、環境負荷を減らすという側面もあります。
国土交通省が公表している2024年度試算では、1トンの貨物を1km輸送した場合のCO₂排出量は、
営業用貨物車 195g-CO₂/トンキロ
船舶 41g-CO₂/トンキロ
鉄道 19g-CO₂/トンキロ
とされています。
船舶の場合、営業用貨物車と比較するとCO₂排出量は約79%少ない計算になります。
もちろん、実際の物流では港まで、あるいは港から先のトラック輸送も必要なため、輸送全体がそのまま79%削減されるわけではありません。
それでも、長距離幹線輸送の一部を船舶へ転換することは、物流におけるCO₂削減を考えるうえで有効な選択肢の一つになります。
船舶を使えば、トラックが不要になるわけではない
船舶や鉄道による輸送が増えると、
「トラック輸送の仕事が減るのではないか」
と感じる方もいるかもしれません。
しかし、実際にはそう単純ではありません。
工場や倉庫から荷物を集荷する。
荷物を港まで運ぶ。
到着した港から納品先まで届ける。
こうした部分では、トラックが必要です。
つまり、これから変わっていくのは、
「トラックが必要か、必要でないか」
ではなく、
「トラックを、どこで、どのように使うか」
なのだと思います。
一台のトラックが出発地から目的地まで走り切る輸送もあれば、船舶や鉄道、中継輸送と組み合わせる方法もある。
それぞれの条件に応じて、輸送方法を選択できることが重要になります。
本当に減らしたいのは「トラック」ではなく「無駄」
物流効率化という言葉には、「削減」というイメージがあります。
しかし、本当に減らしていかなければならないものは、トラックそのものではありません。
空車で走る距離。
荷物を積まずに戻る車両。
長時間の待機。
必要以上の長距離運行。
急な輸送手配。
情報が遅かったことで生まれる配車の無駄。
こうした一つひとつを減らしていくことが、本当の物流効率化ではないでしょうか。
RORO船も、そのための方法の一つです。
鉄道も一つです。
中継輸送も一つです。
共同配送も一つです。
帰り便・帰り荷の活用も一つです。
どれか一つだけが正解なのではありません。
物流全体を見ながら、条件に合った方法を組み合わせることが大切です。
物流効率化を支えるのは「情報」
輸送方法が多様になればなるほど、重要になるものがあります。
それが、情報です。
いつ荷物が出るのか。
どこからどこまで運ぶのか。
何時に積み込むのか。
どの車種が必要なのか。
どの港を利用するのか。
何時に出航するのか。
いつ到着するのか。
到着後、どこまで運ぶのか。
そして、その車両は次にどこへ向かうのか。
こうした情報が早く分かれば、配車にはさまざまな選択肢が生まれます。
私たちは長年物流の仕事に携わる中で、
「情報が少し早く分かるだけで、配車は変わる」
と感じる場面を何度も経験してきました。
明日の輸送を今日知るのと、数日前に知るのでは違います。
地方行きの輸送が決まった時点で情報が分かれば、その時から帰り荷を探すこともできます。
物流効率化は、大きな設備投資や最新システムからしか始められないものではありません。
荷主様から輸送予定を少し早く共有していただく。
運送会社様も車両予定を少し早く共有する。
こうした情報共有も、物流効率化への大切な一歩だと私たちは考えています。
帰り便・帰り荷も、同じ物流効率化の考え方
物流の中には、まだ活用できる輸送力があります。
ある地域まで荷物を運んだトラックが、何も積まずに戻ってくる。
物流の現場では珍しいことではありません。
しかし、そのトラックが戻る方向へ向かう荷物があれば、すでに動いている輸送力を活用することができます。
荷主様にとっては、帰り便を活用できる可能性があります。
運送会社様にとっては、帰り荷を確保できる可能性があります。
もちろん、すべての輸送で条件が合うわけではありません。
時間。
車種。
積載条件。
荷物の種類。
積地。
降地。
さまざまな条件があります。
だからこそ、情報を早く共有し、選択肢を増やしておくことが重要になります。
RORO船と帰り便・帰り荷は、まったく違う輸送方法に見えます。
しかし、その根本には共通する考え方があります。
それは、
「今ある輸送力を、もっと有効に使えないか」
という考え方です。
これからの物流は「何で運ぶか」から「どうつなぐか」へ
これからの物流では、さまざまなものを「つなぐ」という視点が重要になっていくと考えています。
トラックとトラックをつなぐ。
トラックと船舶をつなぐ。
トラックと鉄道をつなぐ。
荷主様の輸送情報と運送会社様の車両情報をつなぐ。
行きの荷物と帰りの荷物をつなぐ。
そして、人と人をつなぐ。
一つひとつの輸送を別々に考えるのではなく、物流全体としてつなげることによって、これまで見えていなかった効率化が生まれる可能性があります。
これからの物流を考えるとき、
「何で運ぶのか」
だけではなく、
「どうつなぐのか」
という視点が、ますます重要になっていくのではないでしょうか。
効率だけを追い求めないことも大切
物流効率化を進めるうえで、もう一つ忘れてはいけないことがあります。
それは、効率だけを追い求めないことです。
物流には、安全があります。
品質があります。
納期があります。
そして、人があります。
いくら効率が良くても、ドライバーに無理をさせる輸送であってはいけません。
運送会社様が適正な利益を確保できない輸送も、長く続けることはできません。
荷主様だけに負担を求める仕組みでもいけません。
物流に関わる皆様が、それぞれ無理なく続けられる仕組みをつくる。
それも、これからの物流効率化を考えるうえで大切な視点だと思います。
これからの物流のために
物流を効率化するために、すべてを新しくする必要はありません。
今あるトラックを活かす。
今ある航路を活かす。
鉄道を活かす。
帰り便・帰り荷を活かす。
そして、それぞれが持っている情報を少し早く共有する。
新しい仕組みを取り入れることも大切ですが、今ある物流の力をどう組み合わせるかを考えることも同じくらい重要です。
その積み重ねによって、空車走行を減らし、ドライバーの負担を減らし、運送会社様の輸送力を活かし、荷主様にとっても安定した物流につながっていくのではないでしょうか。
物流の基本にあるのは、いつの時代も、荷物を安全に、確実に、必要な場所へ届けることです。
その大切な部分は守りながら、時代に合わせて運び方やつなぎ方を変えていく。
物流効率化とは、そのような取り組みなのだと私たちは考えています。
丸共協同株式会社は、これからも物流の現場に向き合いながら、荷主様、運送会社様、そして物流に携わる皆様にとって、より良い物流のあり方を考え続けてまいります。
参考資料
国土交通省「モーダルシフトとは」
国土交通省「内航海運へのモーダルシフト」
国土交通省「内航フェリー・RORO船ターミナルにおける業務効率化に向けて」
国土交通省「次世代高規格ユニットロードターミナルについて」
