運賃は上がった。それでもなぜ運送会社様の経営は楽にならないのか
2026.08.28
コラム
2026年トラック運送業界の最新景況感から考える、運賃・稼働効率・帰り荷と物流効率化
物流業界ではここ数年、燃料費、人件費、車両価格、整備費など、さまざまなコストが上昇しています。
そのため、適正な運賃を収受することの重要性が、以前にも増して言われるようになりました。
実際、2026年4月から6月期のトラック運送業界では、運賃・料金水準に改善が見られ、営業収入や営業利益にも改善の動きが出ています。
しかし、全日本トラック協会が2026年8月に公表した「第134回 トラック運送業界の景況感」を見ると、運賃が改善すれば、それだけで運送会社様の経営が安定するわけではないことも分かります。
輸送数量、燃料価格、人手不足、空車走行、そして一台のトラックをどれだけ効率よく動かせるか。
物流会社の経営には、さまざまな要素が関係しています。
これから必要になるのは、適正な運賃を確保することと同時に、限られたトラックとドライバーをどのように有効に活用していくかを考えることではないでしょうか。
長年物流の現場に携わってきた私たちにとっても、今回の数字は改めて考えさせられる内容でした。
目次
1.2026年4~6月期のトラック運送業界の景況感
2.運賃・料金水準は改善している
3.それでも次期の見通しは厳しい
4.大手と中小運送会社様で広がる景況感の差
5.近畿の数字から見える物流の現状
6.運賃だけでは解決できない物流の経営問題
7.トラックの稼働効率から物流を考える
8.実車率とは何を表しているのか
9.帰り便と帰り荷を改めて考える
10.情報を少し早く共有する意味
11.荷主様にとっても物流効率化は重要になる
12.これから必要なのは「安く運ぶ物流」ではない
13.おわりに
1.2026年4~6月期のトラック運送業界の景況感
全日本トラック協会の調査によると、2026年4月から6月期のトラック運送業界全体の景況感はマイナス28.9となりました。
前回のマイナス29.4から0.5ポイント改善しています。
大きく状況が変わったというより、ほぼ横ばいと見る方がよいでしょう。
一方、2026年7月から9月期の見通しはマイナス34.0となり、今期から5.1ポイント悪化すると予測されています。
輸送数量の減少や燃料価格への懸念、運賃・料金水準の伸びの鈍化など、物流業界を取り巻く経営環境には、まだ多くの不安材料があります。
ここ数年、荷主様にも物流コストへの理解が広がり、運賃の見直しは少しずつ進んできました。
それでも、運送会社様の経営が一気に楽になるほど単純ではないということが、今回の数字からも見えてきます。
2.運賃・料金水準は改善している
一般貨物の数字を見ると、今回の特徴がさらに分かりやすくなります。
2026年4月から6月期の輸送数量はマイナス13.6となり、前回のマイナス19.6から改善しました。
運賃・料金水準についても、前回の24.1から32.7へ改善しています。
営業収入は前回のマイナス11.4から4.0へ、営業利益についてもマイナス27.2からマイナス11.6へ改善しました。
この数字を見ると、適正な運賃を収受することが、運送会社様の経営にとって重要であることが分かります。
トラックを一台走らせるためには、燃料費だけではありません。
高速道路料金、人件費、車両購入費、保険料、整備費、タイヤ代など、さまざまな費用が必要です。
こうしたコストが上昇している以上、それを運賃へ適切に反映していくことは、物流を維持していくために必要です。
荷主様と運送会社様が適正な運賃について話し合うことは、これからも大切になります。
ただ、運賃だけを見ていても物流の経営全体は見えてきません。
3.それでも次期の見通しは厳しい
2026年7月から9月期の一般貨物では、輸送数量がマイナス26.6まで悪化する見通しとなっています。
運賃・料金水準についても、今回の32.7から24.0へ低下すると予測されています。
せっかく一件当たりの運賃が改善しても、運ぶ荷物そのものが減れば、運送会社様の売上や利益には影響します。
さらに、燃料価格が上昇すれば、一運行あたりの負担も増えます。
物流会社の経営を考える場合、いくらで運ぶかだけを見ることはできません。
どれだけ仕事を確保できるか。
トラックがどれだけ荷物を積んで走れるか。
荷物を降ろした後、次の荷物を積むまでどれくらい時間が空くのか。
空車でどれくらい走っているのか。
こうした一つ一つが、一台のトラックの収益に関係しています。
適正な運賃を確保することに加えて、トラック一台の動かし方そのものを考えていく必要があります。
4.大手と中小運送会社様で広がる景況感の差
今回の調査でもう一つ気になるのが、事業者規模による景況感の違いです。
2026年4月から6月期の景況感では、101両以上の大規模事業者が17.1となっています。
一方、中規模事業者はマイナス30.9、小規模事業者はマイナス46.2です。
同じトラック運送業界でも、会社の規模によって大きな差があります。
もちろん、この数字だけから原因を一つに決めることはできません。
扱う荷物、地域、取引先、車種、営業力、配車方法など、それぞれの会社によって条件は異なります。
しかし、日本の物流を支えているのは大手運送会社だけではありません。
全国には多くの中小運送会社様があり、それぞれの会社が地域物流や企業間輸送を支えています。
中小運送会社様が適正な利益を確保し、安定して事業を続けられる環境をつくることは、荷主様にとっても安定した輸送手段を守ることにつながります。
5.近畿の数字から見える物流の現状
私たちが事業を行う近畿についても見てみます。
一般貨物の景況感は、前回のマイナス30.0から今回マイナス44.4へ悪化しました。
次期についてはマイナス36.1まで改善する見通しですが、依然として厳しい水準です。
物流の仕事をしていると、全国平均だけでは分からない地域ごとの違いを感じます。
ある地域ではトラックが足りない。
別の地域では空車が出ている。
午前中は車両が不足していても、午後になると空車が増えることもあります。
季節や曜日によって荷物量も変わります。
荷物がないわけではありません。
トラックがないわけでもありません。
ただ、その時間、その地域で必要な荷物と車両の情報が、うまくつながっていない。
物流の現場では、こうした場面が今もあります。
6.運賃だけでは解決できない物流の経営問題
私たちも長年、配車業務に携わってきました。
その中で感じるのは、同じ一台のトラックでも、一日の動きによって収益が大きく変わるということです。
荷物を積んで走っている時間。
荷物を待っている時間。
空車で移動している時間。
次の仕事を探している時間。
そのすべてが、トラックとドライバーの時間です。
例えば、大阪から東京まで荷物を運んだとします。
東京で荷物を降ろした後、そのまま大阪まで空車で戻ったとしても、燃料費、高速道路料金、人件費などは発生します。
帰り道だから費用がかからないわけではありません。
物流の現場では昔から、行きの荷物だけではなく、戻りの車両をどうするかが大切でした。
適正な運賃を確保すること。
そして、空車で走る距離を減らすこと。
この二つは、どちらも運送会社様が安定して事業を続けていくために必要です。
7.トラックの稼働効率から物流を考える
物流業界ではドライバー不足が続いています。
これから人口減少が進めば、人材確保はさらに難しくなる可能性があります。
もちろん、新しい人材を採用し、働きやすい環境をつくることは必要です。
しかし、人を増やすことだけで物流の問題を解決するのは難しくなっていくでしょう。
そこで、もう一つ重要になるのが、現在走っているトラックをどれだけ効率よく活用するかという考え方です。
私たちはこれを、トラックの稼働効率という分かりやすい言葉で考えてみたいと思います。
一日トラックが動いていたとしても、その多くが空車であれば、効率よく仕事ができているとは言い切れません。
反対に、行きの荷物だけではなく帰りの荷物も確保できれば、同じ一台のトラックでも荷物を積んで走る時間や距離を増やすことができます。
限られたトラックとドライバーを大切に使う。
これも、これからの物流効率化では重要になってくると思います。
8.実車率とは何を表しているのか
トラックの稼働効率を考えるうえで、一つの目安になるのが「実車率」です。
実車率とは、トラックが走行した距離のうち、実際に荷物を積んで走った距離がどの程度あるかを見るための指標です。
例えば、一日の走行距離が500キロあったとしても、そのうち250キロを空車で走っていれば、車両自体は動いていても、そのすべてが荷物を運ぶ仕事になっているわけではありません。
今回の全日本トラック協会の調査でも、実車率に関する判断は引き続き厳しく、次期についても悪化が見込まれています。
もちろん、すべての空車走行をなくすことはできません。
時間が合わない。
車種が合わない。
荷物の条件が合わない。
目的地が合わない。
物流にはさまざまな条件があります。
それでも、帰り荷を早く探したり、空いている車両の情報を広く共有したりすることで、減らすことのできる空車走行はあります。
実車率を上げることだけを目的にするのではなく、結果としてトラック一台の稼働効率が良くなり、無駄な走行を減らしていく。
その考え方が大切だと思います。
9.帰り便と帰り荷を改めて考える
大阪から東京へ荷物を運んだトラックを例に考えてみます。
東京で荷物を降ろした後、大阪方面へ戻る予定のトラックがあります。
この車両を利用したい荷主様から見れば「帰り便」です。
一方、運送会社様から見れば、大阪方面へ戻るための「帰り荷」を確保することになります。
同じ一台のトラックですが、荷主様と運送会社様では見る立場が違います。
帰り便や帰り荷という考え方は、決して新しいものではありません。
物流業界では昔から行われてきました。
ただ、昔と現在では情報を伝える方法が大きく変わっています。
以前は電話やFAXを使い、一社ずつ荷物や車両を探すことが中心でした。
現在はインターネットやスマートフォンを使って、より早く、より広い地域へ情報を届けることができます。
昔からある物流の知恵に、現在の情報技術を組み合わせる。
そこには、まだ物流を効率化できる余地が残されていると思います。
10.情報を少し早く共有する意味
帰り荷を確保するために大切なのは、探せる時間をどれだけ確保できるかです。
地方へ向かう配車が決まった時点から帰り荷を探し始める場合と、荷物を降ろした後に初めて探し始める場合では、選択肢が大きく変わります。
荷主様についても同じです。
明日にならなければ分からない輸送情報と、数日前から分かっている輸送情報では、運送会社様が準備できる時間が違います。
もちろん、すべての輸送予定を事前に確定できるわけではありません。
急な出荷もあります。
当日に決まる仕事もあります。
物流には予定通りにいかないことも多くあります。
だからこそ、分かっている情報だけでも少し早く共有することに意味があります。
私たちは配車業務の中で、一日早く情報が分かることの大きさを何度も感じてきました。
一日早く分かれば、一日多く帰り荷を探すことができます。
それだけ条件の合う荷物に出会える可能性も高くなります。
大きな設備投資だけが物流効率化ではありません。
情報を少し早く動かすことも、現場で始められる大切な改善です。
11.荷主様にとっても物流効率化は重要になる
空車走行を減らすことや、トラックの稼働効率を高めることは、運送会社様だけの問題ではありません。
物流の無駄が増えれば、そのコストは物流全体に影響します。
反対に、限られたトラックを効率よく動かすことができれば、荷主様にとっても必要な時に輸送手段を確保しやすい環境につながります。
荷主様が輸送予定を少し早く共有する。
運送会社様が配車を決めた時点から帰り荷を探す。
空いている車両の情報を広く伝える。
荷物を積めるトラックと、運んでほしい荷物を、できるだけ早い段階でつなげる。
どれも特別に難しい考え方ではありません。
しかし、こうした情報がうまくつながっていない場面は、物流の現場にはまだ残っています。
荷物がないのではない。
トラックがないのでもない。
必要な時に、お互いの情報が出会っていない。
この部分を少しずつ改善していくことも、これからの物流に必要ではないでしょうか。
12.これから必要なのは「安く運ぶ物流」ではない
帰り便や帰り荷、物流効率化という話をすると、運賃を安くするための方法だと思われることがあります。
しかし、私たちはそうではないと考えています。
物流効率化の目的は、運送会社様の運賃を無理に下げることではありません。
必要な運賃はきちんと確保する。
そのうえで、空車走行、待機時間、情報の行き違いなど、物流の中に残っている無駄を減らしていく。
この二つを一緒に進めることが大切です。
運賃だけを下げれば、一時的には物流費が安くなったように見えるかもしれません。
しかし、その負担が運送会社様に集中すれば、ドライバーの待遇、安全への投資、車両の更新、人材育成などにも影響していきます。
それでは長く続く物流にはなりません。
運送会社様が適正な利益を確保できること。
荷主様が安定した輸送を確保できること。
そして、限られた人とトラックをできるだけ有効に活用すること。
この三つを一緒に考えていくことが、これからの物流効率化ではないでしょうか。
13.おわりに
2026年4月から6月期のトラック運送業界の景況感を見ると、運賃・料金水準には改善が見られました。
その一方で、次期は輸送数量の減少などを背景に、景況感が再び悪化すると見込まれています。
今回の数字から私たちが改めて感じるのは、これからの物流には二つの取り組みが必要だということです。
一つは、適正な運賃を守ること。
もう一つは、物流の中にある無駄を少しずつ減らすことです。
荷主様が少し早く輸送予定を共有する。
運送会社様が配車を決めた段階から帰り荷を探す。
空いているトラックの情報を広く共有する。
空車で走る距離を少しでも減らす。
荷物を積んで走る時間や距離を増やし、一台のトラックの稼働効率を高める。
一つ一つは小さな取り組みに見えるかもしれません。
しかし、日本全国を走るトラック一台一台で積み重なれば、その効果は決して小さくありません。
物流は一社だけで成り立つ仕事ではありません。
荷主様がいて、運送会社様がいて、ドライバーがいて、多くの人が関わることで、荷物は目的地まで届きます。
だからこそ、誰か一人に負担を押しつけるのではなく、それぞれが適正な利益を確保しながら、物流全体の無駄を減らしていくことが大切だと考えています。
「安く運ぶ物流」から「無駄を減らし、長く続けられる物流」へ。
丸共協同株式会社では、これからも物流の現場に携わる会社として、最新のデータと実際の現場で感じる変化の両方を見ながら、荷主様、運送会社様とともに、これからの物流について考えてまいります。

参考資料
公益社団法人 全日本トラック協会
「第134回 トラック運送業界の景況感(速報)―令和8年4月~6月期―」
2026年8月公表
LNEWS
全日本トラック協会「第134回 トラック運送業界の景況感」に関する記事
2026年8月19日掲載
