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売上一本化は危険?全東信の破産から考える与信管理と売上分散

2026.09.07 コラム

売上を一つに集める便利さと、一つに頼る危険

― 全東信の破産から考える、与信管理と「売上分散」の重要性 ―

2026年7月、クレジットカード決済代行会社「全東信」が破産し、加盟店が受け取るはずだった売上金が入金されない問題が発生しました。

未入金となった加盟店は約2万店、金額は約53億円に上るとされています。

利用者がカードで支払いを済ませ、店舗では売上も計上されている。それでも、その売上金が店舗の口座に入らない。

この出来事が問いかけているのは、決済代行会社に対する監督だけではありません。

私たち企業にとって、売上や取引の経路を一つに集めることには、どのような危険があるのか。

そして、与信管理だけで取引先の破綻リスクをどこまで防げるのか。

物流業界に置き換えると、それは一社の荷主、一社の元請会社、一つの営業経路、一つのプラットフォームに売上を頼り過ぎていないかという問題につながります。

結論からいえば、売上分散とは、大切な取引先との関係を弱めることではありません。

一つひとつの信頼関係を守りながら、経営を支えるつながりを複数持つことです。


この記事で分かること

  • 全東信の破産で、なぜ加盟店の売上金が守られなかったのか

  • 「売上金の保全」と「売上の補償」の違い

  • 与信管理だけでは防ぎ切れない取引集中のリスク

  • 物流会社が確認したい売上・取引先・営業経路の集中度

  • 既存の信頼関係を大切にしながら売上を分散する考え方

全東信の破産で何が起きたのか

全東信は、飲食店や小売店などとクレジットカード会社の間に入り、カード売上金を通常より早く加盟店へ入金するサービスを提供していました。

ところが、2026年7月6日に大阪地方裁判所から破産手続開始決定を受け、事業を停止しました。

帝国データバンクが後日明らかにした破産申請時点の負債総額は約1,151億6,400万円で、2026年に入って最大規模の倒産と報じられました。

主に7月1日から5日までのカード決済分について、約2万店、総額約53億円の売上金が未入金になったとされています。

全東信の「破産管財人からのお知らせ」では、加盟店が受け取っていない売上金は、法律上、破産手続における破産債権として扱われると説明されています。

つまり、店舗の売上として発生したお金であっても、決済代行会社の中で別に守られていなければ、破産時にはほかの債権と同じ手続の中で扱われる可能性があります。

加盟店にとっては、売上がなくなったのではありません。

売上は発生しているのに、回収できない状態です。

これは、利益の問題だけではありません。仕入代金、給与、家賃、税金など、日々の支払いに使う運転資金が突然入ってこなくなる問題です。

「売上補償」と「売上金保全」は同じではない

今回の問題を考えるうえで、言葉を分けておく必要があります。

売上補償とは、事故や休業などで損失が発生した後、保険や契約に基づいて、その損失の全部または一部を補う考え方です。

一方、売上金保全とは、加盟店に渡すべきお金を運営会社自身の資金と分けて管理するなど、運営会社が破綻しても利用企業の資金が巻き込まれにくい状態をつくることです。

全東信の事例が問いかけているのは、「補償制度が機能しなかった」ということだけではありません。

そもそも、加盟店へ渡る前の売上金を、破綻時にも守る仕組みが十分だったのかという問題です。

デジタルサービスを選ぶ際には、手数料、入金の早さ、操作の便利さだけでなく、次の点も確認する必要があります。

  • 売上金は誰の名義で管理されるのか

  • 運営会社の資金と分けて管理されているのか

  • 運営会社が破綻した場合、未入金分はどのように扱われるのか

  • 信託、保証、保険などの保全措置はあるのか

  • 入金が止まった場合に切り替えられる別の決済経路があるのか

便利さは大切です。

しかし、企業のお金を預けるサービスでは、「万一のときに誰が守るのか」まで確認して初めて、安全性を判断できます。

与信管理をしていても、破綻を完全には予測できない

取引を始める前に、会社情報、財務内容、支払実績、信用調査などを確認する与信管理は重要です。

しかし、与信管理は将来の安全を保証するものではありません。

東京商工リサーチは、全東信が預金残高の水増しや架空債権の計上などを行い、少なくとも約20年前から粉飾決算を続けていた可能性があると報告しています。

同社は2018年9月、ホームページで「加盟店20万店突破」と発表していました。一方、産経新聞などの報道では、破産前に実際の取引があった加盟店は約3万2,000店とされています。

累計加盟店数と直近の取引実績がある加盟店数では、数字の意味が異なります。大きな取引実績や知名度があることだけで、現在の財務状況や資金保全まで判断することはできません。企業の規模や安全性を考えるときは、数字の基準や対象期間まで確認する必要があります。

与信管理は必要です。

それと同時に、万一判断できなかったときにも経営への影響を限定できるよう、取引を一つに集中させないことが大切です。

物流会社にもある「売上一本化」の危険

今回の事例は決済業界の問題ですが、物流会社の経営にも共通します。

例えば、一社の大口荷主から売上の多くを得ている場合、日々の配車は組みやすくなり、営業活動の負担も小さくなります。安定した物量を任せていただけることは、大変ありがたいことです。

一方で、契約の終了、物量の減少、工場移転、事業再編、元請会社の方針変更などが起きると、売上全体が一度に大きく減少する可能性があります。

同じことは、一社の利用運送会社、一つの荷物情報サービス、一つの営業担当者、一つの地域や業種に依存している場合にも起こります。

売上が安定して見えるときほど、集中リスクは見えにくくなります。

確認したいのは、売上高だけではありません。

確認項目    見るべき内容
最大取引先への依存度    売上全体のうち、最も大きな取引先が占める割合
上位3社への依存度    上位3社で売上の大半を占めていないか
未回収金額    一社または一つの決済経路に、最大でいくら滞留するか
営業経路の集中    紹介、元請、電話営業など、一つの方法だけに頼っていないか
地域・業種の集中    特定地域や特定業種の景気変動に影響され過ぎないか
代替経路の準備    取引や入金が止まったとき、別の経路へ切り替えられるか

最大取引先への依存度は、次の計算で確認できます。

最大取引先の年間売上高 ÷ 会社全体の年間売上高 × 100

何%までなら安全かは、固定費、保有車両、取引期間、契約条件などによって異なります。

重要なのは、一定の数字を一律に危険と決めることではありません。自社がどこに、どれだけ依存しているのかを把握し、その取引が止まった場合の影響を事前に考えておくことです。

売上分散は、既存の取引を大切にしながら進める

売上分散というと、大口取引を減らすことだと受け取られるかもしれません。

しかし、大切な取引先との関係を手放す必要はありません。

既存の取引を大切にしながら、新しい取引の入口を一つ、二つと増やしていくことが基本です。

例えば、次のような方法が考えられます。

  • 既存荷主との安定取引を中心にしながら、空いている曜日や時間帯に別の荷物を組み合わせる

  • 長距離運行が決まった時点で帰り荷の情報を探し、復路の売上をつくる

  • 一つの業種だけでなく、物量の繁忙期が異なる複数業種とつながる

  • 元請会社からの仕事に加えて、荷主と直接相談できる取引経路を持つ

  • 一社だけに営業を任せず、複数の情報経路から仕事を探せる状態をつくる

売上を分散するために、すべての取引を同じ規模にする必要はありません。

既存の主力取引を守りながら、第二、第三の売上経路を育てることが、現実的な分散です。

情報がつながれば、売上を分散しやすくなる

中小の物流会社が自社だけで新しい荷主を探し続けるには、時間も人手も必要です。

一方、荷物の情報、空車の情報、希望する地域、対応できる車両などが早く共有されれば、これまで接点のなかった荷主と運送会社がつながる可能性が生まれます。

荷主にとっては、輸送を任せられる会社の選択肢が増えます。

運送会社にとっては、既存取引を大切にしながら、新しい帰り荷や追加の仕事を探せます。

情報をつなぐ目的は、取引を一つの場所へ集中させることではありません。

それぞれの企業が複数の選択肢を持ち、必要なときに助け合える関係を増やすことです。

売上分散は、単に危険を避けるための守りではありません。

空車時間を減らし、新しい地域や業種とつながり、将来の売上を育てる攻めの経営でもあります。

丸共協同株式会社が考える、これからの「つながり」

丸共協同株式会社は1982年の創業以来、物流に関わる多くの荷主様、運送会社様、協力会社様とのつながりに支えられてきました。

一つの取引を長く大切にすることは、これからも変わりません。

その一方で、一社だけに頼らず、複数の信頼できる相手とつながっておくことも、会社と物流を守るために必要だと考えています。

災害、景気変動、事業再編、法改正、取引先の突然の経営悪化は、一社の努力だけでは防げないことがあります。

だからこそ、日頃から情報を共有し、必要なときに相談できる相手を増やしておくことが大切です。

売上を一つに集めることだけを目指すのではなく、信頼を軸に複数のつながりを持つ。

それが、変化の大きい時代に「必要とされる会社」であり続けるための経営につながるのではないでしょうか。

よくある質問

売上分散は、大口荷主との関係を弱めることになりませんか

既存の取引を減らすことが目的ではありません。主力取引を大切にしながら、空いている時間、曜日、車両、地域などを活用して、第二、第三の売上経路を育てる考え方です。

信用調査をしていれば、取引先の集中は問題ありませんか

信用調査や与信管理は重要ですが、将来の破綻や急な方針変更を完全に予測することはできません。与信管理と取引分散を組み合わせることが大切です。

小さな仕事を増やすと、配車や事務が複雑になりませんか

取引先を増やすほど、配車、請求、入金確認などの業務は増える可能性があります。そのため、情報や書類の形式をそろえ、取引状況を一元的に確認できる仕組みも必要になります。

一つのプラットフォームを利用することも集中リスクになりますか

なります。便利なサービスであっても、それだけに営業や取引を一本化するのではなく、既存取引、直接取引、紹介、複数の情報経路などを組み合わせることが大切です。

まとめ

全東信の破産は、決済代行会社に対する監督や売上金保全の課題を明らかにしました。

同時に、企業が一つの会社や一つの経路へ売上を集中させる危険も問いかけています。

与信管理は必要です。

しかし、与信管理だけで、すべての変化や不正、突然の破綻を予測することはできません。

万一、一つの取引が止まっても事業を続けられるように、売上、取引先、営業経路、決済経路を少しずつ分散しておく。

大切なのは、信頼関係を薄く広げることではありません。

一つひとつの信頼を大切にしながら、会社を支えるつながりを増やすことです。

売上を一本化する経営から、信頼を軸に複数の選択肢を持つ経営へ。

情報がつながることで、物流の無駄を減らし、荷主様と運送会社様の双方が、より安定した経営を目指せる環境が必要です。

丸共協同株式会社は、これからも物流業界の未来と現場をつなぐ情報を発信してまいります。

参考資料

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