荷待ち・荷役時間は2時間以内で終わりではない 物流効率化法と87%調査を解説
荷待ち・荷役時間は「2時間以内」で終わりではない
― 民間調査87%と国土交通省データから考える、物流改善の次の課題 ―
物流効率化法への対応が進むなか、荷待ち時間と荷役等時間の短縮は、荷主と運送会社の双方にとって重要な課題になっています。
2026年8月に株式会社CUBE-LINXが公表した民間調査では、回答した荷主企業の物流部門最終責任者の87.0%が、自社で手配する輸送の荷待ち・荷役時間を「1運行につき平均2時間以内」に収めることができていると答えました。
一方、国土交通省が2026年7月10日に公表した調査では、トラックドライバーの1運行当たりの荷待ち・荷役等時間は平均2時間2分でした。
数字だけを見ると、「2時間以内」という目標に近づいているように見えます。しかし、平均時間が短くなったことと、すべての物流現場の課題が解決したことは同じではありません。
この記事では、民間調査と国土交通省の公表資料をもとに、数値の意味と注意点を整理し、「2時間以内」の先に必要な物流改善について考えます。
「1運行2時間以内」は何を意味するのか
物流効率化法では、2025年4月から、すべての荷主や物流事業者などに対し、積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮に取り組む努力義務が設けられました。
2026年4月からは、一定規模以上の荷主、連鎖化事業者、物流事業者が「特定事業者」として指定され、中長期計画の作成や定期報告などが義務付けられています。このうち、特定荷主と特定連鎖化事業者(加盟店と運送事業者との貨物の受渡しについて指示できるフランチャイズチェーン本部など)には、物流統括管理者(CLO)の選任も求められます。
国の基本方針では、2028年度までに、全国の貨物自動車による輸送のうち5割の運行で荷待ち・荷役等時間を1時間短縮し、ドライバー1人当たり年間125時間を短縮する目標が示されています。
その実現に向けた目安が、次の2つです。
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1運行当たりの荷待ち・荷役等時間を、全国平均で合計2時間以内にする
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1回の受渡しごとの荷待ち・荷役等時間は、原則として1時間以内を目標とし、やむを得ない場合を除いて2時間を超えないようにする
ここで注意したいのは、「2時間」が、超えた瞬間に一律の罰則が科される基準ではないことです。
「1運行2時間ルール」という呼び方が使われることもありますが、正確には、物流効率化に向けて国の基本方針に定められた目標です。2時間を超えたかどうかだけで判断するのではなく、各事業者が実態を把握し、継続的に改善することが求められています。
民間調査では87.0%が「平均2時間以内」と回答
CUBE-LINXは、2026年7月31日から8月1日にかけて、物流効率化法における特定事業者に該当する荷主企業の物流部門最終責任者330人を対象に、インターネット調査を実施しました。
公表された主な結果は次のとおりです。
| 調査項目 | 主な回答 | 割合 |
|---|---|---|
| 1運行平均2時間以内への対応 | 対応できている | 87.0% |
| 実施済み・実施中の対策 | パレット化の推進 | 41.2% |
| 実施済み・実施中の対策 | 運行スケジュールの調整 | 40.6% |
| 実施済み・実施中の対策 | フォークリフトなどの荷役機器導入 | 38.5% |
| 最も効果を実感した対策 | 運行スケジュールの調整 | 19.9% |
| 現在の課題 | 対策費用や運賃上昇分などの価格転嫁 | 29.1% |
| 現在の課題 | 荷役人員の不足 | 28.8% |
| 現在の課題 | 時間の正確な計測やデータ化の遅れ | 28.5% |
| 今後最も必要な対策 | 人員の増強・配置最適化 | 19.1% |
パレット化や運行スケジュールの調整が進み、一定の時間短縮につながっていることがうかがえます。
その一方で、費用の価格転嫁、荷役人員の不足、時間計測やデータ化の遅れが課題として残っています。時間短縮への取り組みが進んだからこそ、設備、人員、費用、情報管理といった次の課題が見え始めたとも考えられます。
「87%」を業界全体の達成率と受け取らない
87.0%という数字は、国が各企業の実績を確認して認定した達成率ではありません。民間のインターネット調査に参加した330人の自己申告に基づく結果です。
また、公表されたプレスリリースだけでは、回答企業の詳しい業種構成、企業規模、対象拠点数、対象運行数、実測値との照合方法までは確認できません。
そのため、「日本の荷主企業全体の87%が達成した」「荷待ち問題の大部分が解決した」と捉えるのは適切ではありません。
正確には、次のように理解する必要があります。
特定事業者に該当する荷主企業の物流部門最終責任者330人を対象とした民間調査で、87.0%が、自社手配の輸送における荷待ち・荷役時間を1運行平均2時間以内に収められていると回答した。
この調査は、荷主企業の認識や現在の課題を知るうえで有用です。ただし、業界全体の実測結果を示す公的統計とは分けて読む必要があります。
国土交通省調査では平均2時間2分
国土交通省は2026年7月10日、実運送を行う一般貨物自動車運送事業者を対象とした調査結果を公表しました。
調査は2025年11月25日から12月24日まで行われ、2025年4月から8月までの通常期における代表的な1日の運行について確認しています。
| 項目 | 2024年度調査 | 2025年度調査 | 前年度調査との差 |
|---|---|---|---|
| 集計数(n) | 1,032 | 315 | ― |
| 1運行当たりの平均拘束時間 | 11時間46分 | 10時間13分 | 1時間33分短縮 |
| 荷待ち・荷役等時間 | 3時間18分 | 2時間2分 | 1時間16分短縮 |
国土交通省は、平均拘束時間が短縮した主な要因として、荷待ち・荷役等時間の減少を挙げています。
一方で、2024年度調査と2025年度調査では集計数(n)が異なります。また、公表資料では、同じ事業者を継続して追跡した調査とは明記されていません。国土交通省が示した改善傾向は重要ですが、年度間の差を読む際には、こうした調査条件の違いにも注意が必要です。
さらに、CUBE-LINX調査と国土交通省調査は、回答者、調査方法、対象運行が異なります。87.0%と平均2時間2分を直接比較して、整合性や達成率を判断することはできません。
また、国土交通省が公表した別の取組状況調査では、回答事業者の具体的な意見として、荷待ちが5時間を超える現場もあることが紹介されています。
平均が2時間前後まで短くなっても、現場ごとのばらつきは残っているのです。
「平均2時間」だけでは見えない3つの課題
1.平均値の中に長時間の現場が隠れる
短時間で終わる運行が多ければ、一部に長時間の荷待ちが残っていても平均値は下がります。
必要なのは全体平均だけではなく、拠点別、曜日別、時間帯別、荷姿別などに分けて実態を見ることです。2時間を超えた運行の割合や、特に長い待ち時間が発生した運行を確認することで、優先して改善すべき現場が見えてきます。
2.時間短縮の負担が別の場所へ移る可能性がある
ドライバーが担っていた荷役を荷主側の作業員へ移せば、ドライバーの負担は減ります。しかし、荷主側には人員の確保や配置変更が必要です。
反対に、運送会社やドライバーが引き続き荷役や附帯業務を担うのであれば、作業内容を契約で明確にし、運賃とは別に適正な料金を設定する必要があります。
時間が短くなっても、作業や費用が見えないまま別の企業へ移っただけでは、持続可能な改善とはいえません。
3.設備・人員・システムの費用がかかる
荷待ち・荷役時間を短縮するには、次のような取り組みが必要です。
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パレットや物流機器の導入
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フォークリフトや荷役人員の適切な配置
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バース予約システムや倉庫管理システムの導入
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入出荷時間や物量の平準化
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検品方法や伝票処理の見直し
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荷主と運送会社の情報共有
これらには、設備費、システム費、人件費、運用変更のための費用がかかります。
物流効率化を続けるには、「何分短くなったか」だけでなく、「誰が作業を担い、誰が必要な費用を負担するのか」まで話し合うことが欠かせません。
改善の出発点は、時間を工程別に記録すること
荷待ち時間と荷役等時間をまとめて記録するだけでは、どこに原因があるのか分かりにくくなります。
例えば、次のように工程を分けて時刻を記録すると、改善点を見つけやすくなります。
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施設への到着
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受付
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バースへの接車
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荷役開始
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荷役終了
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検品・伝票処理の終了
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施設からの出発
受付前の待機、バース待ち、荷役、検品、伝票処理などに分けることで、予約方法に問題があるのか、人員配置が不足しているのか、検品や書類処理に時間がかかっているのかが見えます。
同じ時刻情報を荷主側と運送会社側で共有できれば、感覚ではなく実績データに基づいて、改善方法や役割分担、費用負担を話し合えるようになります。
情報が早くつながれば、現場の準備が変わる
荷待ちは、トラックが施設に到着してから始まる問題とは限りません。
出荷量が直前まで分からない、到着予定時刻が共有されない、荷姿や検品方法が伝わっていない。こうした情報の遅れが、現場での待ち時間につながることがあります。
反対に、次の情報を早い段階で共有できれば、必要な車両、バース、フォークリフト、作業員を準備しやすくなります。
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出荷・入荷予定量
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車種・車格
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到着予定時刻
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パレット数・荷姿
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荷役方法
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検品方法
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附帯業務の有無
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遅延・予定変更
システムを導入すること自体が目的ではありません。必要な情報が、必要な相手へ、準備に間に合う時点で届き、現場の配置や運行計画に反映されることが大切です。
丸共協同株式会社が考える「2時間の先」
丸共協同株式会社は、荷待ち・荷役等時間を2時間以内にすることは、物流改善のゴールではなく出発点だと考えます。
大切なのは、時間を短くした結果、別の現場や別の企業へ負担を移していないかを確認することです。
荷主様だけが負担するのでも、運送会社様だけが負担するのでもなく、実際の作業、必要な人員、設備、費用を見えるようにする。そのうえで、双方が続けられる役割分担と取引条件を考える必要があります。
その話し合いを支えるのが、正確で早い情報共有です。
物量、到着予定、荷役方法、作業時間などの情報が早くつながれば、荷主様は受入体制を整えやすくなり、運送会社様は無理の少ない運行計画を立てやすくなります。
時間を削るだけの効率化から、荷主様と運送会社様がともに続けられる効率化へ。
「2時間以内」という数字の先にある人、費用、作業、情報まで見つめることが、これからの持続可能な物流には必要です。
よくある質問
Q1.「1運行2時間以内」は法律上の罰則基準ですか
2時間以内は、物流効率化に関する国の基本方針で示された目標です。2時間を超えたことだけで直ちに違法となり、一律に罰則が科される仕組みではありません。ただし、荷主や物流事業者には荷待ち・荷役等時間の短縮に取り組む努力義務があり、特定事業者には中長期計画や定期報告などの義務があります。
Q2.荷主企業の87%が公式に達成したのですか
いいえ。87.0%は、CUBE-LINXが荷主企業の物流部門最終責任者330人を対象に実施した民間のインターネット調査で、「平均2時間以内に収められている」と回答した割合です。国が実績を確認して認定した達成率ではありません。
Q3.国土交通省の平均2時間2分と87.0%は比較できますか
直接比較はできません。CUBE-LINX調査は荷主企業の責任者による自己申告で、国土交通省調査は実運送を行う一般貨物自動車運送事業者を対象としています。回答者、調査方法、対象運行が異なります。
Q4.荷待ち時間を減らすには、何から始めればよいですか
到着、受付、接車、荷役開始、荷役終了、検品・伝票処理、出発の時刻を工程別に記録することから始めます。時間が発生している工程を特定できれば、予約方法、人員配置、荷役方法、検品方法など、優先して改善すべき点を判断しやすくなります。
Q5.予約システムを導入すれば解決できますか
予約システムは有効な手段ですが、導入するだけでは十分ではありません。出荷量、荷姿、荷役方法、到着予定などの情報が正しく共有され、現場の人員や設備の配置に反映される運用が必要です。
まとめ
CUBE-LINXの民間調査では、回答者330人の87.0%が、自社で手配する輸送の荷待ち・荷役時間を1運行平均2時間以内に収められていると回答しました。
国土交通省の2025年度調査では、1運行当たりの荷待ち・荷役等時間は平均2時間2分でした。本稿で使用した主要な数値は、上記の公表資料に記載された数値と照合しています。
ただし、2つの調査は対象と方法が異なり、民間調査の87.0%を業界全体の公式な達成率として扱うことはできません。また、平均時間が短くなっても、長時間の荷待ちが残る現場、費用の価格転嫁、荷役人員の不足、設備投資、計測やデータ連携などの課題は残ります。
誰が作業を担うのか。
その費用をどのように負担するのか。
どの情報を、いつ、誰と共有するのか。
時間、人、費用、情報を一つにつないで考えることが、持続可能な物流への次の一歩になります。
参考資料
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株式会社CUBE-LINX「荷主企業の1運行2時間ルールへの対応実態調査」(2026年8月26日公表)
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国土交通省「トラックドライバーの1運行当たりの平均拘束時間に関する調査結果」(2026年7月10日公表)
※数値および制度内容は、2026年8月29日時点で上記公表資料を直接確認し、記載内容と照合しています。なお、CUBE-LINX調査については、公表された集計結果を確認したものであり、個別の回答データを独自に検証したものではありません。
