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8月上旬の貿易は2,173億円の黒字輸 出入増加と物流への影響

2026.08.31 コラム

8月上旬の貿易は2,173億円の黒字

― 輸出15.5%増、輸入25.8%増から考える「金額」と「貨物量」の違い ―

2026年8月28日、財務省は「令和8年8月上旬分貿易統計(速報)」を公表しました。

LNEWSの報道によると、8月上旬の輸出額は前年同期比15.5%増、輸入額は同25.8%増となり、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2,173億600万円の黒字でした。

輸出入ともに二桁の増加となったことから、海外との取引が大きく動いているように見えます。

しかし、物流の視点からこの統計を読むときは、一つ注意が必要です。

貿易額が増えたからといって、貨物量やコンテナ個数も同じ割合で増えたとは限りません。

この記事では、8月上旬の貿易統計を前年同期や前回の7月分資料と比較しながら、物流の現場ではどのように受け止めればよいのかを考えます。

目次

  1. 8月上旬の輸出入はともに二桁増

  2. 黒字でも、黒字幅は前年同期の半分

  3. 7月上旬の赤字から、8月上旬は黒字へ

  4. 前回の7月分速報は数値が更新された

  5. 貿易額の増加と貨物量の増加は同じではない

  6. 主要6港のコンテナ統計とは役割が違う

  7. 物流の現場で確認したい情報


1. 8月上旬の輸出入はともに二桁増

財務省の一次資料によると、2026年8月上旬の貿易実績は次のとおりです。

項目 2026年8月上旬 前年同期比
輸出額 3兆6,785億8,400万円 15.5%増
輸入額 3兆4,612億7,800万円 25.8%増
貿易収支 2,173億600万円の黒字 黒字額50.0%減

輸出額と輸入額の差し引きも確認できます。

3兆6,785億8,400万円 − 3兆4,612億7,800万円

= 2,173億600万円の黒字

LNEWSに掲載された数値は、財務省の一次資料と一致しています。


2. 黒字でも、黒字幅は前年同期の半分

今回の数字で注目したいのは、貿易収支が黒字だったことだけではありません。

前年の2025年8月上旬と比較すると、次のようになります。

項目 2025年8月上旬 2026年8月上旬
輸出額 3兆1,852億4,800万円 3兆6,785億8,400万円
輸入額 2兆7,507億3,500万円 3兆4,612億7,800万円
貿易収支 4,345億1,300万円の黒字 2,173億600万円の黒字

輸出は15.5%増加しましたが、輸入はそれを上回る25.8%の増加となりました。

その結果、貿易収支は黒字を維持したものの、黒字額は前年同期から50.0%減少しています。

つまり今回の統計は、単に「黒字だった」と捉えるだけでは不十分です。

「輸出入とも増えているが、輸入の伸びが輸出を上回り、黒字幅は半分になった」

ここまで見ることで、貿易の動きをより正確に理解できます。


3. 7月上旬の赤字から、8月上旬は黒字へ

同じ10日間の統計である2026年7月上旬と比較すると、さらに違った動きが見えてきます。

項目 2026年7月上旬 2026年8月上旬 前月上旬比
輸出額 3兆6,915億4,600万円 3兆6,785億8,400万円 約0.4%減
輸入額 4兆4,207億8,100万円 3兆4,612億7,800万円 約21.7%減
貿易収支 7,292億3,500万円の赤字 2,173億600万円の黒字 約9,465億円改善

輸出額は7月上旬とほぼ同じ水準です。

一方、輸入額は約21.7%減少しました。

8月上旬が黒字になった主な理由は、輸出が急増したからではなく、7月上旬と比べて輸入額が大きく減少したためです。

ただし、旬別の数値は季節調整されていません。営業日数、通関の時期、輸入品目の違いなどによっても変動するため、この数字だけで輸入需要が弱まったと判断することはできません。


4. 前回の7月分速報は数値が更新された

前回確認した2026年7月分の貿易統計速報では、次の数値が公表されていました。

  • 輸出額は11兆5,118億円、前年同月比23.2%増

  • 輸入額は12兆1,463億円、同27.8%増

  • 貿易収支は6,345億円の赤字

その後、2026年8月28日に「確速」へ更新され、現在は次の数値になっています。

  • 輸出額は11兆5,093億7,400万円、前年同月比23.2%増

  • 輸入額は12兆1,477億1,800万円、同27.9%増

  • 貿易収支は6,383億4,400万円の赤字

前回の数値は、公表時点の速報値として誤りではありません。

ただし、これから7月分を紹介する場合は、8月28日に更新された数値を使用する方が正確です。

なお、財務省が示す「確速」とは、輸出確報と輸入9桁速報を組み合わせた段階の数値です。最終的な確定値とは異なります。


5. 貿易額の増加と貨物量の増加は同じではない

今回の輸入額は前年同期比25.8%増でした。

しかし、これは輸入貨物の重量やコンテナ個数が25.8%増えたことを意味するものではありません。

貿易統計は円建ての金額で集計されるため、次のような要因によって変化します。

  • 実際に輸出入された貨物の数量

  • 商品一単位当たりの価格

  • 為替相場

  • 原材料やエネルギー価格

  • 高額品と低額品の構成

例えば、同じ数量の貨物を輸入していても、商品価格や為替が変われば輸入額は増減します。反対に、貿易額の伸びが小さくても、低単価の商品が増えていれば貨物量は増えている可能性があります。

また、今回の貿易統計は日本全体の通関金額であり、海上コンテナだけを対象とした統計でもありません。

そのため、輸入額25.8%増という数字から、港湾の取扱量や国内ドレージ輸送の需要が同じ割合で増えたと判断することはできません。


6. 主要6港のコンテナ統計とは役割が違う

前回確認した国土交通省の「港湾統計速報」では、2026年6月の主要6港における外国貿易貨物コンテナ個数は119万5,224TEUで、前年同月比1.0%増でした。

ここで、今回の輸入額25.8%増と、主要6港のコンテナ個数1.0%増を単純に比較することはできません。

統計 主に確認できること
財務省の貿易統計 輸出入された商品の金額、地域・品目別の貿易動向
国土交通省の港湾統計 港湾で取り扱われた貨物量やコンテナ個数

貿易統計は「いくらの取引があったか」を見る資料です。

港湾統計は「どれだけの貨物が動いたか」を見る資料です。

両方を組み合わせることで、金額だけでは見えない物流の実態に近づくことができます。


7. 物流の現場で確認したい情報

貿易額の増加は、物流需要の変化を考える一つの手掛かりになります。

しかし、実際の配車、倉庫、人員配置まで考えるためには、総額だけでなく、より具体的な情報が必要です。

荷主様は、入荷予定、数量、納品先、保管期間などをできるだけ早く共有する。

運送会社様は、対応できる車両、地域、日程、帰り荷を探している区間などの情報を早めに伝える。

そして物流事業者は、港別、品目別、地域別の統計と現場の情報を組み合わせて、必要な輸送力を準備する。

統計は、結果を眺めるだけのものではありません。

将来の入出荷を予測し、車両や倉庫の不足、荷待ち、空車回送などの無駄を減らすために活用してこそ、物流判断につながります。


よくある質問

Q1.輸入額が25.8%増えたということは、輸入貨物量も25.8%増えたのでしょうか

いいえ。今回発表されたのは金額の増減です。貨物量を確認するには、重量、数量、コンテナ個数などの別の統計を見る必要があります。

Q2.8月の貿易収支は黒字になったのでしょうか

現時点で黒字と確認できるのは、8月1日から10日までの上旬分です。8月全体の貿易収支が黒字になるかどうかは、月間速報の公表を待つ必要があります。

Q3.7月分の数値が変わったのはなぜですか

前回公表された数値が速報値で、その後に輸出確報・輸入9桁速報である「確速」へ更新されたためです。速報値は公表時点では正しい数値ですが、公開用の記事ではどの段階の統計を使用したかを明記することが大切です。


まとめ

2026年8月上旬の輸出額は前年同期比15.5%増、輸入額は同25.8%増となり、貿易収支は2,173億600万円の黒字でした。

一方、輸入の伸びが輸出を上回ったため、黒字額は前年同期から50.0%減少しています。

また、7月上旬との比較では、輸出額はほぼ横ばいでしたが、輸入額が減少したことで赤字から黒字へ転じました。

ただし、貿易額の増加と貨物量の増加は同じではありません。

大切なのは、一つの大きな数字だけで判断せず、貿易金額、コンテナ個数、貨物量、港別動向、入出荷予定などの情報をつなぐことです。

丸共協同株式会社は、これからも物流に関わる情報を分かりやすく整理し、荷主様と運送会社様のより良い物流判断につながる情報発信を続けてまいります。


参考資料

 

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