「帰り便」の発想が鉄道へ ダイキン・ニプロのラウンドマッチングから考える物流効率化
「帰り便」の発想が鉄道へ
ダイキン・ニプロのラウンドマッチングから考える物流効率化
往復積載率・物流マッチング・モーダルシフトをどうつなぐか
2026年10月6日、ダイキン工業、ニプロ、オーケー器材、合通ロジ、白金運輸、JR貨物の6社は、31フィートコンテナを活用した鉄道によるラウンドマッチング輸送を開始したと発表しました。
輸送開始日は10月2日です。
往路では、大阪府のダイキン堺製作所で製造した業務用エアコンなどを宮城県内の物流センターへ輸送します。復路では、秋田県大館市のニプロの生産拠点で製造した医療機器を、大阪府内の物流センターへ輸送します。
貨物を届けた後にコンテナを空のまま戻すのではなく、往路と復路で異なる企業の貨物を組み合わせることで、輸送資源を有効活用する取り組みです。
6社の発表では、この取り組みにより年間141.9トン、81.0%のCO2排出量削減を見込んでいます。
丸共協同株式会社がこれまで取り上げてきた「帰り便・帰り荷」「積載効率」「物流マッチング」「物流DX」と、非常に近い考え方です。
今回は、この事例を単なる鉄道輸送のニュースとしてではなく、これからの物流に必要な「往復で輸送を考える」という視点から考えます。
この記事で分かること
ダイキン・ニプロが始めたラウンドマッチング輸送の仕組み
なぜ往路と復路を組み合わせることが重要なのか
帰り便・帰り荷と鉄道ラウンドマッチングの共通点
モーダルシフトと物流マッチングの関係
2030年の輸送力不足に向けて必要になる考え方
荷主企業と運送会社が物流DXでつながる意味
1.ダイキン・ニプロが始めたラウンドマッチングとは
今回の取り組みでは、JR貨物の31フィートコンテナを利用します。
往路では、ダイキンの堺製作所で製造した業務用エアコンと、オーケー器材が扱う空調製品用部材を、東北地方の顧客向けに宮城県内の物流センターまで輸送します。
復路では、ニプロが秋田県大館市の生産拠点で製造した医療機器を、関西地方の顧客向けに大阪府内の物流センターまで輸送します。
ラウンドマッチングとは、貨物を目的地で降ろした後、輸送機器を空で回送せず、復路にも条件の合う貨物を組み合わせることで往復の積載率を高め、輸送コストの低減につなげる方式です。
つまり、
大阪・関西方面から東北方面へ運ぶ。
そして、
東北方面から大阪・関西方面へ戻る。
この両方向の貨物を、一つの輸送サイクルとして考えています。
2.重要なのは「鉄道へ切り替えたこと」だけではない
今回の事例では、まずトラック中心の長距離輸送を鉄道へ移すモーダルシフトが注目されます。
しかし、それだけが重要なのではありません。
鉄道へ切り替えても、荷物を届けた後にコンテナを空のまま戻せば、帰りの輸送能力を十分に活用できません。
今回のポイントは、
往路だけで物流を考えず、復路まで一つの輸送として設計したこと
です。
ダイキンなど6社は、異業種間の物流部門が連携することで、輸送にかかる総コストの削減だけでなく、労働力不足への対応など物流効率化にも貢献すると説明しています。
3.トラックの「帰り便・帰り荷」と同じ発想
丸共協同株式会社では、以前から帰り便・帰り荷という考え方を大切にしてきました。
例えば、大阪から関東へ荷物を運んだトラックがあるとします。
関東で荷物を降ろした後、大阪まで空車で戻れば、その帰路にも燃料費、高速道路料金、人件費、車両費などが発生します。
そこで、関東から大阪・関西方面へ向かう別の荷物を探します。
荷主企業から見れば「帰り便」を活用することになり、運送会社から見れば「帰り荷」を確保することになります。
今回の鉄道ラウンドマッチングも、輸送手段は違いますが、基本的な考え方は共通しています。
トラックでは、空車回送を減らす。
鉄道では、空コンテナの回送を減らす。
どちらも、
すでに存在している輸送能力を往復で有効利用する
という発想です。
4.異業種だからこそマッチングできる
今回、往路で運ばれるのは空調関連製品です。
復路で運ばれるのは医療機器です。
同じ商品でも、同じ業界でもありません。
ここは非常に重要です。
一社の物流だけを見ると、
「自社には帰りに運ぶ荷物がない」
ということがあります。
しかし、物流を一社単位ではなく、
発地、着地、輸送方向、日時、重量、容積、荷姿、車両・コンテナ条件
などの条件で考えると、別の企業の貨物と組み合わせられる可能性が生まれます。
「自社の荷物だけで効率化する」のではなく、他社の荷物や輸送資源も含めて効率化する。
今回の事例は、その考え方を具体的に示しています。
5.物流マッチングとは「トラックを探すこと」だけではない
物流マッチングという言葉から、荷物を運びたい荷主企業と、輸送に対応できる運送会社をシステム上で結び付ける仕組みを想像する人も多いと思います。
もちろん、それも物流マッチングの重要な役割です。
しかし、今回の事例を見ると、さらに広い考え方が見えてきます。
荷物とトラックをつなぐ。
往路と復路をつなぐ。
荷主企業と運送会社をつなぐ。
企業と企業をつなぐ。
トラックと鉄道をつなぐ。
地域と地域をつなぐ。
物流マッチングは、こうした物流資源全体の組み合わせへ発展していく可能性があります。
なお、今回のダイキン・ニプロの取り組みについて、「物流マッチングシステムを利用して成立した」と発表されているわけではありません。
ここは事実と当社の考察を分けて考える必要があります。
ただし、複数企業の貨物と輸送能力を条件に応じて組み合わせるという考え方は、物流マッチングや物流DXと非常に親和性が高いと考えられます。
6.物流DXが必要になる理由
このような往復輸送をさらに広げるためには、
「空いている車両があります」
「運びたい荷物があります」
という情報だけでは十分ではありません。
どこからどこまで運ぶのか。
いつ積めるのか。
いつ降ろすのか。
重量や容積はどのくらいか。
どの車種やコンテナが必要なのか。
荷役条件はどうなっているのか。
どの輸送モードが利用できるのか。
こうした情報を整理し、共有する必要があります。
組み合わせる企業や荷物が増えるほど、人が電話やFAXだけで最適な組み合わせを探すことには限界があります。
そこで、物流マッチングシステム、データ連携、AIなどの活用が重要になってきます。
2026年3月31日に閣議決定された「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」でも、物流DX・GXの推進や徹底的な物流効率化が重要な方向性として位置付けられています。
また、AIやデータを活用した集配送のマッチング、配車・運行計画の最適化、大型コンテナやシャーシ等の共同利用に向けた情報共有なども、今後の物流効率化を支える方向性として示されています。
物流DXの価値は、単に紙をデジタル化することではありません。
これまで見つけられなかった輸送の組み合わせを見つけられるようにすること。
これも、物流DXの重要な役割だと考えます。
7.2030年問題でも「積載効率」と「モーダルシフト」が重要になる
国土交通省が2026年3月3日に公表した「2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会」の提言では、2030年度について、何も追加施策を講じなかった場合、平均的な想定で約7%、条件によっては最大約25%の輸送力不足が生じる可能性が示されました。
同じ提言では、施策による輸送力確保の効果目標として、合計25.7ポイントが示されています。
主な内訳は、
トラックドライバーの荷待ち・荷役等時間短縮 7.5ポイント
トラックの積載効率向上 6.6ポイント
陸・海・空の新モーダルシフト 6.4ポイント
です。
積載効率については44%という目標も示されています。
ここで注意したいのは、これらの数字は3月3日に公表された検討会提言に示された「施策による効果・目標」であることです。
その後、3月31日に「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」が正式に閣議決定され、徹底的な物流効率化、新モーダルシフト、物流DX・GX、荷主・物流事業者間の連携などが重要な方向性として位置付けられました。
つまり、2030年問題への対応は、
「トラックを増やす」
「ドライバーを増やす」
だけではありません。
今あるトラック、コンテナ、鉄道、船舶などを、
どれだけ効率よく使えるか
という視点が重要になります。
8.物流効率化法とも方向性は一致する
物流効率化法では、2025年4月から、荷主や物流事業者などに物流効率化への努力義務が課されています。
さらに2026年4月からは、一定規模以上の事業者が特定事業者として指定され、中長期計画の作成や定期報告などの義務が始まりました。
特定荷主の指定基準は、年間の取扱貨物重量9万トン以上です。
また、物流統括管理者、いわゆるCLOの選任義務は、特定荷主と特定連鎖化事業者が対象です。
なお、2026年度に指定を受けた特定荷主については、初回の中長期計画の提出期限が2026年10月末日とされています。
物流効率化を「将来の課題」ではなく、具体的な計画として示す段階に入っています。
荷主企業にも、
「物流会社へ発注したから終わり」
ではなく、
自社の物流にどのような非効率があるのか。
積載率を改善できないか。
共同輸配送ができないか。
鉄道や船舶など他の輸送モードを活用できないか。
荷待ちや荷役時間を短縮できないか。
といったところまで物流を管理することが、以前より強く求められるようになっています。
9.効率化は「運賃を安くすること」ではない
ここは、以前の適正原価のコラムともつながります。
物流効率化というと、
「もっと安く運ぶ方法を探すこと」
と考えられる場合があります。
しかし、それだけでは持続可能な物流にはなりません。
空車で走る距離を減らす。
空コンテナの回送を減らす。
荷待ちを減らす。
往路と復路を組み合わせる。
複数企業で輸送資源を共同利用する。
こうした無駄を減らし、物流原価そのものを改善することと、単純な値下げは違います。
例えば、帰り荷を確保できたことによる効率化効果をすべて運賃値下げに使ってしまえば、運送会社側に車両更新、安全対策、人材確保などのための原資が残らなくなる可能性があります。
効率化によって生まれた価値を、荷主企業、運送会社、社会全体でどのように分けるのか。
適正原価を考えるうえでも重要なテーマです。
10.鉄道のラウンドマッチングは広がりつつある
今回のダイキン・ニプロの事例が、鉄道ラウンドマッチングの最初の取り組みというわけではありません。
2024年11月には、ブルボンとロッテなどが31フィートスーパーURコンテナを使い、新潟から福岡へのブルボン製品輸送と、福岡から大阪へのロッテ製品輸送を組み合わせたラウンドマッチングを開始しました。
また2025年12月には、ブルボン、不二製油、センコー、中越通運、JR貨物が、31フィート冷蔵コンテナによる鉄道ラウンド輸送を開始しています。
異なる企業の貨物を往路と復路で組み合わせる取り組みは、鉄道物流でも少しずつ広がっています。
今回のダイキン・ニプロの取り組みも、そうした流れの一つとして見ることができます。
11.JR貨物もラウンドマッチングを拡大
JR貨物は2026年度事業計画で、31フィートコンテナ輸送の拡大策として「ラウンドマッチングのパッケージサービスの提供」を掲げています。
また、定温コンテナについても、空回送の解消に向けたマッチング提案を進める方針です。
2025年度実績でも、顧客や3PL事業者と連携したラウンドマッチングのパッケージサービス提供や、定温コンテナの片道輸送解消に向けた取り組みが確認できます。
つまり、
「運んだ後、どう戻るのか」まで含めて輸送を設計する考え方
は、鉄道貨物でも重要になっています。
トラック物流で長年課題となってきた帰り荷の確保と、非常によく似ています。
12.丸共協同株式会社が考えること
丸共協同株式会社は、1982年の創立以来、荷主企業と運送会社の間に入り、帰り便、帰り荷、混載便、チャーター便などの物流プランニングに携わってきました。
そこで長年感じてきたことがあります。
荷物そのものがないのではなく、
必要な情報同士がつながっていないことで生まれる非効率がある
ということです。
ある会社には運びたい荷物がある。
別の会社には帰りの車両がある。
しかし、お互いの情報が届かなければ、マッチングは成立しません。
今回の鉄道ラウンドマッチングも、輸送モードこそ違いますが、基本にある考え方は共通しています。
これから重要になるのは、輸送力を新しく増やすことだけではありません。
すでに全国を走っているトラック。
鉄道コンテナ。
船舶。
そして、それぞれの地域に存在する荷物。
これらをどのようにつないでいくか。
私たちは、この「つなぐ力」が2030年へ向けた物流の重要なテーマになると考えています。
物流マッチングシステムやAIなどのデジタル技術も、そのための手段です。
技術そのものが目的ではありません。
帰り便と帰り荷を見つけやすくする。
荷主企業と運送会社が早く情報を共有する。
空車回送を減らす。
積載効率を高める。
適正な原価を把握する。
そして、限られた輸送力を社会全体で有効に使う。
そこまで実現して初めて、本当の物流DXにつながるのではないでしょうか。
13.よくある質問
Q1.ラウンドマッチング輸送とは何ですか?
往路で貨物を届けた後、輸送機器を空のまま戻さず、復路に別の貨物を組み合わせることで往復の積載率を高める輸送方法です。
今回の事例では、31フィート鉄道コンテナを往路と復路で異なる企業の貨物輸送に活用しています。
Q2.帰り便と帰り荷は何が違うのですか?
丸共協同株式会社では、荷主企業側から見た戻り車両の活用を「帰り便」、運送会社側から見た帰路で積載する荷物を「帰り荷」と整理しています。
どちらも空車回送を減らし、輸送資源を有効利用する考え方です。
Q3.物流マッチングとは何ですか?
荷物を運びたい荷主企業と、輸送に対応できる運送会社や輸送資源を条件に合わせて結び付ける考え方です。
今後はトラックだけでなく、共同輸配送、帰り荷、鉄道、船舶なども含めた物流全体の最適化が重要になると考えられます。
Q4.物流マッチングシステムを導入すれば積載率は上がりますか?
システムを導入するだけで積載率が上がるわけではありません。
発着地、日時、車種、重量、荷姿、荷役条件などの正確な情報を共有し、実際に条件の合う輸送を組み合わせる必要があります。
Q5.モーダルシフトとは何ですか?
トラック中心だった幹線輸送の一部を、鉄道や船舶などへ切り替える取り組みです。
ドライバー不足への対応やCO2排出量削減などが期待されています。
一方、工場から駅、駅から納品先などの集配にはトラックが必要になるため、鉄道対トラックではなく、それぞれの輸送モードを適切に組み合わせることが重要です。
Q6.荷主企業は何から始めればよいですか?
まず、自社物流の発地、着地、曜日、時間、重量、車種、積載状況、空車回送、荷待ち時間などを把握することが重要です。
一定方向に継続的な貨物がある場合は、反対方向の貨物や共同輸配送の可能性を検討できる場合があります。
14.まとめ
ダイキン、ニプロなど6社が開始した鉄道ラウンドマッチング輸送は、31フィートコンテナを大阪・関西と東北の間で往復利用し、異なる企業の貨物を組み合わせる取り組みです。
年間141.9トン、81.0%のCO2排出量削減が見込まれるだけでなく、空コンテナの回送を減らし、限られた輸送資源を有効利用する点に大きな意味があります。
そして、この考え方はトラック物流における帰り便・帰り荷と共通しています。
物流の未来は、単純にトラックやドライバーを増やすだけではありません。
トラックと荷物。
往路と復路。
荷主企業と運送会社。
企業と企業。
トラックと鉄道。
そして、情報と情報。
これらを、これまで以上につなぐことが必要になります。
2030年に向けて輸送力の制約が強まる中、
「すでにある輸送力を、どう見つけ、どうつなぎ、どう有効利用するか」
は、ますます重要になるでしょう。
丸共協同株式会社は、これまで培ってきた帰り便・帰り荷の物流プランニングと新しいデジタル技術を組み合わせ、荷主企業と運送会社の双方が継続できる物流を目指してまいります。
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運送業界DXはどこまで進んだ?トラック手配の現在地
参考資料
ダイキン工業株式会社ほか
「ダイキン・ニプロ製品の鉄道による長距離ラウンドマッチング輸送を開始」(2026年10月6日)
国土交通省
「2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会 提言」
「2030年度に想定される輸送力不足への対応方針」(2026年3月3日)
国土交通省
「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」(2026年3月31日閣議決定)
経済産業省・国土交通省
「物流効率化法」関連資料
日本貨物鉄道株式会社
「2026年度事業計画」
2025年度KGI・KPI実績資料
ブルボン・ロッテほか
31フィートスーパーURコンテナを活用したラウンドマッチング輸送に関する公表資料
ブルボン・不二製油ほか
31フィート冷蔵コンテナを活用した鉄道ラウンド輸送に関する公表資料
LOGISTICS TODAY
「往復の積載率向上へ、ダイキン・ニプロが鉄道連携」
