輸送力不足34%から7%へ 物量11.6%減少と運賃が上がらない物流危機
「輸送力不足34%から7%へ」は安心材料なのか
貨物量11.6%減少が突きつける「運賃が上がらない」もう一つの物流危機
丸共協同株式会社が考える、2030年に向けた物流効率化と会社基盤の強化
※本稿は国土交通省、NX総合研究所などの公開資料をもとに、丸共協同株式会社が物流現場の視点から独自に考察したものです。公表されている事実と当社の見解を分けて記載しています。
冒頭要約
国土交通省が2026年に示した再検証では、追加対策を講じない場合、2030年度のトラック輸送力不足は「平均的な想定で約7%」、厳しい想定では「最大約25%」とされました。
以前広く知られていた約34.1%という試算より数字は小さくなりました。しかし、これはドライバー不足が解消したことを意味しません。
大きな理由の一つは、営業用トラックの貨物輸送量が2019年度の28.4億トンから、2024年度には25.1億トンへ減少したことです。減少量は3.3億トン、減少率は約11.6%です。
運ぶ荷物が減れば、需給ギャップの数字は小さくなります。一方、運送会社から見れば、仕事量の減少は売上機会の減少でもあります。限られた荷物を複数の運送会社が取り合えば、燃料費、人件費、車両価格、修繕費などが上昇していても、運賃が十分に上がらない可能性があります。
2024年問題への官民の取組は、急激な輸送力低下を抑え、荷主企業を含む物流改革を制度化した点で一定の成果がありました。反面、約14%の改善には輸送需要の減少も含まれ、適正運賃の収受、人材確保、荷待ち削減などの現場定着はまだ途上です。
これからの物流業界では、単に仕事量を増やすのではなく、荷待ち時間の削減、積載効率の向上、帰り荷の確保、配車のデジタル化、適正な原価計算、取引条件の書面化などを通じて、一台、一便、一時間の価値を高めることが必要です。同時に、人材、車両、資金、信用、取引先、協力会社ネットワークを含む会社基盤の強化が、これまで以上に重要になります。
目次
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約34%から約7%へ変わった理由
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2019年度から貨物輸送量が11.6%減少
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「約14%を克服」の中身を正しく読む
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2030年度の3つの想定
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物量減少が運賃上昇を妨げる可能性
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輸送量が11.6%減ると、運賃を上げても売上が戻らない
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必要なのは値下げではなく物流効率化
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運送会社に必要な会社基盤の強化
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荷主企業に求められる取引の見直し
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丸共協同株式会社が考える不易流行
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よくある質問
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まとめ
1.約34%から約7%へ変わった理由
以前の約34.1%という数字は、2022年にNX総合研究所が示した試算をもとにしています。
この試算では、トラックドライバーの時間外労働規制と改善基準告示の影響により、2024年度に14.2%の輸送力が不足し、さらに2030年度までのドライバー不足によって19.5%が不足すると想定していました。
14.2%+19.5%=34.1%
ただし、この試算には、運賃や賃金の改善による人材確保、荷待ち時間の削減、積載効率の向上などが十分に進むという変数は入っていませんでした。
つまり、約34.1%は「何も改善しなければ、これだけ不足する可能性がある」という警告的な試算でした。
その後、実際に2024年問題を通過し、貨物輸送量、運転者数、労働時間、官民の取り組みなどの実績が確認できるようになりました。国土交通省は2026年、この実績を踏まえて2030年度の輸送力見通しを再検証しました。
したがって、「34.1%から7%へ単純に改善した」というより、「2019年度を基準とした警告的な試算から、2024年度までの実績を反映した複数シナリオへ計算し直された」と理解するのが適切です。
参考:NX総合研究所「改めて『物流の2024年問題』の理解と対応を考える①」
2.2019年度から貨物輸送量が11.6%減少
再検証を理解するうえで最も重要なのが、貨物輸送量の変化です。
| 項目 | 営業用トラックの貨物輸送量 |
|---|---|
| 2019年度 | 28.4億トン |
| 2024年度 | 25.1億トン |
| 減少量 | 3.3億トン |
| 減少率 | 約11.6% |
計算式は次のとおりです。
3.3億トン ÷ 28.4億トン × 100 = 約11.6%
国土交通省も、2019年度から2024年度にかけて「輸送需要も約12%減少」と説明しています。
輸送需要が減れば、必要とされる総輸送力も小さくなるため、需給ギャップの割合は以前の試算より縮小します。
さらに国土交通省の平均的な想定では、貨物の軽量化・高付加価値化や人口減少の影響を加味し、2030年度の需要量を24.3億トンとしています。これは2024年度の25.1億トンから、さらに3.1%減少する想定です。
ただし、重量が減ったからといって、物流の仕事が同じ割合で減るとは限りません。
例えば、同じ10トンの荷物でも、一台で一か所に届ける場合と、少量ずつ十か所に届ける場合では、必要な車両、時間、運転回数、荷役作業が異なります。貨物の軽量化、小口化、多頻度化が進めば、輸送トン数が減っても物流現場の負担が減らないことがあります。
このため、「物量が約11.6%減った」という数字だけで、物流危機が遠のいたと判断することはできません。
3.「約14%を克服」の中身を正しく読む
国土交通省は、当初想定されていた2030年度の約34%の需給ギャップのうち、約14%について、物流の2024年問題に対応するための官民の取組の成果などにより、おおむね克服できたと整理しています。
ただし、約14ポイントのすべてが、荷待ち時間の削減や共同配送によって新しく生み出された輸送力ではありません。同じ資料には「輸送需要も約12%減少」と明記されています。運ぶ荷物が減ったため、必要輸送力が小さくなり、需給ギャップが縮んで見える影響も含まれています。
また、公表資料では、「約14%のうち、需要減少が何ポイント、荷待ち時間削減が何ポイント、積載効率向上が何ポイント」といった要因別の内訳までは示されていません。
したがって、約14%は官民の取組だけを採点した純粋な成果指標ではありません。「2024年問題への対応、企業の運用変更、労働時間や運転者数の実績、そして輸送需要の減少などを含め、以前の前提から見通しが変わった幅」と受け止める必要があります。
ここを誤解すると、物量が減って需給ギャップが縮んだことを、運送会社の経営改善と取り違えるおそれがあります。
官民の具体的な取組内容と評価については、別稿「物流2024年問題は乗り越えたのか」で詳しく取り上げます。本稿では、物量減少と運賃、2030年度の輸送力不足に焦点を当てます。
参考:国土交通省「2030年度に想定される輸送力不足への対応方針」
4.2030年度の3つの想定
国土交通省の再検証では、2030年度を一つの数字で予測するのではなく、需要と供給の条件を変えた3つのケースを示しています。
| ケース | 2030年度の需要量 | 2030年度の供給量 | 輸送力不足 |
|---|---|---|---|
| 平均的な想定 | 24.3億トン | 22.6億トン | 約7%、1.7億トン |
| 2024年ベース | 25.1億トン | 21.3億トン | 約15%、3.8億トン |
| 2019年ベース | 28.4億トン | 21.3億トン | 最大約25%、7.2億トン |
平均的な想定では、2024年度から2030年度にかけて、需要量は3.1%減少する一方、供給量は9.9%減少すると見込まれています。
需要が減っても、それ以上の速さで輸送供給力が減るため、約7%の不足が残るという構造です。
また、「平均約7%」という表現は、地域別の不足率を平均した数字という意味ではありません。正確には「平均的な想定で約7%」です。
最大約25%も、特定地域や特定品目の最大不足率ではありません。需要が2019年度の28.4億トン水準に戻り、運転者数や労働時間が厳しい条件で減少する場合を想定した全国ベースのシナリオです。
ただし、全国の数字が約7%であっても、実際の物流は地域、輸送区間、車種、荷物、温度帯、曜日、季節によって需給状況が異なります。全国全体では輸送力が残っていても、必要な場所、必要な時刻、必要な車種が一致せず、車両が確保できないことは十分に考えられます。
5.物量減少が運賃上昇を妨げる可能性
輸送力が不足するなら、運賃は自然に上がるのではないか。そのように考える人もいるかもしれません。
しかし、物流市場では「輸送力不足」と「運賃が十分に上がらない状況」が同時に起こる可能性があります。
理由は、運賃が全国一律で決まるのではなく、地域、輸送区間、車種、荷物、時期、取引関係ごとの需給で決まるからです。
物量が減少した地域や輸送区間では、限られた荷物を複数の運送会社が取り合う状態になることがあります。車両を止めないため、固定費を回収するため、帰り荷を確保するために、低い運賃でも受注しようとする事業者が増えれば、運賃の値上げ交渉は進みにくくなります。
一方、長距離輸送、繁忙期、特殊車両、冷凍・冷蔵、時間指定、緊急配送などでは、供給できる車両が限られ、運賃が上昇したり、依頼そのものを引き受けられなかったりする可能性があります。
つまり、今後は次の二つの現象が同時に進むことが考えられます。
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車両が確保できず、運賃が上昇する輸送
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荷物が減り、価格競争によって運賃が上がりにくい輸送
全国平均だけを見ていると、この二極化を見落とすおそれがあります。
6.輸送量が11.6%減ると、運賃を上げても売上が戻らない
運送会社の売上は、大きく考えると「輸送量または運行回数」と「一件・一便当たりの運賃」の掛け算です。
ここで、分かりやすく単純化した計算をしてみます。
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2019年度の輸送量と売上を100とする
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輸送量が11.6%減り、88.4になる
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運賃を5%引き上げ、105にする
88.4 × 1.05 = 92.8
この場合、運賃を5%上げても売上は2019年度比で約7.2%減ったままです。
輸送量が11.6%減った状態で、単純計算上、以前と同じ売上規模を維持するには、運賃を約13.1%引き上げる必要があります。
100 ÷ 88.4 = 約1.131
もちろん、実際の経営は輸送距離、車種、運行回数、積載率、燃料サーチャージ、荷役料金などによって異なります。この計算は業界の実績値ではなく、物量減少が経営に与える影響を示すための例です。
さらに運送会社には、物量が減っても簡単には減らせない費用があります。
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車両の購入費・リース料
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自動車保険料
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税金・車検費用
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駐車場・営業所費用
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運行管理者などの人件費
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点呼・安全管理費用
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システム利用料
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採用・教育費用
燃料、タイヤ、部品、修繕費、高速道路料金なども経営を圧迫します。
そのため、物量減少の中で運賃改定が遅れると、「仕事はあるが利益が残らない」だけでなく、「仕事そのものが減り、値上げもできない」という、より厳しい状況になりかねません。
国土交通省は2024年3月、標準的な運賃の水準を平均8%引き上げ、荷役の対価などを別途加算する考え方を示しました。しかし、標準的な運賃は自動的にすべての取引へ適用される価格ではありません。実際の契約で適正な運賃・料金を収受できるかどうかは、原価の把握、取引条件の整理、荷主企業との継続的な協議にかかっています。
参考:全日本トラック協会「一般貨物自動車運送事業に係る標準的な運賃(令和6年3月告示)」
7.必要なのは値下げではなく物流効率化
物量が減少すると、荷主企業側では「荷物が減ったのだから、物流費も下げられるのではないか」という考えが生まれる可能性があります。
しかし、輸送量が減っても、一台を走らせるための人件費、燃料費、車両費、安全管理費は大きく下がりません。小口化や多頻度化が進めば、むしろ一トン当たりの物流コストが上がることもあります。
ここで必要なのは、運送会社への値下げ要請ではなく、物流の無駄を荷主企業と運送会社が一緒に減らすことです。
物流効率化とは、運送会社に安く運んでもらうことではありません。同じ人、同じ車両、同じ時間を使って、より多くの価値を生み出せる状態をつくることです。
具体的には、次の取り組みが重要です。
荷待ち・荷役時間を記録して減らす
受付時刻、接車時刻、荷役開始・終了時刻を記録し、待ち時間の原因を荷主企業と運送会社が共有します。ドライバーが運転以外で拘束される時間を減らせば、法令を守りながら輸送できる範囲を広げられます。
積載効率を高める
一台のトラックに積める量を増やすだけでなく、混載、共同配送、発注単位の見直し、納品日の調整などを組み合わせます。ただし、重量だけでなく容積、荷姿、納品条件も考慮する必要があります。
帰り便・帰り荷をつなぐ
荷主企業にとっては帰り便を活用できる可能性が広がり、運送会社にとっては帰り荷を確保しやすくなります。空車回送を減らすことができれば、燃料、時間、CO2排出量を抑えながら、一運行当たりの採算を改善できます。
配車情報をデジタルで共有する
電話やFAXだけに依存せず、見積もり、配車依頼、車番連絡、必要書類、荷卸し報告などをデジタルでつなぐことで、配車担当者の確認作業や連絡の行き違いを減らせます。
価格だけでなく信頼と条件で選ぶ
安い運賃だけを基準にすると、安全、品質、緊急対応力、書類管理、継続性が見えにくくなります。輸送実績、法令順守、保険、安全認証、対応品質などを含めて取引先を評価することが重要です。
8.運送会社に必要な会社基盤の強化
物流効率化だけでは、2030年を乗り越えることはできません。効率化で生み出した時間や利益を、人材、安全、車両、デジタル化へ再投資できる会社基盤が必要です。
1.輸送原価を便別・区間別に把握する
燃料費だけでなく、車両償却費、人件費、保険料、高速道路料金、荷待ち時間、荷役作業、空車回送まで含めて原価を把握します。原価が分からなければ、適正な見積もりも運賃交渉もできません。
2.運賃と料金を分けて契約する
運送そのものの対価と、積込み、取卸し、待機、附帯作業、高速道路料金などを分けて明示します。曖昧な一式運賃を減らし、追加作業には追加の対価が必要だという共通認識をつくります。
3.荷主・区間・荷物を分散する
一社、一地域、一つの荷物だけに依存すると、物量減少の影響を直接受けます。複数の荷主企業、輸送区間、車種、業種との取引を組み合わせ、売上構造を分散させる必要があります。
4.協力会社とのネットワークを強くする
自社車両だけですべてに対応するのではなく、地域や車種ごとに信頼できる運送会社との関係を築きます。繁忙期、災害時、緊急配送時にも支え合える関係は、会社の重要な経営資産です。
5.ドライバーと配車担当者へ再投資する
適正な運賃を、賃金、安全教育、休息環境、車両整備、採用、次世代人材の育成へつなげます。人を消耗させて成立する効率化は、持続可能な物流とはいえません。
6.資金繰りと車両更新計画を見直す
物量が減る局面では、売上だけでなくキャッシュフローを見る必要があります。車両更新、修繕、保険、税金などの支払時期を把握し、無理な増車や過剰投資を避けながら、必要な輸送力を維持します。
7.取引データを経営判断に使う
成約率、断った理由、空車回送距離、荷待ち時間、区間別収益、荷主別収益などを蓄積します。経験を大切にしながら、経験だけに依存しない経営へ移行することが重要です。
9.荷主企業に求められる取引の見直し
輸送力不足は、運送会社だけの問題ではありません。
荷主企業が必要なときに車両を確保するためには、平時から運送会社が継続できる取引条件を整える必要があります。
荷主企業に求められる主な取り組みは次のとおりです。
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発注時に荷物、重量、荷姿、積地、卸地、作業内容を正確に伝える
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直前依頼を減らし、できるだけ早く輸送予定を共有する
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集荷・納品時間に一定の幅を持たせる
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荷待ち時間と荷役作業を記録し、改善する
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運賃と荷役・待機・附帯作業の料金を分ける
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燃料費や人件費などの原価上昇について定期的に協議する
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繁忙期だけでなく平時から継続的な関係を築く
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安全性、品質、法令順守を価格と同様に評価する
短期的に安い運賃を選んでも、その運送会社が撤退・廃業すれば、将来必要なときに車両を手配できなくなります。
適正な運賃は、単なる値上げではありません。安全な輸送、ドライバーの雇用、車両整備、災害時の対応力を未来へ残すための費用でもあります。
10.丸共協同株式会社が考える不易流行
丸共協同株式会社は、1982年の創業以来、荷主企業と運送会社の間に立ち、配車と輸送の現場に向き合ってきました。
これからの物流で必要なのは、不易流行(ふえきりゅうこう)の考え方です。
不易とは、変えてはいけないものです。約束を守ること、安全を優先すること、荷主企業と運送会社の双方に誠実であること、困ったときに支え合うことです。
流行とは、時代に合わせて変えるものです。配車情報のデジタル化、見積もりの迅速化、書類の共有、輸送データの分析、地域を越えた協力会社ネットワークなどです。
物量が減少する時代には、仕事の量だけを追いかける経営では会社を守れません。一件の仕事を確実につなぎ、一台の稼働率を高め、適正な運賃を確保し、得られた利益を人と安全へ戻す循環が必要です。
荷主企業だけが得をする取引でも、運送会社だけが負担を抱える取引でも、物流は続きません。
荷主企業、運送会社、社会の三方にとってよい取引をつくり、その先の未来にも物流を残す「三方よし・未来よし」が、2030年に向けてますます重要になると考えています。
11.よくある質問
Q1.2030年度の輸送力不足は約7%まで改善したのですか
平均的な想定では約7%ですが、危機が解消したわけではありません。需要が2024年度水準で続く場合は約15%、需要が2019年度水準となり供給力が大きく減る場合は最大約25%の不足が想定されています。
Q2.物量が減っているのに、なぜ輸送力不足になるのですか
輸送需要よりも、ドライバー数や労働時間などの輸送供給力が速く減るためです。平均的な想定では、2024年度から2030年度に需要量が3.1%減る一方、供給量は9.9%減るとされています。
Q3.輸送力が不足すれば、運賃は自然に上がりますか
必ずしも一律には上がりません。車両が不足する区間では上がる可能性がありますが、物量が減った区間では運送会社間の受注競争が強まり、原価が上昇しても運賃が上がりにくい場合があります。
Q4.物流効率化とは運賃を安くすることですか
違います。荷待ち、空車回送、連絡の行き違い、重複作業などを減らし、同じ人、車両、時間で生み出せる価値を高めることです。効率化の成果を適正な運賃、賃金、安全、車両整備へ還元する必要があります。
Q5.運送会社が最初に取り組むべきことは何ですか
便別・区間別の原価と収益を把握することです。そのうえで、運賃と料金の区分、荷待ち時間、空車回送、積載効率、取引先への依存度を確認し、改善の優先順位を決めることが重要です。
Q6.荷主企業が車両を確保するためにできることは何ですか
早めの輸送情報共有、正確な依頼内容、柔軟な集荷・納品時間、荷待ち時間の削減、適正な運賃・料金の協議が有効です。価格だけでなく、安全性、対応品質、継続性を含めて運送会社を選ぶことも重要です。
12.まとめ
2019年度から2024年度にかけて、営業用トラックの貨物輸送量は28.4億トンから25.1億トンへ3.3億トン、約11.6%減少しました。
この物量減少と、2024年問題に備えた官民の取り組みなどを反映した結果、2030年度の輸送力不足は、以前の約34.1%という試算から、平均的な想定で約7%、厳しい想定で最大約25%へ再検証されました。
しかし、数字が小さくなったからといって、運送会社の経営環境が良くなったわけではありません。
物量の減少は、需給ギャップを縮める一方で、運送会社の売上機会を減らし、区間によっては価格競争を強め、必要な運賃改定を遅らせる可能性があります。輸送力不足と運賃停滞が同時に起こることも考えなければなりません。
これから必要なのは、安さだけを追う物流ではありません。
荷待ち時間を減らす。積載効率を高める。帰り便と帰り荷をつなぐ。配車情報を共有する。輸送原価を正しく把握する。運賃と荷役などの料金を分ける。信頼できる協力会社との関係を広げる。そして、効率化で生み出した利益をドライバー、安全、車両、次世代人材へ再投資する。
物量が減少し、人も減少する時代だからこそ、物流効率化と会社基盤の強化を同時に進める必要があります。
2030年問題は、単に「荷物を運べるか」という問題ではありません。「誰が、どのような条件で、安全に、継続して運ぶのか」を社会全体で考え直す問題です。
丸共協同株式会社は、現場で積み重ねてきた配車の経験と、新しいデジタル技術の両方を活かし、荷主企業と運送会社が共に必要とされ続ける物流を目指してまいります。
