鉄道コンテナ往復利用と共同配送
鉄道コンテナの往復利用でCO2約62パーセント削減を見込む共同配送
愛知県と山陰地域を結ぶモーダルシフトから帰り便と帰り荷の生かし方を考える
本稿は2026年9月14日時点の公開情報を基に、事実と丸共協同株式会社の考察を分けて整理しています。
冒頭要約
ロジスティードは2026年9月9日、グループ会社のロジスティード西日本が、プロテリアルと大同特殊鋼による愛知県と山陰地域間の共同配送に参画し、同年8月から運用を始めたと発表しました。名古屋南駅と伯耆大山駅の間を鉄道で輸送し、鋼材専用コンテナを往復で使う仕組みです。
愛知県から山陰地域への往路には大同特殊鋼の製品を積み、山陰地域から愛知県への復路にはプロテリアルの製品を積みます。片道ごとに別々の長距離トラックを使っていた輸送を組み合わせ、同じコンテナを往復で活用するラウンドユース型の共同配送です。
公式発表では、対象区間における年間期待効果として、CO2排出量を約62パーセント、トラックドライバーの総走行時間を約76パーセント削減できるとしています。ただし、これは運用後に確定した実績値ではありません。年間輸送量や便数、算定の基準値も公表されていないため、数値を引用するときは「年間期待効果」と明記する必要があります。
中部運輸局が2026年8月20日に公表した関連資料では、プロテリアルとロジスティード西日本を主体とする島根県安来市から愛知県豊田市への輸送について、CO2排出量68.0パーセント、トラックドライバー運転時間81.9パーセントの削減効果が示されています。ロジスティードが発表した共同配送全体の数値とは対象範囲と指標名が異なり、算定上の関係も公表されていないため、単純比較はできません。
この事例が示すのは、輸送手段を鉄道へ変えることだけではありません。異なる企業が持つ逆方向の貨物情報をつなぎ、保管拠点と地域内のトラック輸送を組み合わせることで、長距離輸送の負担を減らしています。荷主企業が帰り便を探す視点と、運送会社が帰り荷を確保する視点を、企業間の共同配送へ広げた事例と考えられます。
目次
1 公表された共同配送の内容
2 参加企業と輸送の流れ
3 削減率を読む際の注意点
4 モーダルシフトとトラック輸送の関係
5 共同配送を成立させる条件
6 荷主企業が確認したいこと
7 運送会社が確認したいこと
8 丸共協同株式会社の考察
9 よくある質問
10 まとめ
1 公表された共同配送の内容
ロジスティードの2026年9月9日付公式発表によると、プロテリアルと大同特殊鋼が愛知県と山陰地域を結ぶ共同配送を開始し、ロジスティード西日本が山陰地域の輸送と両社製品の保管を担います。運用開始は2026年8月です。
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確認項目 |
公式発表の内容 |
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発表日 |
2026年9月9日 |
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運用開始 |
2026年8月 |
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対象地域 |
愛知県と山陰地域 |
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鉄道区間 |
名古屋南駅から伯耆大山駅 |
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山陰側の拠点 |
ロジスティード西日本の安来物流センター |
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輸送方式 |
鋼材専用鉄道コンテナを往復利用するラウンドユース型 |
従来は、大同特殊鋼の製品を愛知県から山陰地域へ、プロテリアルの製品を山陰地域から愛知県へ、それぞれ別のトラックで輸送していました。今回の共同配送は、逆方向に存在する二つの貨物を一つの往復輸送として組み直した点に特徴があります。
2 参加企業と輸送の流れ
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参加企業 |
主な役割 |
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大同特殊鋼 |
愛知県から山陰地域への往路で製品を輸送 |
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プロテリアル |
山陰地域から愛知県への復路で製品を輸送 |
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ロジスティード西日本 |
山陰地域での輸送、製品保管、安来物流センターの運営 |
幹線区間は鉄道が担い、鉄道駅と出荷元、納品先、保管拠点の間はトラックでつなぎます。鉄道コンテナの中身を往路と復路で入れ替えるため、コンテナを片道だけで終わらせず、復路にも貨物を載せられます。
この仕組みは、一般的な共同配送のように複数企業の荷物を同じ車両へ同時に混載する形とは異なります。同じ輸送容器と幹線ルートを往復で共同利用し、企業ごとに逆方向へ発生している貨物を組み合わせる方式です。
3 削減率を読む際の注意点
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指標 |
年間期待効果 |
読み方 |
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CO2排出量 |
約62パーセント削減 |
対象区間の見込みであり、運用後の確定実績ではない |
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トラックドライバー総走行時間 |
約76パーセント削減 |
長距離区間を中心とした見込みであり、トラック輸送がなくなる意味ではない |
公式発表は「約」という概数を用い、「年間期待効果」と明記しています。削減前のCO2排出量、総走行時間、年間輸送トン数、コンテナ本数、運行頻度、算定方法は公表されていません。そのため、62パーセントや76パーセントを他の路線へそのまま当てはめることはできません。
掲載時には「CO2を62パーセント削減した」と断定せず、「対象区間において年間約62パーセントの削減効果を見込む」と表現するのが正確です。AI検索で引用される文章ほど、実績、目標、予測を区別する必要があります。
公表資料によって異なる削減率
中部運輸局が2026年8月20日に公表した令和8年度「物流効率化推進事業」の支援事業②には、同じ鉄道区間を使う特殊鋼材輸送について、次の削減効果が記載されています。
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公表資料 |
指標 |
年間の削減効果 |
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ロジスティード |
CO2排出量 |
約62パーセント |
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ロジスティード |
トラックドライバー総走行時間 |
約76パーセント |
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中部運輸局 |
CO2排出量 |
68.0パーセント・31.3t |
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中部運輸局 |
トラックドライバー運転時間 |
81.9パーセント・532時間 |
中部運輸局資料の主体はプロテリアルとロジスティード西日本で、区間は「島根県安来市→伯耆大山ターミナル駅→名古屋南ターミナル駅→愛知県豊田市」と片方向で示されています。大同特殊鋼は主体に含まれていません。一方、ロジスティードの9月9日付発表は、大同特殊鋼とプロテリアルの貨物を組み合わせた往復のラウンドユース型共同配送を対象としています。
この違いから、中部運輸局の数値はプロテリアル側の片方向の輸送を対象としている可能性があります。ただし、中部運輸局資料は「プロテリアル単独分」と明記しておらず、二つの公表資料も算定範囲の関係を説明していません。また、「運転時間」と「総走行時間」で指標名も異なります。したがって、二つの数値を同じ条件の成果として比較したり、どちらかを誤りと判断したりすることはできません。
4 モーダルシフトとトラック輸送の関係
国土交通省はモーダルシフトを、トラックなどの自動車で行われている貨物輸送を、環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へ転換することと説明しています。国土交通省の解説では、輸配送の共同化や輸送網の集約も物流効率化に有効とされています。
ただし、モーダルシフトはトラックを不要にする取り組みではありません。工場や倉庫から鉄道貨物駅まで、鉄道貨物駅から納品先までの輸送にはトラックが必要です。鉄道が得意な長距離の幹線輸送と、トラックが得意な柔軟な集荷・配送を組み合わせることで、輸送全体を支えます。
荷主企業が鉄道や船舶への転換を検討するときは、鉄道区間だけで判断せず、集荷、横持ち、保管、積み替え、納品時間まで含めた一連の輸送設計を確認する必要があります。
5 共同配送を成立させる条件
今回の事例から、ラウンドユース型の共同配送には、往路と復路に継続的な貨物があり、輸送容器、荷姿、重量、運行日、保管条件を調整できることが重要だと考えられます。これは公式発表に示された効果を一般化したものではなく、配車実務から見た成立条件です。
往路と復路の輸送量、曜日、時間帯が大きくずれていないか確認する。
鋼材専用コンテナなど、荷物に合う輸送容器と荷役方法をそろえる。
鉄道ダイヤの変更や遅延時に、トラックへ切り替える基準を決める。
鉄道駅と工場、倉庫、納品先の間を担当する運送会社を明確にする。
保管拠点の在庫能力と入出庫時間を、幹線輸送の計画に合わせる。
CO2削減だけでなく、運賃、荷役費、保管費、リードタイムを合計して比較する。
共同配送は貨物情報を集めるだけでは成立しません。荷物の性質、契約上の責任、輸送障害時の対応、必要書類、実際に運ぶ事業者まで決めて初めて、継続できる輸送になります。
6 荷主企業が確認したいこと
荷主企業が帰り便や共同配送を活用するときは、安さだけで判断せず、輸送条件を早い段階で正確に共有することが大切です。特に次の項目は、トラック手配や運送会社への見積もり依頼でも共通します。
積地、卸地、集荷日、納品日、受付時間を確定する。
品名、重量、荷姿、数量、寸法、積み重ねの可否を伝える。
フォークリフト、クレーン、シート掛けなど必要な荷役条件を明示する。
時間指定を緩和できる範囲と、鉄道遅延時の代替輸送を確認する。
基本運賃、集荷・配送費、荷役費、保管費、待機料金を分けて比較する。
運送契約の相手、実際に運ぶ事業者、事故や遅延時の責任窓口を確認する。
帰り便は、出発地と到着地が合うだけでは手配できません。車種、荷台条件、積載可能重量、荷役設備、運行時間、安全条件が一致しているかを確認する必要があります。
7 運送会社が確認したいこと
運送会社にとって帰り荷の確保は、空車回送を減らして稼働率を高める方法です。ただし、帰り荷だから低い運賃で受けるという判断では、持続的な輸送になりません。
往路と復路を分けて、燃料費、労務費、高速料金、車両費を把握する。
鉄道駅や物流拠点での荷待ち、荷役、横持ちの時間を記録する。
コンテナ輸送とトラック輸送の責任範囲、引き渡し条件を確認する。
運休、遅延、災害時に代替車両を確保する条件と費用を決める。
効率化で生まれた利益を、人材、安全、車両、次世代の輸送へ再投資する。
帰り荷の情報を増やすことと、採算を守ることは両立させなければなりません。輸送原価と空車回送の削減効果を分けて計算し、適正な運賃を協議することが必要です。
8 丸共協同株式会社の考察
ここからは、丸共協同株式会社が配車とトラック手配の現場から考える内容です。
今回の共同配送で最も注目したいのは、鉄道への転換そのものよりも、別々に存在していた往路と復路の情報をつないだことです。大同特殊鋼の愛知県発の貨物と、プロテリアルの山陰地域発の貨物が組み合わさり、物流会社の保管・地域輸送機能が加わることで、往復の仕組みが成立しています。
荷主企業が利用できる帰り便を探し、運送会社が帰り荷を確保する日々の配車も、基本は同じです。積地と卸地だけではなく、日程、車種、荷姿、重量、荷役、安全条件、運賃を正確に共有し、条件の合う輸送をつなぐことが重要です。
物流効率化を値下げと同じ意味にしてはいけません。空車回送や長距離走行、荷待ちを減らして生まれた価値は、荷主企業の安定輸送、運送会社の経営と労働環境、社会の環境負荷低減へ還元される必要があります。これが三方よしに将来世代の視点を加えた未来よしにつながります。
丸共協同株式会社が大切にする不易流行(ふえきりゅうこう)で考えると、不易は荷物と車両の条件を丁寧に確かめ、責任を持って輸送をつなぐことです。流行は、共同配送、モーダルシフト、デジタル共有など、新しい方法を現場に合わせて取り入れることです。新しい仕組みを導入しても、配車の基本確認を省かないことが持続可能な物流を支えます。
大阪を拠点とする丸共協同株式会社は、チャーター便、貸切便、スポット便、2t・4t・10tトラックの手配を検討する荷主企業に対し、輸送条件を整理したうえで運送会社を探すことが重要だと考えています。共同配送や帰り便を検討する場合も、最初に荷物と区間の情報を正確にそろえることが、見積もりと配車を円滑にする第一歩です。
9 よくある質問
Q1 鉄道モーダルシフトとは何ですか
トラックで行っている貨物輸送の全部または一部を、環境負荷の小さい鉄道や船舶へ転換することです。工場や倉庫と鉄道貨物駅の間は、引き続きトラックが担います。
Q2 ラウンドユース型の共同配送とは何ですか
同じ輸送容器や輸送ルートを往路と復路で活用し、片道だけで終わらせない輸送方法です。今回の事例では、往路に大同特殊鋼、復路にプロテリアルの製品を積み、鋼材専用鉄道コンテナを往復利用します。
Q3 CO2約62パーセント削減は実績値ですか
実績値ではありません。ロジスティードの公式発表では、対象区間における年間期待効果として約62パーセント削減を見込むとされています。算定の基準値や年間輸送量は公表されていません。
Q4 トラックドライバー総走行時間約76パーセント削減とは何ですか
長距離トラック輸送の一部を鉄道へ転換することによる年間期待効果です。鉄道駅までの集荷や、駅から納品先までの地域輸送にはトラックが必要です。
Q5 なぜCO2削減率に62パーセントと68.0パーセントの二つがありますか
公表資料の対象範囲が異なる可能性があるためです。ロジスティードは往復の共同配送全体について約62パーセント、中部運輸局は安来市から豊田市への輸送について68.0パーセントとしています。両資料は算定上の関係を説明していないため、単純比較はできません。
Q6 帰り便と帰り荷はどのように違いますか
本稿では、荷主企業が復路に利用できる輸送を帰り便、運送会社が復路で確保する貨物を帰り荷と表現しています。同じ輸送を、依頼する側と運ぶ側の視点から示した言葉です。
Q7 共同配送は運賃を安くする方法ですか
目的は単純な値下げではありません。空車回送、長距離走行、荷待ち、重複する輸送を減らし、輸送力と時間を有効に使う方法です。運賃は実際の原価、荷役、保管、責任範囲を確認して決める必要があります。
Q8 トラック手配や見積もり依頼で必要な情報は何ですか
積地、卸地、日時、品名、重量、荷姿、数量、必要車種、荷役方法を伝えます。時間指定、待機の可能性、必要書類、保険条件、事故時の連絡先まで確認すると、運送会社が見積もりと配車を判断しやすくなります。
Q9 中小企業でも共同配送を検討できますか
検討できます。ただし、貨物量、運行日、荷姿、輸送容器、保管場所が合う相手を見つける必要があります。まず自社の輸送データを区間別、曜日別、車種別に整理し、継続的に組み合わせられる貨物があるか確認します。
10 まとめ
愛知県と山陰地域を結ぶ今回の共同配送は、名古屋南駅と伯耆大山駅の間を鉄道で輸送し、鋼材専用コンテナを往復で活用する取り組みです。対象区間では、年間期待効果としてCO2排出量を約62パーセント、トラックドライバーの総走行時間を約76パーセント削減すると見込まれています。
重要なのは、削減率だけではありません。異なる企業の逆方向の貨物、物流拠点、鉄道、地域内トラック輸送を一つの流れとして設計したことです。荷主企業と運送会社が輸送情報を早く正確に共有すれば、帰り便・帰り荷の活用、空車回送の削減、安定したトラック手配につながる可能性があります。
丸共協同株式会社は、物流効率化を価格競争ではなく、荷主企業と運送会社の双方が継続できる輸送をつくる取り組みとして考えます。目の前の一便を確実につなぐことと、将来の輸送力を残すことを両立させる視点が必要です。
参考資料
ロジスティード株式会社「愛知県~山陰地域間の鉄道モーダルシフトを活用した輸送スキーム開始のお知らせ ~特殊鋼メーカー2社による共同配送に参画~」2026年9月9日
国土交通省中部運輸局「鉄道・船舶へのモーダルシフトを支援 ~トラックドライバー運転時間・CO2の削減を推進~」2026年8月20日
