多重下請けと適正運賃を改善する7つの視点
多重下請けと適正運賃をどう改善するか
実運送会社へ適正運賃を届けるために確認したい七つの視点
冒頭要約
2026年9月10日、佐々木紀国土交通副大臣と中小運送事業者による意見交換会が開かれたとLOGISTICS TODAYが報じました。全国の運送事業者からは、荷物が実運送会社へ届くまでに3社から4社を経由する多重下請けや、運賃改定を求めると他社の安い見積もりへ切り替えられる下値競争について意見が出されました。
多重下請けの是正は、委託や仲介を一律に排除することではありません。配車、運送会社探し、条件調整、書類管理、事故対応には人と費用が必要です。問題は、その役割と対価、契約相手、実際に運ぶ会社、運送責任、実運送会社へ届く運賃が見えないまま取引段階だけが増えることです。
取引方法が変わっても、誰が依頼し、誰が引き受け、誰が運び、いくらの運賃が届き、誰が責任を負うのかが不明確であれば、物流業界の構造は改善しません。取引の効率化と同時に、取引段階と責任を見えるようにすることが必要です。
丸共協同株式会社は、特定の企業やサービスを批判することを目的としていません。1982年の創業以来、荷主企業と運送会社に支えていただいた会社として、物流現場で経験してきた課題を情報発信し、持続可能な取引環境をつくることで物流業界へ恩返ししたいと考えています。
目次
1 意見交換会で報道された内容
2 決定事項と意見を分けて読む
3 多重下請けの問題は段階数だけではない
4 物流取引を支える仲介機能の価値と責任
5 適正運賃と取引条件の書面化
6 物流取引に必要な七つの透明性
7 荷主企業と運送会社が確認したいこと
8 丸共協同株式会社の考察
9 よくある質問
10 まとめ
1 意見交換会で報道された内容
LOGISTICS TODAYは、2026年9月10日に開かれた意見交換会で、佐々木紀国土交通副大臣と中小運送事業者が直接議論したと報じました。国土交通省の公式ページでも、佐々木氏が現職の国土交通副大臣であることを確認できます。
会合の中心となったテーマは、多重下請けと適正運賃、外国人や若手を含む人材確保、車両価格や燃料費などの経営負担でした。運送事業者からは、実運送会社へ届くまでに3社から4社を経由する取引や、運賃改定を求めると他社の安い見積もりへ切り替えられるという現場の声が出されました。
佐々木副大臣は、多重下請けの禁止そのものが目的ではなく、実運送を担うドライバーへ適正な運賃を届けることが本質だと説明したと報じられています。この考え方は重要です。取引段階が一つでも不適正な運賃は起こり得ます。複数の事業者が関わっても、それぞれの役割と対価が明確で、実運送会社に必要な運賃が届く取引は成り立ちます。
2 決定事項と意見を分けて読む
記事には、法律で導入が決まった制度、国が調査している事項、会合参加者の要望、報道機関が伝えた発言が含まれています。これらを混同すると、検討段階の内容を決定事項として受け取るおそれがあります。
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区分 |
内容 |
読み方 |
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制度上の決定 |
事業許可の更新制と適正原価制度の導入 |
2025年6月の法改正に基づく。具体的な運用は施行準備を確認する |
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調査と制度設計 |
適正原価の算定に向けた実態調査 |
具体的な金額や算定方法は確定前の内容を断定しない |
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参加者の意見 |
最低運賃、車検周期、燃料費支援、外国人受入手続など |
現場から出された要望であり、実施決定ではない |
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報道された発言 |
多重下請けや政策の実効性に関する副大臣の説明 |
公式議事録ではなく、報道に基づく発言として引用する |
全日本トラック協会は、2025年6月の貨物自動車運送事業法改正により、事業許可の更新制と適正原価制度が導入されることになったと説明しています。国土交通省は適正原価を設定するため、2026年に貨物自動車運送事業者を対象とした原価調査を実施しました。したがって、適正原価の具体額は、今後の公表資料を確認する必要があります。
3 多重下請けの問題は段階数だけではない
多重下請けでは、荷主企業から輸送を引き受けた会社が別の運送会社へ委託し、その会社がさらに別の会社へ再委託する場合があります。取引段階が増えるほど、最初の輸送条件が正確に伝わらない、運賃が段階ごとに減少する、事故や遅延時の責任が分かりにくくなるといった危険が高まります。
一方、すべての委託が不適切なわけではありません。自社で対応できない地域や車種を信頼できる協力会社へ依頼することは、全国輸送を維持するために必要です。配車担当者が条件を確認し、適切な運送会社を探し、輸送中の連絡や書類を管理する仕事にも価値があります。
確認すべきなのは段階数だけではなく、各段階でどの役務が提供され、いくらの対価が必要で、最終的に実運送会社へいくら届いたかです。役務のない運賃控除や、契約相手を隠した再委託は、持続可能な取引につながりません。
4 物流取引を支える仲介機能の価値と責任
荷主企業の輸送条件を整理し、対応できる運送会社を探し、配車や連絡を調整する仲介機能は、全国の物流を維持するうえで重要です。自社で対応できない地域や車種を信頼できる協力会社へ依頼することで、輸送を止めず、空車回送を減らせる場合もあります。
一方で、委託を受けた会社が実質的な役務を提供せず、運賃の差額だけを得る取引が繰り返されれば、実運送会社に必要な運賃が届きません。仲介の有無ではなく、条件調整、配車、連絡、書類、事故対応など、各社が担った仕事と責任を確認することが大切です。
価格だけを比較して委託先を決めると、安全性や継続性が後回しになるおそれがあります。事業許可、貨物保険、車両条件、過去の実績、連絡品質、法令順守を含めて判断することが、安定したトラック手配につながります。
5 適正運賃と取引条件の書面化
適正運賃を実運送会社へ届けるには、輸送の対価と、それ以外の作業に対する料金を分けて確認する必要があります。運賃だけに荷待ちや荷役の負担を含めると、実際に発生した時間と作業の原価が見えにくくなります。
見積書や運送契約書では、輸送区間、車種、積載条件、待機時間、荷役、附帯作業、燃料費の扱い、支払条件、事故時の責任を具体的に記載します。条件変更があった場合は口頭だけで済ませず、関係者が確認できる記録を残すことが重要です。
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確認項目 |
書面に残したい内容 |
目的 |
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運送の対価 |
輸送区間、車種、積載条件、運賃 |
実運送に必要な原価と利益を確認する |
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荷待ち |
無料時間の有無、待機時間、時間当たり料金 |
拘束時間の負担を運送会社だけに集中させない |
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荷役と附帯作業 |
作業内容、担当者、所要時間、料金 |
契約にない作業と無償負担を防ぐ |
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変更と責任 |
条件変更、連絡先、事故や遅延時の対応 |
認識の違いを防ぎ責任の所在を明確にする |
取引に複数の事業者が関わる場合は、各社が担う役務と対価を明確にし、最終的に実運送会社へ届く運賃を確認します。説明のない運賃控除や、優越的な立場を利用した一方的な減額を防ぐには、成約前の条件確認と書面化が欠かせません。
6 物流取引に必要な七つの透明性
1 契約相手
荷主企業が誰へ輸送を依頼し、運送会社が誰から仕事を受けたのかを明確にします。契約上の立場と、実際に担当する役割を区別します。
2 実運送会社
会社名、営業所、車両、担当者を確認できるようにし、運行前に実際に運ぶ会社が変わった場合も履歴を残します。
3 再委託の回数
荷主企業から実運送会社まで何段階あるのかを記録します。承諾のない再委託を防ぎ、委託先が変わった場合も関係者へ伝えます。
4 運賃と料金
運送の対価、荷待ち、荷役、附帯作業、燃料サーチャージを分けて示し、実運送会社へ届く金額を確認します。
5 仲介者の役割
配車、条件調整、書類、連絡、事故対応など、仲介者が提供する役務を明らかにします。役務に見合う対価は必要ですが、説明のない運賃控除は避けなければなりません。
6 運送責任
事故、貨物破損、遅延、運賃未払いが起きたとき、誰が荷主企業と実運送会社に対応するのかを契約時に決めます。
7 安全と信用
価格だけでなく、事業許可、貨物保険、法令順守、過去の運行実績、連絡や報告の品質を選定条件にします。
7 荷主企業と運送会社が確認したいこと
荷主企業が確認したいこと
今回の輸送を実際に担当する運送会社はどこか。
再委託が発生する場合、事前に確認できるか。
運賃と荷待ち、荷役、附帯作業の料金が分かれているか。
事故や遅延時に誰が連絡し、責任を負うのか。
安い見積もりだけでなく、安全、品質、継続性を確認しているか。
運送会社が確認したいこと
荷主企業、委託側事業者、契約相手を確認できるか。
提示された運賃で必要な原価と利益を確保できるか。
帰り荷の確保を理由に、必要な原価を下回る運賃を受けていないか。
支払条件、締日、支払日、遅延時の連絡先を確認したか。
再委託する場合、相手へ輸送条件と責任を正確に伝え、記録を残しているか。
8 丸共協同株式会社の考察
ここからは、1982年の創業以来、配車と輸送手配の現場に携わってきた丸共協同株式会社の考察です。
私たちは、委託や仲介をなくせば物流が改善するとは考えていません。荷主企業の条件を整理し、適切な運送会社を探し、問題が起きたときに調整する仕事は、現在の物流に欠かせません。だからこそ、その役割、対価、責任を見えるようにする必要があります。
物流DXは、電話や紙を画面へ置き換えるだけでは不十分です。誰が依頼し、誰が引き受け、誰が運び、いくらの運賃が届き、誰が責任を負うのかを記録できて初めて、取引の改善につながります。取引方法にかかわらず、多重下請けを防ぐ確認と記録が必要です。
丸共協同株式会社は、物流取引において安全と法令順守を価格より後に置くことはできないと考えています。荷主企業が安全な運送会社を選ぶためには、事業許可、貨物保険、車両条件、過去の運行実績、事故時の連絡体制などを、トラック手配や見積もりの段階で確認できる環境が必要です。
私たちが大切にしている不易流行(ふえきりゅうこう)は、変えてはいけない信頼を守りながら、時代に合わせて方法を変える考え方です。利他(りた)と敬天愛人(けいてんあいじん)、三方よし、未来よしの考え方に基づき、荷主企業、運送会社、次の世代が継続できる取引を目指します。
物流業界の課題を発信する目的は、特定の会社を責めることではありません。長年支えていただいた物流業界へ恩返しするため、現場で起きている問題を隠さず、荷主企業と運送会社が一緒に改善策を考えられる情報を届けることです。丸共協同株式会社は、取引の透明性を高める環境づくりとコラムによる情報発信の両面から、物流業界の改善に取り組みます。
9 よくある質問
Q1 多重下請けはすべて禁止されるのですか
意見交換会では、禁止そのものではなく、実運送を担うドライバーへ適正な運賃を届けることが本質だと説明されたと報じられています。委託の必要性と、実運送会社へ届く運賃の透明性を分けて考えることが大切です。
Q2 仲介が入る取引はすべて問題ですか
仲介する会社が条件調整、配車、連絡、書類、事故対応などの役務を担う取引まで否定するものではありません。各社の役割、対価、責任が説明され、実運送会社へ必要な運賃が届くことが重要です。
Q3 運賃の買いたたきを防ぐには何が必要ですか
輸送原価と条件を明確にし、運賃、荷待ち、荷役、附帯作業を分けて書面化します。価格だけで委託先を切り替えず、安全性、品質、継続性も含めて協議することが必要です。
Q4 荷主企業はトラック手配で何を確認すべきですか
運送契約の相手、実際に運ぶ会社、再委託の有無、運送責任、事業許可、貨物保険を確認してください。運賃と荷待ち、荷役、附帯作業の料金を分けた書面も重要です。
Q5 運送会社は運賃未払いにどう備えればよいですか
取引先の確認、支払条件の書面化、請求記録の保存が基本です。契約相手、締日、支払日、遅延時の連絡先を成約前に確認してください。
Q6 物流効率化と運賃値下げは同じですか
異なります。物流効率化は、荷待ち削減、条件の早期共有、帰り便と帰り荷の活用、空車回送の削減などで、一台と一時間から生み出す価値を高める取り組みです。原価を下回る値下げは持続可能性を損ないます。
10 まとめ
今回の意見交換会では、多重下請け、下値競争、人材確保、車両や燃料の負担という、運送会社が長年抱えてきた課題が改めて示されました。副大臣が現場の声を聞いたことには意味がありますが、制度を実効性あるものにするには、荷主企業、元請事業者、仲介事業者、実運送会社など、取引に関わる全員が自らの役割を検証する必要があります。
多重下請けの是正で確認すべきなのは、仲介者の有無だけではありません。契約相手、実運送会社、再委託回数、運賃と料金、仲介者の役割、運送責任、安全と信用を見えるようにすることが必要です。
丸共協同株式会社は、荷主企業と運送会社の双方に役立つ情報を発信し、価格だけに依存しないトラック手配と物流取引を広げていきます。それが、これまで支えていただいた物流業界への恩返しであり、次の世代へ物流をつなぐための責任だと考えています。
参考資料
LOGISTICS TODAY 多重下請けや運賃是正 佐々木国交副大臣が対話 2026年9月10日 https://www.logi-today.com/999132
国土交通省 大臣 副大臣 大臣政務官 2026年9月11日確認 https://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_002578.html
全日本トラック協会 トラック適正化二法関係 https://jta.or.jp/member/jigyoho-top/tekiseika_law
全日本トラック協会 トラック運送事業の適正原価に関する実態調査への協力依頼 https://jta.or.jp/member/chosa/20260115mlit.html
