米国と中国のレベル4自動運転トラックを比較
米国・中国のレベル4自動運転トラックはどこまで進んだ?中国10億kmの走行データと日本のトラック手配の未来
公開日:2026年9月8日
記事区分:物流の未来を考える
冒頭要約
2026年9月8日放送のテレビ東京「Newsモーニングサテライト」では、中国におけるトラック自動運転の最前線が紹介されました。
米国と中国は、どちらもレベル4自動運転トラックの商用化を進めています。しかし、その進め方は同じではありません。
米国では、限定した高速道路ルートにおいて、運転席に人がいないトラックを実際の貨物輸送に使用し、安全性を検証する動きが先行しています。
一方、中国では、まず運転者が乗車するL2+やL3の自動運転トラックを大量に普及させ、実際の輸送から膨大な走行データを収集。そのデータをレベル4の開発に利用する方式が目立ちます。
中国企業が公表した「累計10億km」と、米国企業が公表している「運転席無人の走行距離」は、条件が異なるため単純には比較できません。
本稿では、米国と中国の違いを整理し、自動運転トラックが日本のトラック手配、チャーター便、スポット便、緊急配送にどのような変化をもたらすのかを考えます。
この記事で分かること
- 中国の自動運転トラックが累計10億kmを走行したという発表の意味
- レベル4とL2+・L3の違い
- 米国と中国で異なる自動運転トラックの開発方法
- 「数センチの気配り」と呼ばれる制御技術
- 自動運転時代にトラック手配と運送会社を探す仕事がどう変わるか
- 物流会社や配車担当者に今後も求められる役割
目次
- レベル4自動運転トラックとは
- 中国は10億kmの実輸送データを集めている
- 「数センチの気配り」とは何か
- 米国は運転席無人の商用輸送で先行
- 米国と中国の走行距離は単純比較できない
- 遠隔支援と遠隔運転は違う
- 日本ではどの輸送から自動化が進むのか
- 自動運転でトラック手配は不要になるのか
- 丸共協同株式会社が考える物流の未来
- よくある質問
- まとめ
1.レベル4自動運転トラックとは
レベル4は、あらかじめ定められた道路、地域、速度、天候などの条件内において、自動運転システムがすべての運転操作を行う段階です。
運転席に人がいなくても走行できますが、どの道路、どの天候でも自由に走れるという意味ではありません。
例えば、次のような条件が設定されます。
- 指定された高速道路だけを走行する
- 決められた物流拠点間を往復する
- 大雨、積雪、強風などでは運行を停止する
- 自動運転システムに異常が発生した場合は安全に停止する
つまり、レベル4の重要な点は「人が乗っていないこと」だけではありません。システムが対応できない状況になっても、車両自身が減速や安全停止を行えることが必要です。
米国道路交通安全局も、レベル4を「限定された運行領域内で、システムがすべての運転操作を担当する段階」と説明しています。
2.中国は10億kmの実輸送データを集めている
中国の自動運転トラック開発会社Inceptio Technologyは、2026年9月3日、同社のシステムを搭載したトラックの商業運行距離が累計10億kmを突破したと発表しました。
同社の公表内容によると、自動運転システムが対応する中国の高速道路ネットワークは97%に達し、宅配・快速、冷凍冷蔵、路線輸送、貸切輸送、百貨、タンク輸送など、幅広い貨物で使用されています。
さらに、実際の輸送から収集したデータを分析し、数十万件の重要な運転場面を蓄積しています。
対象となるのは、単純な直線走行だけではありません。
- 前方車両の急減速
- 高速道路への合流
- 大型車同士の追い越し
- 工事区間の通過
- 横風によるトレーラーの揺れ
- 雨、霧、夜間などの視界変化
- 積載重量による制動距離の違い
- 車線内にある小さな落下物
こうした実際の運転場面をAIに学習させ、将来のレベル4自動運転へつなげています。
ただし、10億kmのすべてが運転席無人のレベル4走行ではありません。
現在の商業運行距離の中心は、運転者が乗車するL2+やL3の自動運転トラックです。「レベル4トラックが無人で10億km走行した」という意味ではない点に注意が必要です。
3.「数センチの気配り」とは何か
テレビ東京の番組案内では、中国のトラック自動運転について「数センチの“気配り”」という表現が使われています。
これは、AIが車線の中央を走るだけではなく、周囲の車両や道路状況に合わせて、車線内の走行位置を細かく調整する技術を表していると考えられます。
例えば、隣の大型トラックが車線ぎりぎりを走っている場合、自動運転トラックが自車線の中で反対側へ数センチから数十センチ移動し、安全な間隔を確保します。
人間の熟練ドライバーが無意識に行っている「少し離れておこう」という判断を、センサーとAIで再現するものです。
Inceptioが採用を進める長距離LiDARについては、約500m先を検知し、センチ単位の測定精度を備えると公表されています。
自動運転トラックには、乗用車以上に繊細な制御が求められます。車体が長く、積載重量によって動きが変わり、急には止まれないからです。
必要なのは、遠くを見る能力と、近くを細かく制御する能力の両方です。
4.米国は運転席無人の商用輸送で先行
米国ではAurora Innovationが、2025年5月からテキサス州のダラスとヒューストンを結ぶルートで、運転席に人がいない大型トラックによる商用輸送を開始しました。
2026年6月末までの運転席無人走行距離は、約44万マイル、約70万8,000kmです。
2026年には米国南部を中心に10ルートへ拡大し、フェニックスとフォートワースを結ぶ約1,000マイル、約1,609kmの長距離ルートにも対応しています。
Auroraの長距離LiDARは、暗い場所でも450m以上先の対象物を検知するとされています。
米国の特徴は、限定された運行条件の中で、運転席無人のレベル4トラックを実際の貨物輸送に投入し、一つずつ運行ルートを増やしている点です。
中国が大量のL2+・L3車両から実走行データを集めているのに対し、米国では少数のレベル4車両を使って、完全無人運行の安全性を深く検証しています。
5.米国と中国の走行距離は単純比較できない
米国と中国の公表数値は、走行条件が異なります。
| 比較項目 | 中国・Inceptio | 米国・Aurora |
|---|---|---|
| 公表走行距離 | 累計10億km | 約44万マイル、約70万8,000km |
| 主な自動運転段階 | L2+・L3が中心 | レベル4 |
| 運転者 | 原則として乗車 | 運転席無人 |
| 主な目的 | 全国の実輸送からデータ収集 | 完全無人運行の安全性検証 |
| 展開方法 | 量産車を増やしてデータを集める | 限定ルートを一つずつ無人化する |
| 強み | データ量と輸送場面の多様性 | 運転席無人の公道商用運行 |
数字だけを見ると、中国の10億kmが圧倒的に大きく見えます。
しかし、中国の数字には運転者が乗車するL2+・L3走行が含まれます。一方、Auroraの約70万8,000kmは、運転席無人で走った距離です。
したがって、「中国が米国より約1,400倍進んでいる」と判断することはできません。
重要なのは、走行距離の大きさだけでなく、その距離をどの自動運転段階、道路条件、天候、積載状態で走ったのかという中身です。
6.遠隔支援と遠隔運転は違う
レベル4トラックには、遠隔地から車両の状態を確認する管制センターが設けられます。
ただし、公道を走るレベル4トラックでは、遠隔担当者が常時ハンドルやブレーキを操作する方式が中心ではありません。
遠隔担当者が行うのは、主に次のような支援です。
- 運行状況の監視
- 通行止めや事故情報の確認
- 迂回ルートの提案
- 安全停止の指示
- 現場へ向かう整備・救援担当者の手配
- 荷主企業や運送会社への状況連絡
実際の加速、減速、車線変更、安全停止は、原則として車両側のシステムが判断します。
通信が切れた瞬間に運転できなくなる仕組みでは、レベル4として安定した運行を行うことが難しいためです。
一方、鉱山、港湾、工場など、通信環境と走行区域を管理できる場所では、人が遠隔から直接操作する方式も利用されています。
7.日本ではどの輸送から自動化が進むのか
日本で自動運転トラックが普及する場合、最初に導入が進む可能性が高いのは、走行条件を限定しやすい高速道路の幹線輸送です。
特に、物流拠点間を往復する10tトラックなどの大型車は、次の条件を整えやすいと考えられます。
- 発着地が決まっている
- 同じ高速道路を繰り返し走る
- 走行距離が長い
- 夜間運行が多い
- 荷物の種類や積載条件を標準化しやすい
一方、2t・4tトラックが使われる市街地配送では、歩行者、自転車、路上駐車、狭い道路、納品先ごとのルールなど、判断しなければならない条件が多くなります。
そのため、幹線部分は自動運転、物流拠点から納品先までの集荷・配送部分は人が担当するという役割分担が、現実的な第一段階になると考えられます。
8.自動運転でトラック手配は不要になるのか
自動運転トラックが普及しても、トラック手配や配車の仕事がすぐになくなるとは考えにくいでしょう。
自動運転システムが担当するのは、基本的に車両を安全に走らせる部分です。
実際の輸送には、それ以外にも多くの調整が必要です。
- 荷物に適した車種の選定
- 積載重量と荷姿の確認
- 集荷時間と納品時間の調整
- 荷待ちや荷役条件の確認
- 高速道路の通行止めへの対応
- 車両故障時の代替手配
- 急な出荷や緊急配送への対応
- 運送契約、運送責任、貨物保険の確認
- 帰り便・帰り荷を含めた運行効率の調整
自動運転トラックは、予定された幹線輸送では高い効果を発揮できます。
しかし、当日のスポット便、急ぎのチャーター便、納品条件が複雑な輸送、急な数量変更などでは、荷主企業と運送会社の間を調整する人と仕組みが引き続き必要です。
将来は「運転者がいるか」だけでなく、次の条件を確認して運送会社を探すことになるでしょう。
- 自動運転に対応している区間
- 人が運転する区間
- 利用できる物流拠点
- 対応可能な天候
- 遠隔監視と緊急対応の体制
- 事故や故障時の責任分担
- 車両と荷物の引き継ぎ方法
トラック手配はなくなるのではなく、車両、運転者、システム、物流拠点を組み合わせる仕事へ変わっていくと考えられます。
9.丸共協同株式会社が考える物流の未来
自動運転技術が進歩しても、荷物は情報だけでは運べません。
荷主企業の希望、荷物の特性、集荷先と納品先の条件を確認し、その輸送に適した車両と運送会社をつなぐ必要があります。
丸共協同株式会社は、1982年の創業以来、輸送現場における人と人との信頼関係を大切にしながら、トラック手配と配車に取り組んできました。
これからは、その経験にデジタル技術と走行データを組み合わせることが重要になります。
変えてはいけないものは、荷物を安全に届ける責任と、相手の立場を考える姿勢です。
変えていくべきものは、情報の集め方、車両の探し方、連絡方法、運行状況の共有方法です。
自動運転トラックの時代になっても、物流に必要なのは車両だけではありません。
困ったときに状況を確認し、関係者をつなぎ、最後まで輸送を成立させる力が必要です。
自動運転が進むほど、物流会社には「車両を手配する力」に加えて、「人・車両・情報をつなぐ力」が求められると丸共協同株式会社は考えています。
10.よくある質問
Q1.中国の自動運転トラックは、無人で10億km走ったのですか?
いいえ。公表された10億kmは、主に運転者が乗車するL2+・L3トラックの商業運行距離です。すべてが運転席無人のレベル4走行ではありません。
Q2.米国と中国では、どちらが進んでいますか?
評価する項目によって異なります。一般の高速道路における運転席無人の商用輸送では米国が先行しています。一方、大量の量産車から実走行データを集める体制や、道路設備・クラウドとの連携では中国に強みがあります。
Q3.レベル4トラックは遠隔地から運転するのですか?
公道を走るレベル4トラックでは、車両自身が運転を判断する方式が基本です。遠隔担当者は監視、経路変更、安全停止、救援手配などを支援します。
Q4.自動運転トラックが普及するとドライバーは不要になりますか?
すべてのドライバーが不要になるわけではありません。高速道路の幹線部分が自動化されても、市街地での集荷・配送、荷役、車両点検、緊急対応などには人の役割が残ります。遠隔運行管理や自動運転車両の整備など、新しい仕事も生まれます。
Q5.自動運転時代には、運送会社をどのように選べばよいですか?
自動運転への対応だけでなく、運送責任、貨物保険、安全管理、事故・故障時の対応、荷役条件、連絡体制、過去の輸送実績まで確認することが重要です。価格だけで判断せず、輸送全体を任せられるかを確認する必要があります。
11.まとめ
米国と中国は、異なる方法でレベル4自動運転トラックの実用化を進めています。
米国は、限定された高速道路ルートで運転席無人の商用輸送を積み重ねています。
中国は、L2+・L3トラックを大量に普及させ、実際の貨物輸送から膨大な運転データを収集し、その経験をレベル4へつなげています。
中国の累計10億kmと、米国の運転席無人約70万8,000kmは、どちらが優れているかを直接比較する数字ではありません。
一方はデータの量と多様性を示し、もう一方は完全無人運行の実績を示しています。
自動運転トラックが普及しても、すべての輸送が自動化されるわけではありません。スポット便、チャーター便、緊急配送、2t・4t・10tトラックの手配など、条件に合う車両と運送会社を探し、輸送を最後まで成立させる役割は残ります。
物流の未来を支えるのは、自動運転技術だけではありません。
人、車両、運送会社、荷主企業、道路、物流情報が正しくつながる仕組みが必要です。
丸共協同株式会社は、これまで培ってきた配車と輸送の経験を大切にしながら、新しい技術を物流現場でどのように生かせるのかを引き続き考えてまいります。
