トラック価格高騰で何が変わる?適正原価・トラック手配を考える
トラック価格高騰で何が変わる? 車両更新・適正原価とトラック手配を考える
― トラックを買い替えられる運賃でなければ、物流は続かない ―
2026年9月、物流ウィークリーに興味深い記事が掲載されました。
西日本の運送事業者が購入した大型平ボディーが税込み2,200万円を超え、別の事業者ではタンクを載せ替えるためのシャシーだけでも、約8年前より500万円ほど高くなったという内容です。
さらに、ある事業者が保有する約10年前、約5年前、2026年の3枚の見積書を比較すると、車両価格が10年間で約1.5倍になっていたと紹介されています。
ただし、この「1.5倍」という数字は国内すべてのトラック価格が平均して1.5倍になったという統計ではありません。あくまで、取材を受けた事業者の実際の見積書を比較した個別事例です。
それでも、このニュースは物流業界にとって非常に重要な問題を投げかけています。
トラックを買うために必要なお金が大きく増えている一方で、運賃が同じままだとしたら、運送会社は将来も車両を更新できるのでしょうか。
そしてこれは、運送会社だけの問題ではありません。
「トラックを手配したい」
「運送会社を探している」
「チャーター便の見積もりを取りたい」
という荷主企業にも、やがて関係してくる問題です。
この記事で分かること
・トラック価格が上昇している背景
・車両価格上昇が運送会社経営に与える影響
・トラック価格と「適正原価」の関係
・なぜ荷主企業にも関係するのか
・トラック手配やチャーター便で今後重要になる考え方
・安さだけではなく「車両を確保できる物流」を考える必要性
1.「トラックが高くなった」は感覚だけではない
物流ウィークリーの記事で紹介された「10年間で約1.5倍」は個別事例ですが、商用車メーカーによる価格改定そのものは実際に行われています。
三菱ふそうトラック・バスは2022年、鋼材、アルミ、エネルギー、物流コストなどの上昇を理由として、トラック・バスの販売価格を約5~8%引き上げました。
UDトラックスも2025年、大型トラック「Quon」について、原材料価格や為替変動などを背景として、商品改良分とは別に経済変動分としてメーカー希望小売価格の約7%を引き上げています。
つまり、
原材料価格の上昇
↓
製造・調達コストの上昇
↓
トラック価格の上昇
↓
運送会社の車両取得費増加
という流れは、実際に起きています。
しかも、運送会社に必要なのは車両本体だけではありません。
架装、タイヤ、保険、整備、車検、燃料、安全装置など、トラックを安全に走らせ続けるためには多くの費用が必要です。
2.本当の問題は「高い」ことではなく「更新できない」こと
トラック価格が高くなったと聞くと、
「運送会社の経費が増えた」
という話だけに見えるかもしれません。
しかし、本当に重要なのはその先です。
十分な利益を確保できなければ、新しいトラックへの更新を延期する会社が増える可能性があります。
車両更新を延期すれば、今度は修理や整備にかかる費用が増えていきます。
つまり、
車両価格上昇
↓
車両更新を延期
↓
車齢上昇
↓
修理・整備費増加
↓
稼働できない時間の増加
↓
収益性低下
↓
さらに車両更新が難しくなる
という循環に入る可能性があります。
物流は、今日トラックが走ればそれで終わりではありません。
5年後、10年後にも安全なトラックが走っていることが必要です。
3.だから「適正原価」が重要になる
現在、国土交通省ではトラック運送事業の「適正原価」の制度設計が進められています。
2026年7月17日に第1回、8月26日に第2回の「適正原価の設定に向けた有識者検討会」が開催されました。制度は2025年6月に公布された改正法に基づき、公布から3年以内に施行される予定です。
重要なのは、法律上の適正原価で考慮される費用です。
国土交通省の資料では、
・燃料費
・人件費
・減価償却費
・輸送の安全確保に必要な経費
・委託手数料
・事業を継続するために必要不可欠な投資の原資
・公租公課など
を的確に反映して適正原価を設定する考え方が示されています。
ここで注目したいのが「減価償却費」と「事業を継続するために必要不可欠な投資の原資」です。
トラックを購入し、将来また買い替えることも、物流を続けるために必要な経営活動です。
その意味では、
「トラックを更新できるだけの原価が運賃に含まれているか」
という視点は、これからますます重要になると考えます。
4.運賃は「今日走る値段」だけでよいのか
これまで運賃交渉では、
燃料価格
高速道路料金
人件費
などが注目されることが多くありました。
もちろん、どれも重要です。
しかし、物流を長期間維持するためには、それだけではありません。
今日の運行費を払えたとしても、10年後のトラックを買えない運賃であれば、その物流は本当に持続可能なのでしょうか。
国土交通省は2024年3月、トラックの「標準的な運賃」を改定し、運賃水準を平均8%引き上げるとともに、荷役の対価などを新たに加算しました。
そして現在は、その先となる適正原価制度について検討が進んでいます。
時代は少しずつ、
「いくらまで安くできるか」
から、
「物流を継続するために、いくら必要なのか」
を考える方向へ変わり始めています。
5.これは荷主企業にも関係する
「トラック価格の話は運送会社の経営問題では?」
と思われるかもしれません。
しかし、荷主企業にも直接関係します。
必要な日にトラックを手配したくても、運送会社が車両を増やせない。
古い車両の更新を延期する。
ドライバーを確保できない。
採算の合わない運行を断る会社が増える。
こうしたことが積み重なると、最終的には
「運送料が高くなる」
より先に、
「必要な時に手配できる車両が見つからない」
という問題になる可能性があります。
物流は、商品を作ってから探せば必ずトラックが見つかるとは限りません。
だからこそ荷主企業にとっても、安い運送会社をその都度探すだけではなく、継続して輸送を任せられる運送会社との関係をつくることが重要になってきます。
6.「安いトラックを探す」から「安定して手配できる仕組み」へ
例えば、
「明日4tトラックを手配したい」
「10tトラックで大阪から東京まで運びたい」
「急にチャーター便が必要になった」
「いつもの運送会社で車両が確保できない」
ということは、物流の現場では珍しくありません。
こうした場合、一社の運送会社だけで対応しようとすると、手配できる車両が見つからないことがあります。
そのため今後は、
一社の保有車両だけを見るのではなく、複数の運送会社や帰り便などを含めて車両を探す仕組み
がますます重要になると考えています。
丸共協同株式会社では、荷主企業からのトラック手配と、運送会社の帰り便・空き車両をつなぐ配車業務を行っています。公式サイトでも、チャーター便、帰り便、トラック手配依頼などを案内しています。
一台のトラックを少しでも効率よく使う。
空いている車両と荷物をつなぐ。
これは輸送コストだけでなく、限られたトラックを有効に活用するという意味でも重要です。
7.安さと適正価格は対立するものではない
適正な運賃というと、
「結局、運送料が高くなるのでは」
と思われるかもしれません。
しかし、必ずしも
安い=悪い
高い=正しい
という話ではありません。
重要なのは「なぜその価格なのか」です。
例えば帰り便を活用して空車回送を減らすことができれば、輸送効率を高めることができます。
共同輸配送や配車の効率化によって車両の稼働率が上がれば、無駄なコストを削減できる可能性もあります。
つまり、
運送会社が無理をして値下げする
のではなく、
物流の仕組みを効率化して適正な価格をつくる
という考え方です。
これから求められるのは、この違いではないでしょうか。
8.「トラックはいくらが適正なのか」から考える
今回の物流ウィークリーの記事では、運送事業者から「トラックの値段はいくらが適正なのか」という問題提起がされています。
しかし、ここからもう一つ問いを広げることができます。
トラックの価格が変わったのであれば、
「運賃はいくらが適正なのか」
も同時に考える必要があるのではないでしょうか。
そして適正な運賃とは、今日の燃料代とドライバーの給料だけを支払える運賃ではありません。
車両を整備し、
安全を守り、
人を育て、
新しいトラックへ更新し、
5年後、10年後も物流を続けられる。
そこまで含めて初めて「持続できる運賃」になるのだと考えます。
よくある質問
Q1.トラックを手配したい場合、何を伝えればよいですか?
一般的には、積込場所、納品場所、日時、荷物の種類、重量、数量、サイズ、希望する車種などの情報が必要です。
情報が具体的であるほど、運送会社側も条件に合う車両を探しやすくなります。
Q2.チャーター便とは何ですか?
チャーター便は、基本的に一台のトラックを一つの荷主企業の貨物輸送に使用する方法です。
時間指定が必要な輸送、大型貨物、機械、鋼材、パレット貨物などでも利用されています。
Q3.運送会社を探すとき、価格以外に何を確認すればよいですか?
希望する車種への対応、運行エリア、貨物保険、安全管理、連絡体制、急な変更への対応なども確認することが大切です。
単純な運送料だけでなく、安定して輸送を任せられるかを見る必要があります。
Q4.4tトラックや10tトラックも手配できますか?
輸送する荷物の重量、容積、形状、積込条件などによって適切な車種は異なります。
「4tトラックを手配したい」「10tトラックを探している」という場合でも、荷物の詳細まで伝えることで、より適した車両を探しやすくなります。
Q5.運送料の見積もりは何で決まりますか?
主に距離、車種、荷物の内容、積込・納品条件、時間指定、高速道路利用、荷役作業、待機時間などによって変わります。
同じ大阪―東京間でも、条件によって運送料は異なるため、見積もりの際には輸送条件をできるだけ具体的に伝えることが重要です。
まとめ
トラック価格が上昇しているというニュースは、単なる「車が高くなった」という話ではありません。
その先には、
トラックを更新できるのか。
安全を維持できるのか。
ドライバーを雇用できるのか。
必要な時に車両を確保できるのか。
という、日本の物流そのものの問題があります。
これからの物流で大切なのは、ただ一番安い運送会社を探すことではないと思います。
運送会社が継続して走ることができ、荷主企業も必要な時にトラックを手配できる。
その両方を成立させる価格と仕組みを考えることです。
丸共協同株式会社も、荷主企業と運送会社の双方に関わる立場から、
「運賃はいくらなのか」
だけではなく、
「どうすれば限られたトラックを効率よく使い、物流を将来まで続けられるのか」
を考えていきたいと思います。
物流は、トラックがあるから成り立ちます。
そしてそのトラックを、次の世代へ更新できる物流でなければなりません。
2026年9月5日時点
参考資料
・物流ウィークリー「トラック高すぎでは 笑っちゃうような値引きも」(2026年9月2日)
・国土交通省「適正原価の設定に向けた有識者検討会」
・国土交通省「第2回適正原価の設定に向けた有識者検討会」
・国土交通省「トラック適正化二法について」
・国土交通省「新たなトラックの標準的運賃を告示しました」
・三菱ふそうトラック・バス「製品の販売価格改定について」
・UDトラックス「大型トラック『Quon』を改良」
